表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

4

遅くなりました。


 ゆったりとした時間が流れる。

 現在私は草原に寝転がってうとうとしていた。

 そんな私のお腹の上には怪我を治した狐が丸まって眠っていた。


 お腹暖かい。ヤバイ寝そう。

 ちょっとくらいいいよね。おやすみなさい。


 寒っ! って夜じゃん! どれだけ寝てたの!?

 睡眠値は回復してるけど、空腹度はかなり下がってるね。

 不味いけど、携帯食料でも食べるかな。念のため買っといてよかった。


 私が起き上がると同時に、お腹の上からころりと落ちた子狐が不満そうにカリカリとズボンを引っ掻いてくる。

 が、不意に鼻をスンスンとすると、肩の上に登って私の携帯食料を食べようとしてきた。

 

「だーめ。これは私のなのー」


 黙々と食べ、水で流し込むと半分くらいまで空腹度が回復していた。

 さてと。


「お世話になりました。とりあえず帰りますね」


 九尾の狐にそう言うと、丸まっていた九尾の狐が頭だけ上げて、忠告してきた。


『夜は魔物が活発化する。今日のところは森に働きかけて平原への一本道を作ってやろう。これに懲りたら夜の外出は控えるようにな』

「わかりました」


 ズザザザザと木々が動いて道ができる。


 事前に聞かされていたとはいえ、さすがにあごが落ちた。

 

 ちょっとキモい。


「道を作ってくれてありがとうございます。それではまたいつかお会いしましょう」

『うむ。気をつけてな』


 私は返事をしながら内心ちょっと焦っていた。

 なぜなら、夜の間は町の門が閉まっているのだ。

 今が何時かわからないが、夜になったところだとすればちょっとまずい。


 朝まで狐の集落にいればよかったかなあ。


 なんて、今更感のある言葉がよぎる。

 

 その場その場で生きてるから、後悔は星の数ほどしていると思う。


 とりあえず一本道を無事に通り過ぎてホッとした。


 戻ればいいって? そんな恥ずかしいことできるか!


 ため息をひとつついて、夜の平原を歩き出した。

 ところで横から凄まじい衝撃を受けて私は二転三転ともんどり打った。


「な、に……?」


 周囲を見渡すと、闇の中で光る一対の赤い目があった。

 その大きさからしてかなり小さいと見える。


「とりあえず、ウォーターボール!」


 その目のあるところに魔法をぶつける。

 キュという鳴き声が聞こえた気がしたが、粒子となってインベントリに入っていった。


「なんだったの?」


 インベントリを開けて確認してみる。


「突進ウサギの毛皮……? ということは、今のは突進ウサギって名前なんだ」


 そういえばぶつかったところがやたら痛い。


 ステータスを確認するとHPが8割削られていた。


「うわ。私が弱いのか、突進ウサギの攻撃が強いのか……両方かな。とりあえず、ヒール」


 体が暖かく感じると、痛みは収まっていた。

 よしよし。



「ガッは」


 ゴロゴロと地面を転がる私。


 ……一体何度目だろうね。


 素早く姿勢を立て直してウォーターボールを放った。


「ヒール」


 これ絶対治癒のレベル上がってると思うんだけど。

 ……まあいいや。


「はあ」


 ため息をこぼすと、僅かに自分の影が見えた。


「まさか、夜明け?」


 後ろを振り返ると、薄っすらと光が見える。……の前に。


「ウォーターボール!」


 振り返った先にいた、黒い毛皮のウサギに向かって魔法をぶつける。


「これが突進ウサギ、ね」


 闇に紛れてて目しかわからないはずだわ。


 そして私はずいぶんと離れた位置にあった門へと向かって歩いた。


 日が昇ってからは突進ウサギの姿は全く見えなくなった。

 普通の(?)ウサギばかりである。


 襲い掛かってくるウサギだけ退治して、門の中に入った。


「はあー。疲れた」


 酷くお腹が空いているので、ぽつんと出ている屋台の串焼きを5つ買って食べた。

 それからすぐに宿屋へ行って(今から泊ということでかなり驚かれた)寝た。


「はうあー」


 あーよく寝た。今何時ー? って時計ないんだった。


 しかたがないのでそのまま宿の階段を降りる。


「おやあ! アンタよく寝たねぇ。今昼すぎだよ! 昼食は外でお願いね! それと、まだ泊まるなら追加料金を払って頂戴」


 桶にいっぱいの洗濯物を抱えた女将さんに出会った。


 結構筋力ありますね……。


「いえ、とりあえず今日はいいです」

「そうかい! またご贔屓に~」


 そう言って、女将さんは奥の扉を蹴破って外へ出た。


「しかし洗濯物とか、AIのルーチンなんかすごいんですけど」


 内心、お風呂入ったほうがいいのだろうかと思って、服の匂いを嗅いでみたがそこはゲーム。臭くなかった。


 さてさて、商業ギルドに行きますかね。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ