11月16日 ~歩きお遍路11日目~
今日も40キロを歩く。
足は快調。
苦痛はない。
そういえば俺、もう徳島県を抜けていたらしい。
グーグルマップを見て、初めて気が付いた。
徳島県と高知県の境界ってどこか全然分かんなかったな。
ひたすら海岸線に沿って、高知県内を進んでいく。
この先数か所のお寺の先に、徳島市街と同じくらいの街があるらしい。
名前は高知市って言うんだってさ。
今までは街じゃなくて町ばっかりだったから、結構楽しみだ。
田舎道ばっかり歩いてると、高い建物が無性に見たくなるんだよなぁ。
なんて言うか……安心感があるって言うか。
あ、人がたくさん住んでるんだな~って感じ。
いくら人に興味を持つことが出来ない俺だって、1人はやっぱり寂しい。
周りに人がいると、もちろんストレスはあるんだけど、同時に安心することが出来る。
う~ん、都合がいいなぁ俺って。
とりあえず、現時点の目標地点を高知市に決定した。
高知市までは約80キロとまだまだ遠い。
だけど、明後日には到着すると思う。
……多分。
よし、いよいよ高知の街に近付くぞぉ。
そう思うと、モチベーションもぐんぐん上がるぜ。
そして、25番の津照寺と26番の金剛頂寺でスムーズに納経をいただく。
この2つの寺は、海岸線沿いに近くて、山も登る必要がないから、納経が楽ちんだった。
金剛頂寺は、納経を書く人が無愛想で怖いらしい。
その人がお遍路さんの間で有名らしく、ちょっと俺、会う時に緊張しました。
けど、実際に会ってみればなんのことはなかった。
俺と同類っぽいだけであった。
挨拶はしないし、それどころかその人と一言も話さなかったけど、何となく分かる。
この人は俺とちょっとだけ同じだ。
人への接し方が不器用なんだ。
こういう人って、外側は不愛想だから、みんなに誤解されやすい。
怖いとか、冷たい人とか言われたりしちゃう。
でも、分かる人には分かる。
まあ分かったところでどうにもならないけど。
お遍路さんとお坊さんって、近いようで遠い関係だ。
納経をしてもらう時しか話す機会がないし。
接点が持ちやすいようで持ちにくいんだよね。
それに団体でお遍路さんが来ることも多いから、1人1人丁寧に会話する余裕もないし。
無理矢理話しかけても、次のお遍路さんの納経を妨げてしまうから、迷惑行為になりかねないし。
まあそんなこともあって、俺は必要以上にお寺に深く干渉しないようにしてる。
ということで、パパッと次の寺に向かって歩き出す~
そして27番の寺に向けて出発し、1時間経った時のこと。
順調に海岸線を歩く俺の目の前に、逆打ち(88番から1番の順でお遍路すること)でお遍路している60代のおっさんを見つけた。
白装束に、金剛杖を持ってるから分かりやすいのだ。
気軽に挨拶し、俺が何気なく「27番の寺まで後どのくらいで着きますかね」って聞いたら、「歩いて3時間半で着くよ」と言われた。
その時の時刻は、丁度午後2時。
納経は基本5時までしかやっておらず、寺自体もその時刻に閉まってしまう。
だから5時以降に寺へゴールインしても意味がない。
普通に間に合わないじゃん。
オーマイガッ!
俺、大いに慌ててしまう。
けど、おっちゃんから更に情報が。
「その27番のお寺、善根宿やってるよ」
……なぬ?
それはまだ俺が今日泊まる場所を決めていないことを、神様が心配してくれていたようなタイミングだった。
ここで27番の寺へ5時までに到着すれば、納経出来るし泊まることも出来る。
一石二鳥だ。
おう、これはやるっきゃねえ!!
そこから俺は必死に歩いて、時には走って、27番寺を目指した。
そこは山の上で、標高は忘れたけど麓から1時間かけて登る山だった。
通称、お遍路転がし。
ただ歩いて登るだけでも十分にキツ~イ山だった。
10キロの荷物を背負って走り、更に山登り……
流石に吐き気がする。
酸欠なのか、頭も痛くなってくる。
それでも走る。
ここで野宿はしたくないから。
宿泊先があるのとないのとでは、天国と地獄ぐらいの差があることを知ってるから。
だから限界ギリギリまで走って、頑張った。
汗が目に入って痛い。
拭ったらもっと染みて、涙が出てきた。
精神的にも泣きそうだった。
もし間に合わなかったらどうしよう。
また、動物とか蛇にビクビクしながら寝るのか?
しかも寒いし、体が痛くなるし。
虫に刺されて不快だし。
途中でタクシーが通りがかる。
それを見て、一瞬乗ろうかと思ったけど、結局やめた。
ここで乗ったら、今までの苦労は何だったんだって思うから。
後悔しないために、俺は泣きながら走った。
結果。
流石アルプスの難所より怖いと評価された焼山寺にて、豪脚と呼ばれた俺の脚よ。
丁度午後4時に到着してしまった。
いや、自分でも驚いてます。
もしかして、善根宿を教えてくれたおっさんが遅かったのかな?
でも、俺は頑張った。
頑張ったから納経出来るし、泊まることも出来る。
俺の脚よ、ありがとう。
満足だ。
パーフェクツッ!!!
ということで、今日は27番寺の神峰寺に泊まらせていただいた。
読みはこうのみねじって言うんだと。
最御崎寺に続いて、読みにくい名前だなぁ。
いつもならお寺の感想は省略するんだけど、ここは特別に書いておくことにする。
だって、この寺は凄かったから。
庭園が芸術的に整っている。
もうね、言葉で表せないくらいすごいの。
芸術を見る目がない俺でも、これが芸術ってやつかよぉ……って感心する程のレベルなんです。
寺の中に展示されていた新聞記事をみると、四国霊場でも有数の庭園を保有しているんだとか。
実際に見て俺も納得。
素人でも分かる、庭園のこだわりよう。
一見の価値ありってやつだ。
素晴らしい風景を見すぎて滅多に感想を抱かない俺が、こんなことを思う。
それだけで凄いよね。
そんな素敵な寺の敷地内にある、休憩所で泊まることを俺は許された。
ああ、貴重な体験や。
歩き遍路限定の金で買えない経験。
ああ、本当にここまで必死に走ってきて良かった。
心からそう思った。
おまけにお接待で、お坊さんから柿と菓子とお茶をいただく。
お菓子がゆず入りのどらやきで、とても美味しかった。
至れり尽くせりである。
寺の人達の人柄もいい感じ。
だって俺、汗と潮風と土ですごい汚れてるのに、一切嫌なそぶりとか見せないんだもん。
一見ホームレスに見間違えられそうな格好だったから、警察に声をかけられたくらいなのに。
本当に優しかった。
ちょっと泣きそうになった。
そんな俺を見て、お坊さん達がコロコロ笑ってくれた。
5時を過ぎて、お遍路さんの相手が終わったかと思えば、俺の泊まる部屋まで来て色々食べ物をくれた。
飴玉とか、ミカンとか、飲み物とか。
普通の生活をしてたら、無償でこんなに物なんてもらわない。
俺、四国でお遍路さんやってるんだなぁってようやく実感した。
これがご接待というものか。
ありがとうございました、神峰寺のみなさん!!
俺、まだまだ頑張りマッス!!
追記
俺が泊まった寺は関所寺というらしく、四国八十八箇所に存在する寺の中から、4つだけ選ばれた中の1つらしい。
なんでも、関所寺は弘法大師様がお遍路している人々を見定める場所らしく、悪いことをしていると原因不明の体調不良に陥るとか、そんな噂があるらしい。
OH……俺はお大師様の関所寺で寝たんすか。
別に何事もなく寝れたけどさぁ。
ちょっと怖いと思いました。




