1.いざ冒険へ
「・・・違う」
俺はコントローラーをテーブルに置いて呟いた。
今は高校一年が始まってしばらくした7月な訳であり、部活も何もしていない俺と小学校からの友人、木山<きまや>と小城<こしろ>と俺の家でゲームをしている。
「違うも何もお前が弱すぎるだけだ」
「修行が足りん」
木山はスポーツも勉強も出来るが本気でやることができないなどとほざいているただの痛い野郎だ。
いつも中立的な立場ではあるが、押しには弱い一面もある。長身で短髪で色黒の見た目は何だというのだ。
「うるせぇ!だいたい小城は強すぎんだよ!こちとらこれやんの今日が初めてだぞ!?手加減してくれよ!」
「それは男としてできぬ」
小柄で長文を自ら話そうとしないのが小城である。根っからワイワイしている空間が苦手で趣味はパソコンと読書とゲームのインドア派である。無駄な知識でこいつに右にでるやつは俺らの中では誰もいない。あと前髪が邪魔そう。
・・・それにしても暑い。
まだ7月というのにこの暑さでは夏はたまったもんじゃない。
「・・・いつからこうなっちまったんだろうな」
「お前の中二さは昔から変わらんぞ」
「同意」
「お前らなぁ!?」
ここまで生きてきて思うことは物事への興味の薄れ、である。
何に取り組むにしてもまず面倒くさいと感じ、面白そうな事柄に対しても夢中になることはなかった。
別にゲームが嫌いな訳でもないが、特別好きという訳でもない。
そう、あの小学生の頃のような何の迷いもなく外で日が暮れるまで遊んでいるような心を、俺はもう忘れてしまったようだった。
ならば。
俺はクーラーのリモコンで電源を切り、窓を全開にした。
「間山<まやま>!いきなり何してんだよ!暑いって!」
「溶ける」
「・・・外に出るぞお前ら」
ならば取り戻せばいい。そこから見えてくるのもあるだろう。
そうすりゃ今の生活も心から楽しめるだろう。
あの頃の心を取り戻そう。
「いかねぇよこんなくそ暑い中」
「蒸発する」
「えっ」