6.夏の訪れ2
お久しぶりです。
朝9時。
窓の外から虫取り網とかごを持った子供たちは元気に走り回っている光景を見かけた。
この光景をみると、毎回小学生の頃の自分を思い出す。
「やっぱ虫取りだよなぁ、夏と言えばよ」
「黙ってプリントやれ」
「はい」
補習初日。これがまだ続くなんて考えたくもないが、自業自得ということで歯を食いしばりながらも自分に言い聞かせる。
その前にこの教室の異様な光景に疑問を投げかけたい。
「なぜ土井センだけなんですか?」
「なぜ間山だけなんだ?」
「さては古文の赤点は俺だけでしたか?」
「正解だ。あぁ、そこの問題は間違いだぞ」
木山は数学、小城は英語だけ赤点であったため、それぞれ別教室で補習を受けている。
「あいつらは1教科だけだからこの時間終わったら帰宅できるらしいぞ」
「なら3教科の俺はどうなるんですか?」
「想像の通り、もう2時間あるぞ。あぁ、そこの問題は間違いだな」
「だぁあああああ」
「とりあえず先生部活のところ行ってくるからしっかりプリントやっとけよ?」
腕時計を眺めると、立ち上がり俺に告げる。
「分かりました。先生は部活頑張ってください」
「頑張ってないやつに応援されたくないな、あぁ、そこの問題は間違いだ」
「もう無理だぁ」
土井センはそうして教室を出て行った。
風通しのいいシャツと窓を用意したところで、風は熱を運んでくる。
徐々に屋外の部活の声が聞こえ始めている。こんな暑い中よくやるもんだ。
蝉の鳴き声と運動部の声と熱風がまとまって襲いかかってくる。
「...アイス食いてぇ...」
「私も食べたいなぁ」
体がビクっと反応し、ドアの方に目をやると蛍光色のシャツと帽子を身に付け、ほどよく日焼けしているポニーテール女子。タオルで額の汗を拭きながら、笑顔をこちらに向ける。恥ずかしい。眩しい。
「かっ...風海<かざみ>か。おはよう」
「おはよう。補習?」
「あぁ」
無愛想に返事をしつつ、目をあわしては、そらす。
何せ、学年の女子の中で上位3位には入るレベルの美少女だ。テニス部のエースとかいう話も綾から聞いた。
「今部活中じゃないのか?」
「休憩中でね、忘れ物あったから取りに来たの」
「そうなのか」
颯爽と自分の席に向かい、ノートやらを取るとドアへ向かう。
「そうなの。それじゃあ、補習頑張って」
「風海も部活頑張って」
あまり大きな声で言わなかった俺の声に、教室から出る手前で振り返り、
「ありがとっ」
と言った。天使がいた。
「どうや間山、プリント終わったか」
数秒後入れ替わりかと思うスピードで土井センが入ってきた。
「...悪魔」
「あ?」