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海老怪談  作者: 海老
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人形鬼

今、書かねばならぬ。



 今回は怪談ではあるものの、タイトルを記す。

 人形鬼。

 と、しておく。



 カナコ女史と二度会った。

 明日もまた会ってお話を伺う予定である。

 前話でカナコ女史と予告していたが、今回は別の話である。



 美月さんは妙齢の女性だ。

 学生結婚をしたが、数年で夫とは死別している。それからずっと独身だ。

 美月さんと知り合ったのは、とある小さな劇団興行の打ち上げのときである。

 美月さんを狙う男は多かったが、誰も彼女のハートを射止めることはできなかった。筆者に関しては、当時は付き合っている女性がいたのでそういう気持ちは全くなかった。

 美月さんにお仕事の関係で業者を紹介したことをきっかけに、友人ともクライアントともつかない関係が今年で七年目になる。

 七年という月日で様々なものが変わったが、筆者は独り身のままで、美月さんも独り身のままだ。

 ついぞ、美月さんの友人から「付き合ってみたら?」と、もちかけられたが今更そんな気持ちも起きない。最初からそうならない出会いで、これからもそれが変わることはないだろう。



 美月さんは人形の蒐集を趣味としている。

 彼女は御両親の遺した一軒家に住んでいるのだが、いたるところに人形が並べられていて薄気味悪い。

 ビスクドールもあれば、アニメのフィギュアもある。

 木を隠すには森。

 美月さんの本命は、亡き夫に似せたドールである。

 ひどく二人で泥酔することがあり、筆者が荒れていた時に、彼を紹介された。

 マネキンを交えて三人で酒を飲んだ。

 美月さんは人形に命が宿っていると信じていた。

 命は一度きりだ。

 もし、命が人形に宿るなら、それは命のように見える別の何かではないのだろうか。


 今日、美月さんに頼まれた品を納品した折に、彼女は上機嫌で大きなダンボール箱を差し出した。

「頼まれて作ったから、これ持って帰って下さい」

 と、美月さんに言われた。

 上機嫌の美月さんに、何やら厭な感じを受けた。

「なんも頼んでなかった思うけど、これ、なに?」

「いいから、持って帰ってから空けてみて下さい」

 断れず、持ち帰った。

 美月さんの家まで車で移動したのだが、なぜかナビが妙な所に動く。

 帰り道は、道を間違えたりで家には遅く着いた。

 途中、コンビニに立ち寄ったのだが、財布に入れていたお守りが割れていた。

 これはよくないな、と感じてダンボールを開けた。

 中に入っていたのは、球体関節のドールである。お姫様みたいで、幾分か少女趣味のドレスを着せられている。

「似合わんやろ」

 と、口をついて出た。

 手紙が同封されていた。

 以下、原文を意訳したものを記す。


『海老さんへ

 いつも、私の無理な注文をきいてくれてありがとうございます。

 私の夫を見ても厭な顔一つされない気遣いに感謝の言葉もありません。

 今まで黙っていたことがありますが、海老さんの奥様をいつも見かけています。夫とも話せるようで、いつもお目にかかる時は、私の目にはご夫婦でこられていました。

 あれから五年も経ちますが、奥様の様子は少しずつ様変わりされていらっしゃいます。そろそろ、お姿が大きく変わりそうで、奥様も悩んでいらっしゃったので、差し出がましいことかもしれませんが、奥様の身体を造らせてもらいました。

 お洋服もお洒落のものを用意しています。季節に合わせてぜひ、お着替えさせてあげて下さい。気恥ずかしいと思いますけど、それは女には大事なことです。

 私と同じ境遇の海老さんには、親近感があります。

 そばにいることを感じて下さい。

 お人形のお手入れ方法などは同封してあります。本もお古ですけど入れてありますので、参考にして下さい』

 美月さんらしい几帳面な文字だった。



 非常によく出来た人形だ。

 値段をつけるとしても、数万円を超えてもおかしくないのではなかろうか。

 とりあえず、今、ネットカフェでこれを書いている。

 家にこれを入れてはいけない気がする。



 困ったことになった。

 どうしたら、いいか、もしもアドバイスのある方がいたら教えて下さい。


どないせっちゅーねん

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