58.別れのメール(2)
『何が誤解? 菜都芽に何をしたの?!』
「やっぱり菜都芽さんのことなのか。とは思ったけどね。
この誤解はどこから発生しているんだろうなぁ」
再度、ゴロンと寝転がると天井を見るめる。
扇風機の風が空気を動かす。
よどむ様な暑い空気をかき回しているだけなのだが。
「う~ん、真夏になったら辛いなぁ」
今の状況を分かっているのか、関係ないことを考えているようだ。
「そうだなぁ……。扇風機の前に氷を置いたら涼しくなるかもしれないなぁ」
扇風機に顔を向けながら、そんなことを考えているのだが、それでいいのか天馬!
「そうだ! 実香のことだった。実香ね~。どう説得するかなぁ」
いくら考えても妙案が浮かばない。
天馬は諦めるように次のメールを送った。
『逢って話しませんか?』
逢えば顔が見える。
コミュニケーションもとりやすいというものだ。
メールのやり取りでは、誤解の溝が深まる恐れがある、と考えたのだが。
残念ながら、実香からの返信は冷たいものだった。
『逢う必要はありません』
「そうくるかー。怒ってるねぇ。かなり、怒ってるよねぇ。オレが実香でも怒るよなぁ」
どこか他人事のように聞こえるが、これで結構焦っている天馬だった。
「彼から?」
咲枝が実香の手元を見て言った。
「うん」
「なんだって?」
「逢って話そうって」
「で? まさか、逢う気?」
「……まさか、菜都芽を泣かせたヤツだよ。菜都芽は親友だもの。それを知っていながら、そんな酷いことをしたんだから。許さないよ。逢う気もないよ」
「だよね」
咲枝が大きく頷いて見せた。
とはいえ、心の奥でちくりと刺すものがある。
それが何なのか実香には理解できない。
『逢う必要はありません』
そう入力すると、送信ボタンを押した。
しかし、その押し方はどこかためらっているように見える。
「これで、菜都芽の涙も無駄にはならないわね。良かった、実香が大やけどをする前で。やっぱり、持つべきものは友達だよね」
咲枝が太って幅広くなった顔を更に大きくして笑った。
実香も咲枝の笑いに同調するように笑顔を作ったが、心からの笑いにはならなかった。
(何だろう、なんだか辛い……)




