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11月8日 ~歩きお遍路3日目~

今日は雨で、憂鬱な日だった。

ザーザー雨が降っている。


ああ、もうお遍路の旅行きたくなくなっちゃうな~。

ここで休憩していたい。

が、そんなことしてたら間違いなくお金の無駄で旅が終わってしまうので、重い重いクソ重い腰を上げて、何とか寝袋から這い出る。

だが、立てない。

隣で寝ているはずの台湾ボーイが、俺に抱き着いていたからだ。


しかも触り方がなんかいやらしい。

なんで俺の股間に手を添えてるんだよ。

さわさわすんなよ、気持ち悪い。

しかもこいつ、ボッキッキしちゃってるし。

つまり、自家製バイオニックテントってことだ。


……やっぱホモだよなぁ?

ノンケだろうなぁ。

危ないよなぁ。


俺も海外で旅してた時、そういう人間に何人も襲われかけた経験があるから、分かるんだよ。

性欲が強いんだよ、マジで冗談じゃなく。

お前みたいな奴と、体の関係を持つ気は全くないね。

友情は大歓迎だけど。


台湾ボーイを起こさないように朝食を済ませて、とっとと倉庫みたいな部屋? から退室する。

午前6時のことだった。

台湾ボーイはのんびり屋さんなようで、まだグースカしていた。

そのまま寝てろよ、ホモボーイ。


今日は11番目のお寺である藤井寺と呼ばれる場所まで行く予定だ。

距離は20~30キロぐらい。

荷物背負ってなきゃ大したことない距離だが、もちろん今の俺は大したことあっちゃう。


昨日潰れた足のマメは痛いし、カッパが粗悪品で中身まで濡れ濡れな上に、そのくせ通気性は最悪なので、湿気と汗で不快な気分……

やべぇ……旅が全く楽しくない!

でも歩く!

それが、旅だから!!


必死に歩いて40キロぐらい進み、11番目の藤井寺と呼ばれる場所で予定通り打ち止めした。

7番~11番までのお寺については、特に書くこともなかったので以下省略。

だってみんな普通のお寺なんだもの。

お参りして、納経して、はい終わり、だし。

非常に淡白だ。


おまけに今日は雨だったから、ゆっくりお寺を観光することも出来なかったし。

本当にお寺でスタンプラリーをする感覚。

早く目的地に着いて、早く宿まで非難したいってひたすら思っていた。


いや、濡れるってガチで不快だよ?

びしょ濡れの汗まみれって最悪だよ?

しかもクソ重たいリュックを背負ってるんだよ?

足がマメだらけなんだよ?

不満だらけですってちくしょう。


車やバスに乗ってお遍路してる奴らが羨ましい。

本っっっ気で羨ましい。

むしろ恨んでやる。

死ねばいいのに。

苦しんで死んでしまえ。

本気でそう思った。


いくら修業とは言え、やっぱりこう思うのは仕方ないよね?

誰にも迷惑かけてないし、いいよね?

心の中で呪詛吐いてるだけだもん。

ですよね、弘法大師様。


え、ダメ?

いや、そんなの知らないですし。

てゆうかあんた、お遍路の神様なら歩きお遍路の俺を助けろよこの野郎。

神様なら人を助けてなんぼだろJK。

やっぱ神様はアテになんねえな。

ファッキンハゲ頭め。

……って、神様に対して恐ろしくも都合よく考えてるけど、当時の俺は何の疑問もなくこう思ってたのだった。


で、藤井寺から歩いて数十分のところにある、鶴の湯(銭湯)という善根宿で宿泊することに。

6番寺のおばちゃんが昨日くれた善根宿リストを見ながら、ここまでやってきたわけだ。

この無料宿は、銭湯を経営しているオーナーさんが善意で提供してくれている場所で、泊れる場所はというと、銭湯の横にあるちっさな小屋(なんと手作り!)だった。

洗濯機やトイレも小屋の外に設置されていて、昨日泊った倉庫みたいな場所より全然快適だった。

しかも隣が銭湯だから、風呂にも入れる。

コンセントもあり、充電出来る(これ、最重要!)。


これが全部無料って、すごいね。

これぞ、四国のお接待文化。

歩きお遍路最大の魅力……ってパンフレットに書いてあったなぁ。

実際にお接待を受けて、なんか良い経験をしてる感じがして嬉しくなってくる。


それでだ。

今日、俺がとろいペースで歩いていたせいか、またあの台湾ボーイと宿泊することになった。

小屋は丁度成人男性が2人横になれるぐらいのスペースなので、まだ泊まれると判断したオーナーが連れてきたらしい。


気まずい。

またホモと寝るのかよ。

でも台湾ボーイは俺を見つけた途端、無邪気な笑顔を向けてきやがる。

これじゃあ拒否した瞬間、俺が矮小な奴っぽいじゃないか。

ああ、もう。

また一緒に泊まることになるんだろうな。

もうあきらめることにした。


でもさ、俺思った。

これって同じペースで歩いてる限り、ずっと宿泊場所同じなんじゃね?

いやいや、宿泊場所なんて無数にあるんだぞ?

今回のは偶然さ、偶然。

流石に明日も一緒なんてことはないだろう。

彼が俺をストーカーしないかぎりは。


まあそれはさておき。

なんだかんだ言って、また有益な情報を台湾人と交換しあえて楽しかった。

ホモはコミュニケーション能力が高いことが多いし。

言葉なんていらんいらん。

身振り素振り手振りでオーケー。


寝る時、尻と股間にプロテクターが欲しかったが、そんなものは当然用意していない。

朝になったら、犯されていたなんてことにならなきゃいいが……

そんな感じで、午後9時には台湾人と仲良く就寝した。

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