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12月3日 ~歩きお遍路28日目~

昨日は限界ギリギリィ! まで耐久マラソンをしたので、本当に疲れた。

そのせいか朝の7時まで、ゆっくり眠ってしまった。


起きてすぐに、オネエ系のオーナー手作りの朝食を食らう。

ここのオーナーは料理が上手い。

アスペルガーな俺の舌を、満足に頷かせる美味なる味付けだった。

これでオネエ系じゃなければ良いんだけどなぁ。


いや、これも個性か。

そう納得し、オーナーと記念撮影をして宿から午前9時にドロンする。

かなり遅い時間帯だ。

最後に記念撮影をして、ゴールデンレトリバーちゃんにあいさつした。


次の宿は、海岸線沿いの国道196号線の先にある、今治という街行く。

そこにある56番寺の泰山寺……そこの通夜堂に泊まる予定なので、午後5時までに着けなかったらやばい。

しかも、56番寺に着くまでに、54番延命寺、55番南光坊寺にも参拝&納経しなくてはいけない。

距離的には30キロから40キロくらいだろうか?

今朝がのんびりしすぎて、時間的にちとキツイ。

ってことで朝から早足に海岸線沿いの国道を歩き出す。


この海は丁度四国の1番南にある副金剛寺の反対……北側に位置している。

つまり、瀬戸内海であって、向こう側の日本本島が微かに見えちゃったりするのだ。

今日の海は、最御崎寺の時と違って荒れていない。

時間に追われていなければ、ゆっくり海を見ながら行けたのに。

少しだけ残念だ。


で、狭い歩道を先に進むと、歩道の幅をめいいっぱい使って釣りをしているオッさんを何人か見かけた。

釣り糸を海に投げ入れる為に、釣り餌が車道にまで一瞬はみ出たりしていた。


いやいや。

車に引っかかったらどうする気だよ。

てか思いっきり歩行者の邪魔だよ。

俺の邪魔だよ。


俺が睨むと、オッさん達が申し訳なさそうに隅へ寄る。

俺、威圧感だけはあるので、簡単に避けてくれる。

……あれ?

そのせいで俺は女性達から怖がられ、お付き合いする機会がないのでは?

だからホモォな人達から好かれるのでは?

男である自分よりも、強そうな男を好きになるのがホモォズだから。


……ありえる。

ああ、俺、怖いもんな。

子供のお世話とかした時、泣かれたこともあるもんな。

嫌な思い出だ。

殺人鬼みたいって言われて、誰が喜ぶというのだろうか?

少なくとも、俺はちょっとへこんだぞ。

その後はもう季節は冬になるというのに、オオスズメバチに追われたり、何人か逆打ちしているお遍路さんとすれ違ったりしながら、午後3時くらいに今治市内に到着した。


まじでもういいよ、スズメバチとか。

なんで俺何もしてないのに、攻撃しようとしてくんの?

お前はケンカ好きかこの野郎。

よくもまあ自分の体の何倍もある奴に向かって攻撃出来るよな。

そんなに自分の命を懸けて、人を刺したいの?


俺を刺したって、なんもメリットないよ?

ほら、あそこのおじさん刺してきなよ。

なんで俺ばっかり追ってくるのおおおおおお!!!!

スズメバチとの追いかけっこを制して、無駄に疲れる俺って……


……まあいいや。

この街には54〜59番の寺があって、1日使えば連続で礼拝も出来るけど、俺にはもう時間が2時間しか残されていない。

もう景色は夕方……午後3時なのであった。


恐らく、54番寺と55番寺へ行けば、今夜の宿となる56番寺で泊まることは出来ないだろう。

だって午後5時までに間に合わないもん。

納経を優先するか、今晩の宿を優先するか。

……決まっている。

今晩の宿の方が大事に決まってるだろうがァァァ!!!!!!


俺は最初の54番延命寺へ向かい、その後55番をすっ飛ばして56番へ行くことにした。

今まで順番通りに打ってきたけど、もうそんなの関係ねえ!!

誰が順番通りに打たなきゃならないと言った?

誰も言っていないはずだ。


というか、順番通りに寺を巡らなきゃご利益が授かれないのだとしたら、真言宗はもっとお堅い集団になっていたはずだ。

発心もクソもない、外国人までお遍路で受け入れないはずなのだ。

宗教心のない奴に、納経してあげるわけがないのだ。


なので、もう順番通りとか関係なしにした。

もうどうでもいいっす。


でだ、54番の延命寺に無事に到着した。

シャッと本堂と大師堂を拝み、シャッと納経をすませる。

そしてダッシュ!!

この時点でもう午後4時である。


あと、残り1時間。

俺よ、頑張れ。

休憩も殆どなしに走っていく。


汗だくの男が、街中をゼエゼエ走ることのなんと奇異なるかな。

そんなことは分かっている。

けど、俺にとって宿に辿り着くことは死活問題だ。

周りの視線なんかどうでもいい。

そして汗だくの午後5時ギリギリ。

俺は55番をスルーして、56番泰山寺にゴールした。


さっそくここのお寺で納経してもらって、通夜堂を使用する許可を取る。

俺はもう見るからに歩きなので、使用許可は簡単に降りる。

これが車だったりすると一発で坊さんは見抜くので、泊まらせてはもらえない。

だからこれは、歩きお遍路をしている奴らの特権だと言えるだろう。


通夜堂の中を見ると、驚いたことに数年前に見たYOUはなにしに日本へ? で紹介されていた宿だった。

二段ベットが置かれているだけの、2畳くらいの部屋。

しかも寺のトイレが横に隣接されている、という場所。

ちょっと気になる匂いがプンプンと部屋の中に漂っている……


てかよくそんなテレビの内容を覚えてたな。

ADHDなのにね。


中は汚く、カビと埃のせいで鼻水が出まくり状態。

でも外の寒さより数倍マシなのであった。

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