謙棲の選択
「…藍哉は…裏切り者ではない!!!!嘩緒羅兄さんも緋蘇那も誰も裏切ってなどいない!!!!」
ガサッ
藍哉の目をしっかりと見ながら宣言した謙棲に
―あぁ、成長したな謙棲―
藍哉は後ろを向き緋蘇那に出てくるように体で表した
「成長しましたね謙棲様」
緋蘇那も嬉しそうに藍哉を見てきた
家老たちはとても悔しそうな顔をしているのは藍哉と緋蘇那にはしっかりと見えた
その後、皆で城に戻り嘩緒羅を呼び出した
「これより、兄嘩緒羅が謀反を起こそうとしていると言う噂についてだが兄上、嘘ですよね?」
椅子に堂々ではなくちょっこりと座っている謙棲に嘩緒羅は笑いが込み上げてきた
もう、我慢ができなくなったとき
「謙棲様、嘩緒羅様は謀反を起こす気は全くありませんよ。嘩緒羅様は今日までも謙棲様の為に動いておりました」
謙棲の横に立っていた藍哉が嘩緒羅の謀反について否定した
ただただ微笑んでいる藍哉の顔には感情が全くなかった
家臣たちの方に目線はずっと行っていた
「藍哉の言う通り私は謙棲に謀反を起こす気はないよ。私は兄や謙棲が作った世の中を見てみたいんだ」
「……兄上、本当に申し訳ございませんでした」
謙棲は立ち上がり嘩緒羅の前で頭を下げて泣いた
兄上、兄上と何度も繰り返しながら涙を流した
紫龍のときに泣けなかった分でもあったのだろう。藍哉はそれを横目で見ながら緋蘇那と共に家臣たちへ歩み寄っていた
「謙棲様を惑わせた覚悟は出来てますよね?」
「嘩緒羅様のお体に触るようなことしてただで済むと思っているのですか?」
笑顔だが執事たちは自分達の主を道具に使われたことに相当頭に来ていた
「「覚悟してくださいね?」」
その日の夜は城から沢山の悲鳴が聞こえたが何があったのか町の人々は知らない
だが、家臣たちはそれ以来藍哉や緋蘇那に逆らうことがなくなったと言う………