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「私って夏は嫌いなのよ」
彼女は嘘をつく時鼻を触り目線が下に落ちる。彼女が何故こんな嘘をつくのか僕には分からなかった。
「どうして?」
彼女は桃色の着飾った唇をゆっくりと開けて答えた。
「だって、暑いじゃない」
夏が嫌いな人が皆口を揃えて言いそうな理由だった。「あと」彼女は続けて答えた。
「寒いじゃない」
僕は彼女が言い間違えたのだと思い、彼女が言い直すのを待ったが、彼女が「何よ」と言ってくるのでいよいよ頭がおかしくなったのだと思った。
「寒いって、どういう事」
彼女は馬鹿ねと言って段差に登って僕を見下ろしながら答えた。彼女は僕より背が低いのだ。
「人が冷たくて、寒いの」
「そんなの、年がら年中そうじゃないか。人はいつだって自己中で、自分勝手な生き物だ。それに夏は暑いし、人が冷たいなら丁度いいじゃないか」
僕は彼女の意見を正論で批判した。
「だから貴方はダメなの」
彼女は溜息をつきながら不満そうに言った。
きっと誰かに何か言われたのだろう、それを僕に気づいて欲しかったのか、そう思うのは大分後になってからだった。
7月の夏はこんなにも暑いものかと、僕は項垂れた。ニュースを見れば熱中症で何人倒れたとか、そんなことばかりやっている。毎年地球温暖化がなんだとか噂になるが、いくら騒いだ時点で生命が生き続ける限り地球温暖化が止まる事は無いだろう。僕が暑い暑いと呟くと彼女は寒い寒いと呟いた。きっと彼女は頭がおかしいのだ。そして頭のおかしい彼女は僕に言った。
「宝探しがしたいわ」
「宝探し?」
僕は彼女の思わぬ言葉に困惑した。
「お父さんから連絡が来たの。島の子供たちと遊んでくれないか、って。丁度私達夏休みでしょ?だから、やるなら宝探しがしたいわ」
彼女はよく説明を省く。彼女と話していると後からああ、こういう事だったのかと思うことが多い。
彼女の家は都内から遠く離れた島にある。透き通った海が見え、大自然に囲まれた島だ。
僕も彼女もその島の事を「実家島」と呼ぶ。
「行くのはかまわないが、宝探しって島に何か宝でもあるのか」
「さぁ」
彼女は遠い入道雲を見つめながら答えた。




