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海老怪談  作者: 海老
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かみしばり

そうさくです

 筆者が若かりし日のことである。


 今から十数年前、短期バイトで知り合った自称霊感のある田山くんと心霊スポットや廃墟探索に出かけていた。

 大阪から奈良へ続く国道の途中で、打ち捨てられたトラックが目印の廃墟がある。

 特に曰くはないのだが、廃墟があるのは国道からでも確認できた。

 廃墟の中は、ただがらんとしているだけの廃屋だった。

 家具らしきものは幾つか残っていたが中身は何もない、邪魔なので置いていったという感じだ。

 当然ながら仏壇みたいなインパクトのあるものなどあるはずがない。

 汚い意外の感想はなく、出るか、ということになった。

 出口に向かうと置き去りにされた靴箱があった。ふと見たら、入るときには気づかなかったものがある。

 中身の見える透明なケースに入った博多人形。

 ちょっと古い家にならどこにでもありそうなものだったが、少しおかしい。

 華やかな和服を着た人形は、黒い紐でぐるぐる巻きにされていた。

 よく見れば、髪の毛を幾重にも編んだ縄で人形は亀甲縛りに巻かれていた。

 とてつもなく嫌な気持ちで車に戻った。

 こんなイカレた変態と鉢合わせたら命は無い。

 ずっしりと腹の中に必要のない嫌なものを溜めたような気持ちだけが残った。

 あれから廃墟に入ろうという気は一切なくなった。

 田山くんとは以来疎遠になった。




 十数年前に筆者に起きた事である。

 とりたてて心霊的な要素はないのだが、ひょんなことから田山くんのその後を知ることができたので、ここに記す。

 筆者は知らないことだったが、田山くんはその当時から特別少年院帰りの人物であったという。

 何をしてそうなったかの詳細は憚りがあって書けないが、彼を知る筆者にとっては信じ難い内容であった。

 田山くんは筆者とよくよく遊びに出かけていた時期の以前から、国内の廃墟に足繁く通っていた。

 筆者と疎遠になった時期からは、お遍路さんをしていたともいうし、怪しげな新興宗教団体に所属したりと深みにハマっていった。

 田山くんが共通の知人に語った所によれば、筆者と仲良くしていたのには理由があったのだそうだ。

 なんでも、自分の罪を筆者に被せる目的があったらしいのだ。

 これがリアルな犯罪であれば警察沙汰なのだが、その罪というのは霊的な呪いとかそういう類のものらしかった。

 そんな変な目的で仲良くするフリをされていたというのも知りたくない話ではあるのだけど、そこからさらに奇妙な話になった。

 田山くんは筆者と最後に会った以後、ゾンビに怯えるようになったのだそうだ。

 お祓いに行けば手に負えないと断られ、お守りを買えば中身が割れ、家のお札は剥がれ落ちるという有様で、件の怪しげな宗教団体に縋るより無いくらいに追い詰められた。

 薬物でもやっていたのではないか、と知人は嗤って教えてくれた。

「海老やんのせいでゾンビにいじめられてる言うてたで」

 知人がからかうように言うので、筆者は笑って誤魔化した。

 筆者には霊感というものは一切無い。

 霊現象みたいなものは、まず科学的に分析すべきだと思っている。科学で説明のつくようなものを霊の仕業にすることの方が浪漫が無いと考えているくらいだ。

 ゾンビというのには、思い当たる節がある。

 田山くんは奇行の末に行方知れずになった。

 最後に見かけられた時の様子は、詫びの言葉を叫びながら自転車で走り去るというイカレた姿であったらしい。


そうさくです

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