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11月7日 ~歩きお遍路2日目~

最初に今日の最終的な感想を言っておこうと思う。


イッテェェェェェェェ!!!

痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!!!!


歩くでしょ?

マメが出来るでしょ?

歩くでしょ?

マメが潰れるでしょ?

歩くでしょ?

超絶痛いッッ!!!!


と、今日は終始こんな感じだった……

歩いた距離は20キロぐらいだと思う。

苦痛の20キロでした。


聞いたところによると、お遍路を始めてから3日以内には殆どの人がマメ地獄を味わうらしい。

まさか初日から、しかも20キロ歩いただけでこうなるとは……

マメのバーゲンセールだよ、ちくしょう。


さあ、回想の始まりだ。

今日の俺は苦痛に耐えながら、1番札所霊山寺からスタートして、6番札所安楽寺まで到着した。

1番目のお寺である霊山寺は、これから八十八か所を巡るお遍路さんが集まる場所だった。

つまり、お遍路のスタート地点ってことだ。


ここにはウキウキした顔の白衣を着たおじいちゃんおばあちゃんがたくさんいた。

その殆どがバスか車でお寺を回る人達で、若くして歩くお遍路さんは今のところ俺しかいないっぽい。

本当はいるのかもしれないけど、お遍路さんがわちゃわちゃいすぎて見分けがつかんです。

アスペな俺は、元々綾瀬はるかとジュリアロバーツの区別も出来ないぐらい人に無関心である男だ。

一般人達を区別出来るわけがない。


対して俺はすごい目立つ。

道行く奴らが俺をチラ見しやがる。

おじいちゃんおばあちゃんの平均身長が低いせいで、俺の背が高く見えることも関係あるんだろうな。

でも、たまに見る若者や中年も背が低くてひょろいんだよな。

だから俺、ちょっとした巨人気分。

地元でも割とそうだったりするんだけど、ここは特にそうだ。

まあ、身長なんてどうでもいいか。


でだ、ここはお遍路に必要な道具が買える。

お遍路の始祖である、弘法大師様の分身として旅の間使われる金剛杖や、お遍路のユニフォームであるところの白衣、お経を唱える時に使う線香や、ロウソク、数珠などなど。


でも、俺が買うのは納経張だけなんやで。

他の人は白衣やらなんやら丸ごと買っているのだけど、俺だけは大きいリュックを背負いながら納経張だけ持ってレジへ直行。

レジにいたおばちゃんが怪訝な顔をしたけど、俺は気にしない。

多分、全部買うのが普通だからだろう。

おばちゃんが不機嫌そうに俺を見るのは。


形に囚われないのが俺なのさ~なんて言っても、形式に囚われている人を納得させることなんて俺には出来やしない。

てかする気も起きない。

そんなことに興味はないもんね~


で、納経張(1200円で結構高い)を買ったら、さっそくお寺で祈ることにした。

お寺では、参拝の順番というものがある。


まず、お寺の入り口である山門という場所でお辞儀する。

んで、近くに手と口を清める所があるから、水で洗う。

そんで神様仏様に、うおおおおおお!!! 俺様が来たぜぇぇぇ!!! ウリィィィ!!! という自己主張を知らせるために、鐘桜堂にて鐘をゴ~ンと鳴らす。

そんで本堂にてお経を唱えて、その後大師堂と呼ばれる建物にてまたお経を唱える。

お経が終わったら、お経をした証をもらいに納経所という場所に行って、納経張にスタンプを押してもらう。

それでお寺の参拝は完了であるらしい。


が、俺はお経を唱える時にロウソクも線香も使わないし、お経も唱えない。

だってメンドクサイし、お経を唱えれば誰でも救われるなんてこれっぽっちも信じてないから。


神に祈った貧民が戦争に巻き込まれて何人死んだ?

信心深い者が、どうしてホームレスで苦しい生活を強いられる?

なんで神様に感謝しながら餓死する人がいるんだよ。

世界の布教者達は、どうして惨い殺され方で最期を迎えた?

何にも良いことなんてなかったじゃないか。

酷く、辛かったじゃないか。

苦しいばかりだったじゃないか。


様々な哲学者が言うように、神様は確かにいるだろう。

何故なにもないではなく、なにかがあるのか? と呼ばれる疑問に答えられるナニカが。

けど、ソイツは人間が思っているような善良な奴じゃなくて、人間に無関心で、死のうが生きようがどうでもいいんだろう。

人間はアリの一匹一匹を個別に認識出来ないだろ?

神様が人間を一匹一匹認識出来るわけがない。

もし人間と神様が対面するなら、それは顕微鏡越しになるだろう。


人間がアリを観察するように。

王様が個人ではなく全体で民を見るように。

だから多分、神様に期待しない方がいい。

八百万の神々や仏様達も、それは同じだ。


だから俺は、仏様への挨拶と自分のお願い事だけ心の中で念じることにした。

当たるも八卦、当たらぬも八卦的な感じで。

その方が気が楽でいい。

納経が終わったら、後はお寺の中を軽く観光するスタイルで行こうと思う。


納経が終わると、同時に手のひらサイズの2枚の紙をもらった。

1枚目はここのご本尊を描いた御姿の紙。

2枚目は閏年限定(今年は閏年らしい)に配布される参拝記念散華。

これらの紙は全部で88種類あって、特に記念散華は揃うと花になるように作られている。

ああ、だから散華なのね・・・とか思いつつ、リュックに入れていく。


こういうのっていいよね。

コレクション的な要素が加わると、なんかRPGをやってるみたいで面白い。

俄然モチベーションも上がってくるってもんだ。


で、少しだけお寺の周辺を見てみる。

1番のお寺には池があってたくさんの鯉がいた。

でも、それだけである。

鯉なんか見ても、何にも面白くない……

芸術に関心がある人はこういう所に価値を見出すんだろうけど、生憎そんな眼力は俺に備わっていないのだった。


……うん。

今、よく分かった。

お寺は基本ツマラナイ。

さっさと次に行こう。


そして次の2番目の寺へ。

次の寺は極楽寺というお寺だった。

1番目のお寺から数キロ歩いた地点にあった。


本当は2番目のお寺に行く時に、グーグルマップを使おうと思ったのだが、全然いらなかった。

次のお寺までの道しるべが超充実してたからだ。

遍路道って書かれた矢印付きの看板が道中に沢山あったおかげで、地図なしでもスイスイ行けちゃう。

お遍路の先人達に感謝だな。


2番目のお寺は、1番目から車で来た人が大勢いて、見たような見てないような顔が数人ほどチラホラと。

寺と寺の距離が近ければ、そういうこともあるよな。

別に気まずいとかは思わない。


本堂と大師堂へ向かって、お祈りとお願い事をする。

その後、ちょっと敷地内を見て回ると、面白いものを見つけた。

抱き地蔵と呼ばれる、両手で持てるサイズのお地蔵さん。

お寺の人から話を聞くと、自分の願い事を念じながらお地蔵さんを持つと、その願い事の達成が困難かどうかが分かるらしい。

持って軽ければもうすぐ願い事は叶うし、重ければ当分は叶わない。


もちろん俺も持ったよ?

結果は……重かった。

ちなみに俺のお願い事は、興味を持てる人が俺の目の前に現れてくれること。

老若男女問わずって意味で。

ちょい残念なのであった。


まあこんな感じで、道しるべを頼りに6番のお寺まで進撃した。

6番目は安楽寺というお寺で、ここは宿坊(お遍路さんや観光客向けにお寺が経営している宿泊施設)がある場所だった。

宿坊は4000~6000円くらいで泊まれる綺麗なホテルみたいな所らしい。


うわぁ……泊まりてぇ。

是非、泊まりたいでござる。

でも俺、お金はなるべく節約したい。

昨日はネカフェに泊まったから、今日は出費を避けたいところ。

でも、ここら辺に善根宿はないし……野宿だな。


が、野宿出来る場所に心当たりがない。

道の駅でもあったら、ベンチでホームレスみたいに寝袋に包まって寝るんだけども。

ここら辺は田んぼだらけで、お寺以外は何もないしなぁ。


困った。

どうしよう?

う~む……


いや、考えてもしょうがないよな。

とりあえず、お寺の人(笑顔が素敵なおばさんだった)にここら辺で野宿出来る場所を聞いてみる。

すると、お寺の人が歩きお遍路かい?と聞いてきた。

そうですと答えると、あらまあ大変ねぇ、と俺を労ったあと、ここに泊っていきなさいよと言われた。


まじで!?

本当に!?

俺、驚愕。

そんな俺にコロコロ笑いながら、お寺の敷地内で泊まれる場所へ案内された。


でだ。

そこは6番寺の大鐘が吊るされてる山門の中だった……

うん?

山門?

門に……泊まれるの?


中は掃除されていないのか、蜘蛛の巣が張られていて、正直汚い。

窓にガラスが張られていないから、虫も入り放題。

外と中を隔てるドアもない。

でも、ここが善根宿なのだとか……


宿っていうか、もう物置っすよねこれって感じの部屋である。

いや、ドアもないから部屋ですらない。

あっれぇ~?

俺の想像した泊まれる場所と、ちょっと違うぞぉ~。


案内したおばさまはニッコニコ。

案内された俺もニッコニコ。


だって文句言えるわけないじゃないか。

外で寝るよりは全然マシなんだもの。

ここは感謝するところだろう。

それに、無料で泊まれる場所に期待する方がおかしいってものだ。

この時点で、時刻は午後5時すぎ。

季節はもう冬なので、外はもう暗い。

もうここに泊まる以外の選択肢は……ないよな。


そして時間は最初に戻る。

俺はその場で座って(疲労がピークでもう立てましぇん)足をかばいながらおばさまにありがとうの言葉を言い、寝袋を敷いて寝ることにした……のだが、1時間後にもう1人の宿泊者が現れた。

同い年くらいの男性台湾人だった。


日本語は通じません。

俺も中国語は話せません。

でも、俺も海外で散々バックパッカーやってた経験があるから、こういうのには慣れている。

ボディーランゲージで楽しく会話した。


日本語を話せないくせに、よくここまで来たものだと感心するが、俺も人のことは言えないか?

台湾人さんとは物々交換をして、楽しく一緒に寝た。

言葉が分かんなくても、旅人はこんなにも簡単に意思疎通が出来る。

やっぱ理屈じゃないね。

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