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51.最悪の目覚め(1)

 朝、目が覚めると頭が割れるように痛かった。




「おはよう、天馬」




 天馬と呼ばれて、声のする方へ体を向ける。


 すると、どういうわけか、女性らしき髪の毛と細い指が布団から出ている。

 

 天馬はその光景に多少の驚きを感じた。


 しかし、どんないきさつでこうなったにせよ、相手は実香以外でないはずはないのだ。


 そう思いながら、女性の顔にかかっていた髪の毛を指で掻き分けた。




「おはよう、実香」




 笑顔を向けたつもりが、見事に硬直してしまった。


 天馬には全くわかっていなかったのだ。なぜ、そこに実香以外の女性が存在しているのかが。

 

 記憶を超高速で辿っていくが、どうしても遊園地を出て、食事をしてワインを飲んだところで切れている。


 元々、酒に強いわけではなく、ワインなど飲んだこともないのだから、余計に酔いが回るのが早かったように思う。


 それにしても、なぜこの状態なのか。

 

 天馬は自分が衣服を着けていることを確認すべく、自分の体を確認してみた。


 が、残念ながら体には布切れ一枚ついていなかった。




「あ、あの……」




 うろたえる天馬に対して、ゆっくりと目を開ける菜都芽。




「なに? 何をうろたえてるの?」




 菜都芽はベッドに座り込むと、大きく伸びをした。


 その瞬間、上半身が露出する。


 天馬は真っ白な菜都芽の胸から目をそらした。




「あら、夕べはあんなにむしゃぶりついたくせに」




 そう言いながら笑い、天馬に顔を近づける。




「う、嘘だ! 冗談は止めて下さい! オレが、オレが菜都芽さんと……そんな、馬鹿なことが……」


「あら、覚えてないの?」




 菜都芽の意地悪そうな目が天馬を捕らえる。


 何も覚えていないらしく、天馬は両手で髪の毛をつかむと、俯き考え込んでしまった。


 これでは、何を言ってもどうにもならないと読んだ菜都芽は、バスルームへと全裸のまま歩き出した。

 

 しかし、その背中はどこか楽しそうだ。


 


 夕べも同じようにバスルームで汗を流していた。

 

 歩くこともままならない天馬を放っておくこともできず、近くにあったホテルへと入ったのだ。

 

 ホテルの部屋は男女の歓喜を待ち望むように、大きなベッドが部屋の真ん中に置かれていた。




「実香ちゃん、愛してるよ~」




 あれからずっと、天馬は同じように実香のことばかりを口走っていたのだ。


 さすがに菜都芽としては、ここまで自分がないがしろにされていることに、苛立ちを覚えていた。




「シャワーを浴びてくるわ」


「分かったよ~ 実香ちゃん、待ってるからね」




 どう見ても素面の天馬は、次々と服を脱ぐとベッドへともぐっていったのだ。


 菜都芽は、まさか天馬が全裸になってベッドに横になっているなどとは思ってもいなかった。


 汗ぐらいは流すだろうと思っていたのだ。


 ところが、シャワーを浴びて出てみると、早くも寝息を立てている。


 しかも、ベッドの上で布団も掛けずに大の字スリーピングだ。




「あのさ~ これが実香でも、本当に何もせずに寝るわけ? ここに美女がいるのに、お前は何も感じないってのか!」




 天馬の前で仁王立ちになるが、爆睡している天馬には聞こえない。


 仕方なく、菜都芽は酔いで火照った体をベッドに横たえ、一糸まとわぬ男性に布団をかけたのだった。




(最低な夜だわ)




 と言うのが、菜都芽の感想だった。





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