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海老怪談  作者: 海老
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空地

十年ほど昔の話



 親戚の管理している借家に三週間ほど泊まることになった。

 当時、仕事の関係というか、色々と面倒なことがあって片付くまで逃げていたことがあったのだけど、その間にあったこと。

 昨日まで忘れていたので、また忘れない内に書くことにする。


 片田舎の一軒家なのですることがない。

 仕方なく自転車で行ける範囲の所で釣りをしたり、レンタルDVDで時間を潰していた。

 近所に中学校があって、借家の庭に学生が来ることがあった。庭といっても別に塀がある訳ではないので、ちょっとした空地でしかない。

 

 空き缶やら何やらと、注射器のポンプが捨てられていたので、シャブ中が夜中にやってきているようだった。

 食料の買い出しを終えて帰ってくると、何人かの学生服の女子中学生が空地の草むらから出てきたので、シンナーでもやってんのかと思ったが、特に何も注意しなかった。

 その家は、平屋の古い木造で、虫が多く出た。

 ゴキブリが少ないのはよかったが、泥蜂がよく飛んでいた。

 泥蜂というのは、土でトックリ型の巣を造る蜂だ。人は刺さないが、虫の幼虫を狩っては巣に運ぶ。

 家の玄関に巣を造っていたので叩き壊すと。中から芋虫の死骸がぽろぽろ出てきて不快だった。後で知ったが、芋虫は幼虫の餌になるのだという。

 いやに数が多かったのを覚えている。

 蜂というのはなんだか苦手だ。特に、足の長いタイプ。


 中学生が庭に毎日来ていると気づいたのは一週間ほどしてからだ。

 ブラブラすることしかやることがなく、何の気なしに見ていたが、中学生が茂みの中で何をしているか気になった。長くても10分ほどで出てくるので、エロい何かがあるようには思えない。虫の観察をしている風でもない。

 中学生たちが立ち去っていたから見に行くことにした。

 茂みの中には、絵具でめちゃくちゃに色をつけられた石があった。見ようによっては原始的な祭壇に見える。

 その一画だけ、いやにジメジメして毛虫などが多かった。

 お菓子が石の前に置かれていて、何かお供えでもしているのだろうと思った。

 なんだか不快だったので、借家にあった金づちでたたき壊しておいた。


 そこに住んでいる間、泥蜂が異様に増えた。

 出ていく時に、ひどくたくさんの蜂にまとわりつかれた。


 夜中、庭先が光ったりしていたが、全部無視した。

 特に変事はなかったが、最後の一週間はホームセンターで草刈り用の電動鎌買って、庭を綺麗にした。

 その時に変なゴミが出てきたが、全部燃やしている。

 庭という名の空地をキレイにするのに、最後の一週間は費やした。

 草を刈っている時に、スーツ姿の男に話しかけられた。

「どうして、そんなもったいないことをするんですか」

 と、真顔で聞かれたので、

「ぶっ殺すぞ」

 と脅しておいた。電動鎌を持っていたこともあり、男は逃げていった。

 その男は行く先々で何度か見かけたので、二回ほど詰めよって怒鳴ってやった。

 何が起こったていたのかは知らない。


 霊能者という人には何度か会ったことがあるが、その度に、なんか変なモノから恨み買ってるね。と言われる。人間ではないし、動物でもないと。

 なんとなく、あの石を壊したことじゃないかな、と思うのだ。


 ベッドの下に、泥蜂が巣を造る夢を見る。

 俺はいつも、平べったい形の小汚い虫を潰していて、ひどい疲れと共に目覚める。

 またあの男と出会うことがあったら、アレはなんだったのか、当時のお詫びと共に、酒でも飲みながら話してみたいものである。


この話のみ実体験を脚色。

未だによく分からない思い出として残っている。

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