十歳の頃の思い出1ページ
広間から出て謙棲の家に二人で帰り召し使いたちに挨拶を済ませ部屋へと向かった
「謙棲様、どうぞ」
ドアを開け謙棲を中へ通すと続くように中に入り一息ついた
「ではお食事を用意してきますね」
と、言い出ていこうとしたときに
「あ・・・ややまって」
突然聞こえた声に振り向くと謙棲が泣きながら手を出してきたのだ。
父である紫龍の時には泣かなかった謙棲が今日初めて会った藍哉が出ていこうとして泣いてくれた
その時初めて嬉しいと言う感情のもと泣いてしまった。これが世に言う嬉し泣きと言うものだろう
「謙棲様、私はあややではなく藍哉です。今日だけは料理長に作っていただきましょう」
召し使いの女性に作ってもらうように頼んだ後に謙棲の遊び相手になった。
遊んでいると謙棲が自分自身のことをアキヤと呼んでいたのであるその事に驚いて聞き返してしまった
「なぜ謙棲様はアキヤと言っているのですか?」
聞いてみると謙棲はアキヤと呼んでと、言ってきた
始めて命令されたような気がして少し微笑み
「分かりました。私だけは貴方の事を謙哉と呼びましょう」
そして、召使の女性が呼びに来て
「さて、夕食の準備がて来ましたので行きましょう」
謙棲いや、謙哉の手取り下の階へと下り夕食をとってもらい風呂に入れ眠ってもらった
その後に藍哉も夕食をとっていた時
召し使いの一人が
「藍哉の苗字はなんて言うんだ?」
そんなことを聞いてきて他の召し使いたちも耳をすませていた
「馳賢様の執事は黎司様の苗字は誇霖、紫龍様の前にこの国を納めていた一族の長男。嘩緒羅様の執事は緋蘇那様の苗字は諏佐兜、あの伝説の戦闘部族志那鴿家の次に強い戦闘部族諏佐兜の生き残り。息子たちの執事は全員凄い人達だから藍哉はなにかな~?ってみんなで話していたんだ」
目を輝かせながら言ってくる召し使いたちに申し訳が無く言いにくくなってしまった
まさかあの伝説の戦闘部族の生き残りだと言ったらどんな目をされるか
「え~と、し、志那鴿ですが?」
本当に言いにくそうに言うと召し使いたちは目を見開いて驚いた
もう苦笑いしかできなかった
こんなんでこれからやって行けるのだろか
その心配もなく上手くやっていき一年また一年と月日がたった
藍哉、十歳の頃の思い出になった