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11月6日 ~歩きお遍路1日目~

午後9時、俺は地元の空港から東京の成田空港を経由し、徳島阿波踊り空港に到着した。

……やばい。

夜だ。

闇だ。

暗いし怖い。

空港の周囲は明るいが、一歩敷地内から出たらもう暗い。


車道はまだいいぞ?

ちょこちょこと頼りない街灯が設置されてるから。

だが、歩道はどうだ?

真っ暗じゃないか。

街灯は車道ばかりを照らしていて、俺の歩く道が全然明るくない……


こんな暗がりだと、幽霊とか犯罪者とか幽霊とか幽霊とか出るんじゃないのか?

変な奴と遭遇しなければいいが……

仮に犯罪者が出てきたとしても、対処は出来るけどさぁ……

流石に幽霊は無理なんだぜ。

ゴーストタイプにノーマルタイプは相性最悪なんだぜ。

怖いものは、やっぱり怖いです。


クソ、ここに来る前夜に、仄暗い水の底からとか呪怨シリーズを見なきゃよかったな。

今、俺の背後で黒髪女が睨んでいるような気配が……

振り向いても誰もいない……けど、実はいるんだよ的な?

俺を呪い殺そうとしてる的な?

呪いのウイルスが拡散しちゃう的な?


いやいや、妄想はやめておこう。

せっかくの旅なんだぞ?

旅の初日がこんな真っ暗な場所で妄想することでスタートするとか、どんだけ陰鬱なんだよ。

……ううむ、他のことを考えよう。


そうだ。

ここ四国は、北海道と違ってまだ暖かいな。

空港の周りにはヤシの木も生えてるし、何だか南国みたいだ。

対して北海道はこの日、大雪だった。

お陰で新千歳から乗り継ぐはずだった飛行機には遅れるし、外はクソ寒いしで、不満だらけだった。

本当なら徳島には今日の昼頃に着く予定だったのに……

なので気分はアンハッピー……

まあ、そんなこと言ってても仕方ないよね。

でもなぁ。

ああ、結局ネガティブかよ。

俺の悪い癖だな。


とにかく今日は、泊れる場所を探そう。

持っていたスマホで検索すると、すぐに宿泊施設の情報が表示された。

民宿と旅館は・・・時間が遅すぎて泊まれないな。

24時間レストランは遠くに行かないとないし。

うーん、健康ランドもないな。

ってことは……ネカフェ難民になるしかないかぁ。


スマホで検索してみると、ネカフェが5キロぐらい先にあった。

5キロかぁ。

都会で生活してたら、まず歩かない距離だ。

でも、明日から1200キロの旅なんだよな……

こんな距離を歩くことをめんどくさがってたら、とてもじゃないけど旅なんて出来ないよな。


どっちみち歩かなきゃ泊まれない。

それに、初日から野宿するつもりはないし。

野宿と善根宿(歩きお遍路さんのために無料で宿泊させてもらえる宿のこと)半分、宿泊施設半分で旅をしていこうと思ってるから。

宿泊が有料の日と無料の日の交互でいこうというわけですよ。

もし無料の日で善根宿が見つからなかったら、野宿にしようと思う。


ってことで、夜の真っ暗な歩道を歩いていく。

人と全くすれ違わない。

横の車道を車も通らない。

従って、静かである。

サイレントヒルの街並みを歩いている気分なのである。


怖いよぉ。

いや、でも進まないと泊まれないし。

葛藤だ……


前の暗闇から黒髪女が歩いてきたりしないよな?

もし出てきたら、バットで顔面叩きながら叫んでいいですか?

ええ、そうですよ?

除霊じゃなくて物理攻撃一択ですが、何か?

でも一般人だったらどうしよう?

殺人になっちゃうよ。

やべぇ……こんな思考してる俺が1番危ないよ。


スマホのガイドに従って、俺は1時間かけてネカフェにたどり着いた。

うん、1時間歩いただけで若干足が痛いな。

10キロの荷物を背負っているせいか。

最初だけは軽くても、継続して持ち続けると大きな負担になってくる。

当たり前のことだけど、いざ実感すると重く感じられる事実だ。

実際荷物重いし……


……黒髪女が憑りついてるってことはないよな?

ないよね?


そうそう、荷物と言えば、お遍路道具があったな。

お遍路をするにあたって、色々な道具が必要らしい。

金剛杖や、白衣、菅笠、数珠、納札、経本、納経張、線香、ロウソク……他にも色々あるのだとか。

俺はまだお遍路道具を1つも持っていない。

現地で調達するつもりだからだ。


でも俺は納経張だけしか買わんけど。

そう、明日は1番札所に行って、納経張だけを買っていく予定なのだ。


他のお遍路道具?

そんなの知らんよ。

全部買ったら3万円近くするんですよ?

そんな出費はまっぴらなのです。

俺は宗教ビジネスに貢献する気はないのだよ、キミ。


それに俺は寺でお参りした証さえあればいいし。

あ、ちなみに、納経帳とはいわゆるこの寺で拝んだことを証明するスタンプ帳みたいなものだ。

お坊さん直筆の達筆で納経帳のページの和紙に変な文字を書いてもらえ(これを納経してもらうと言う)、その上から御朱印と呼ばれるスタンプを貰える。

それがお遍路に行った証になるのだ。

だから、殆どのお遍路さんが納経張を持っている。

自分がお遍路に行った証拠ぐらいは欲しいからね。

数珠や金剛杖を持っていなくても、それだけは持っているものなのだ。


1つの寺につき、納経料金として300円を取られる。

それが八十八カ所あるわけだ。

俺は八十八カ所全部歩いて行って、それをもらってくるのだよ。

そのために俺は、四国をグルリと歩いて1周するのだ。


ネカフェに到着した後は、フラットシートを選んでそこで就寝することに。

寝心地は悪くない。

ここら辺はまだ徳島市街に近くないのか、客も周囲にはいない。

てか店内に一切客を見かけない。


おいおい。

営業大丈夫なのか、ここの店は……

明らかに赤字やぞ?

まあいいや。

これが田舎のネカフェってやつなのかもしれないし。

これもこれで貴重な経験だ。

お店側には気の毒だけども。


さあ、いよいよ明日、俺のお遍路が始まる。

楽しみ半分、不安半分。

でも、不思議と興奮して眠れないってことはなかった。

店内のライトに照らされながら、俺はぐーぐーリラックスして眠った。

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