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50.今夜はワインで(2)

「いつもはどこでデートしてるの?」


「あ……オレの部屋が多いですね」




 日ごろの行動に対しては即答できるらしく、安心感が伝わってくる。




「天馬の部屋で何をしているの?」


「そうですねぇ、TVを見たり、話したり」


「それだけ?」


「はい」




 菜都芽が驚いたように天馬を見た。


 というのも、今までの実香を知っているから余計なのだ。


 今までの実香なら、そんな風に時間を無駄に使うようなデートは許さなかっただろう。


 今日のように、一日フル回転で遊ぶようなデート出なければ、デートとみなさないはずなのだ。




「へぇ……」




 驚いている菜都芽の前に、おいしそうな料理が並び始めた。


 どれも彩りよく盛り付けられ、いい香りがしている。




「おいしいワインですね」




 菜都芽の驚きなど全く意に介せず、天馬がワイングラスを空にした。


 すると、菜都芽がボトルを取り上げ、天馬のグラスを満たす。




「実香はロゼが好きなのよ。今日は赤だけどね」


「そうですか、ロゼねぇ。全く分かりませんね」




 そう言うと、大きな声で笑った。


 一日一緒にいて、こんなに大きな笑い声を聞いたのは始めてのことだ。


 どんなときでも、抑えた笑い声しか立てなかったのだ。




「あら、昼間と違って、ずいぶんと陽気になってきたわね」


「そうですか? いや~、なんだか楽しいな」




 おいしい料理とおいしいワイン。


 これで実香がいたらどんなに幸せだろうと思いながら、天馬は今この瞬間を楽しんでいた。


 


 話が弾み、大分酔いがまわってきた頃、時計の針が十一時をさした。




「あら、もう十一時なのね。あんまり楽しかったから、時間が経つのを忘れていたわ」


「そうですね、本当に楽しかった。実香といるといつも楽しいです」

 



 酔っていっているのか、それとも素面で菜都芽をけん制しているのか、先ほどから同じようなことを繰り返している。

 

 菜都芽は実香の話ばかりされて、多少プライドを傷つけられながらも、これほど思われている実香に軽い嫉妬を感じていた。




「今から帰ると、何時に着くの?」


「オレですか? 何時かな……」




 ぼんやりと時計を見ているが、考えがまとまらないらしく、いつまでも答えが出てこない。




「とにかく、出ましょうか? 私も酔ってしまって、外の風に当たりたいわ」




 そう言うと、菜都芽が伝票を取り上げ、出口へと歩き出した。


 後を追うように、ゆっくりと天馬が着いて歩く。


 一般的に考えたら、大変おかしな構図だが、今の天馬には全く感覚がないのか、照れる様子も見えない。


 


 店から出ると、外は昼間に比べて、大分涼しい風が吹いていた。

 

 菜都芽はよろける天馬を支えるように、歩き出した。




「天馬ぁ、大丈夫ぅ?」




 大丈夫かと声を掛ける菜都芽も、かなりアルコールが回ってきている。


 楽しくて、いつも以上に飲んでしまったことは確かなようだ。




「大丈夫だよ、実香ぁ」




 目の前にいる菜都芽に対して、『実香』というあたりは酔っているようだが、見た目は素面なのだから、全く分からない。


 その逆に、見た目はかなり酔っている菜都芽だが、頭はいつも以上に冴え渡っていた。



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