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46.トリック(2)

「天馬さんは実香のことをあまり知らないでしょ。例えば、どんなことを喜ぶとか。どんなところに連れて行ったらいいかとか」




 蝉の鳴き声が、菜都芽の笑顔と重なり、天馬の興味を誘った。


 それは、決して女性としての興味ではないだろう。




 後に、彼は今日のことをこう語っている。


『あの時は、彼女が美しい妖怪のように見えたよ。彼女に付いて行ったら、実香のことも分かるだろうが、それより次の小説の題材になるような、素晴らしいことが待ってる、そんな気がしたんだ』


 彼にとって全てが小説に結びつくようだ。




「そうですね。じゃぁ、今日はいろいろと教えてください。

ただ、恥ずかしい話ですが、俺はあまり持ち合わせが無いので……」




 そう言いながら、鼻の頭を掻く。




(これが、実香が言っていた癖か。こんな癖のどこがいいのか分からないわね)




「大丈夫よ。私はちゃんと仕事をしているわ。あ、ごめんなさい、悪い意味じゃないのよ」




(ただ、あんたみたいにいい年をして、遊んでいるような男が嫌いなだけよ)




 菜都芽の心の声は天馬には届かない。




「すいません」




 すいませんと言いながら、照れたように笑う。全てが気に入らない。




「そうね~。天気もいいし、遊園地にいきましょう! 女の子は、アトラクションが好きなものよ」




 そう言うと、天馬の腕を取り歩き出した。




「あ、あの、菜都芽さん」




 連行されるように天馬が引っ張られる形になる。


 決して、男女の浮き足立った感じが無いのだ。




「なに?」


「嬉しいですけど、これは……ちょっと。実香に申し訳ないから」




 そう言いながら、菜都芽の絡んだ腕に視線を向けている。




「あら、こうするのも実香がやって欲しいことよ。天馬さんは、実香と腕を組んだりしないでしょ。手だって、やっと実香が先につなぎたいと言って、つないだくらいでしょ」


「よく、知ってるなぁ」




 参ったなと言いたげに笑う。


 女友達と言うのは、全てがお見通しのようだ。


 


 大きな入場ゲートをくぐると、そこは夢の国。

 

 目の前に広がるそれは、きれいに形作られた花たち。


 子供が喜びそうな、風船を持っているクマやライオンの着ぐるみたち。


 大きな音楽は心を躍らせるにはもってこいのリズムをきざんでいる。


 視覚と聴覚をフルに刺激するそれらは、文字を駆使して全てを表現しようと考える天馬を大いに刺激した。




「凄いなぁ」




 どこから持ってきたのか、園内案内図を手にして、考えている菜都芽が、最初に乗ろうと言ったのは、十機あるジェットコースターの中のひとつだった。




「ジェットコースター? 子供の頃に乗った以来だなぁ」




 腕を引っ張られ、輝く笑顔で早く行こうとせがまれる。


 不思議な感覚が天馬を捕らえていた。



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