65.懺悔(2)
「あんたのヤキモチでこんなことになって! 大体、自分が妻子もちと不倫なんかするからいけないんでしょ!」
「……」
「相手の奥さんにばれたら、どうやったって、裁判になれば負けるんだよ! 分かってるの!」
わかってはいても、どうにもならないのが男女の仲だ。
しかし、妻側の咲枝にしてみれば、不倫をしたのが例え友達であっても敵のようなものだ。
「あんたみたいのがいるから、私たち妻は戦々恐々としてなくちゃならないんじゃない!」
そこはダンナに文句を言って欲しい。
「咲枝、悪かったとは思ってるよ。それよりも、実香をどうしよう。あのままじゃ本当に実香がおかしくなっちゃうよ」
これ以上咲枝の話を聞いていたのでは、頭がおかしくなるか、最終的には菜都芽が怒鳴りだしてしまうだろう。
ということで、矛先を変える菜都芽だ。
「分かってるわよ。分かってるけど……可哀想な実香」
「だから、なんとか実香を元の元気な実香に戻したいのよ。そのためなら、私はどんなことでもするから」
当たり前だと言わんばかりに、咲枝が横目で菜都芽を見た。
「とにかく、スイカでも食べて、落ち着いて考えよう」
スイカを食べたところで、何が変わるわけではないのだが、とりあえずブレイクタイムだ。
スイカを切ってくると、隣の部屋で剣を振りかざしていたギャングが喜び勇んでやってきた。
洋服をびしょびしょにしながらかぶりつく。
その様子をじっと見ていた咲枝が、ため息を吐いたかと思うと、静かに言った。
「マー君。お皿の上で食べてね。洋服がビショビショでしょ」
思わず(そっち?)と突っ込みたくなる菜都芽だった。
スイカもほとんど綺麗になくなると、やっと咲枝が本題に入った。
「やっぱり、実香に全てを話すしかないわね」
それしか方法がないのはわかっている。
問題はその先にある。
「いいよ。もう一肌脱ぐわよ」
「ありがとー」
菜都芽が両手を合わせて拝むまねをした。
「バカな友達を持ったものよね」
「咲枝がバカをしたときは、私が助けるから」
「バカなんてしません!」
「まぁ、一寸先は闇だから」
咲枝にジロッとにらまれ、小さくなる。
さすがに、今回のことがあるので、大きなことが言えないのだ。
「実香の彼氏にちゃんと謝って、実香と仲直りしてもらうように説得してよ」
「うん、そこは……頑張る」
あんなことがあると、冗談でしたとは言いづらい。
しかし、ここはバカな女にならないわけにはいかないのだ。
イヤ、とっくにバカな女になってしまっているのかもしれない。
「その後よね……」
咲枝が考えていることは、菜都芽が思っていることと同じことだろう。
「あんた、大事な友達を失う覚悟はできてるの?」
菜都芽が力なく頷いた。
「しょうがないよね。自分が悪いんだから」
「今回のヤキモチは、代償が大きいわね」
「うん……」
「とにかく、何とか穏便に行くようには話すけど、覚悟はしておきなさいよ。実香だって神様じゃないんだからね」
「……うん。本当に申し訳ないって思ってる。あんなにも、私のことを思って泣いてくれるなんて、思わなかったのよ。本当に大切な友達だったって、分かったときには遅いんだよね」
「そうだね」
菜都芽が肩を落として、呟くように言い、咲枝が両手で顔を覆った。
「明日にでも実香に会ってくるから、あんたは彼氏にちゃんと連絡してよね」
「うん、必ず連絡して、ちゃんと話すから」
そう言ったとき、チビギャングが『オギャー』と泣き出した。
どうやら、オムツタイムのようだ。




