44.心の壁(2)
「そういう実香は、今誰と付き合ってるのよ」
「先週別れたのが一人。結構、面倒なヤツだったわね」
「それって、一年先輩の芸術家気取りの人でしょ?」
「そうそう、面倒だからさ。で、今はカメラ大好きなカメラお宅と付き合ってるよ」
「実香って変なのが好きだよね」
毎度毎度、付き合う相手が何かに固執しているタイプばかりなのだ。
「変わってるのって、見ていて面白いんだもん」
「咲枝は?」
「私? 今三人いるけど」
と、平然と答えるのだ。
「三人か、いいな。私も増やそうかな」
実香がバックからチョコレートの箱を出すと二人の前に出した。
「ありがと」
「サンキュ」
二人がそれぞれ摘み上げたチョコレートを口に入れる。
「でも、どんなに付き合ってみても、これっていうヒットに出会えないのは何でだろうね~」
口をもごもご言わせながら、実香が言ってきた。
「確かに! 最初はいいんだけど。寝ちゃうと飽きるのが早くなる」
菜都芽が言う。
「そうそう、簡単に許したらつまらないよね~」
咲枝も同意権のようだ。
三人でそんな会話を散々楽しんできたのだ。
―――本当の恋なのか。
どちらにしても、これほど煮え切らない実香に、いい加減うっとおしさを感じ出していた。
「素敵な人だとは思うんだけど、あまりにも……ね」
「でも、寝たら魔法は解けるんじゃない?」
昔を思い出して欲しくて、そんなことを言ってみた。
「学生の頃はそう思っていたけど。これだけ何もないと、魔法も何もないような気がしてくるのよ」
「焦るとろくなことが無いわよ」
「そうだけど……」
一体何を求めているのか、実香の心情がつかめない。
それどころか面倒で仕方が無い。
(人どころじゃないのよ!)
「だったら、私が一肌脱いであげるわよ」
「え? 一肌? どうやって?」
「要するに、実香を本気で愛しているなら、もっと積極的に出て欲しいわけでしょ?」
菜都芽の冷たさを帯びた言葉を、実香は全く感じないのか。電話越しに『そうそう』と頷いている。
面倒だからこそ、さっさと全てにけりをつけたい。
それが本当の菜都芽の気持ちなのだ。
「だったら簡単じゃない。学生のときと同じよ」
「学生のとき?」
実香の脳裏に学生時代が蘇る。
―――あの頃も、良くこんな話をしていた。
「彼の本心が知りたい」
「好きだって言ってるけど、他の子とデートしてたって話も聞くんだよね」
結局はいつの時代も同じなのかもしれない。
想いは、相手の気持ちの確認にあるようだ。
「だったら彼の気持ちを聞いてきてあげるよ」
そう言って、彼と話して解決に導いてくれたり。
逆に、浮気が見事暴露されたりと、それはそれで楽しかった。
そんな時代を共に過ごしてきた仲間だからこそ、信頼できるのだ。
「どうやって?」
電話から聞こえる実香の声が、学生時代に戻っているように聞こえる。
「ふふっ……」
菜都芽の含んだような笑いが聞こえてきた。




