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40.ランチとパスタ(2)

「こんにちは」




 胸元が大きく開いた白いブラウスに、ジーンズのショートパンツ。


 いつになく念入りに化粧をし、ネックレスやイヤリングをつけた菜都芽は、これでもかというほど女性を強調していた。




「友達の菜都芽よ。菜都芽、こちらが天馬。私の彼よ」




 そう紹介して、会釈を交わす。


 にっこりと微笑む菜都芽に対して、儀礼的に笑顔を向ける天馬。


 三人が席に着くと、ホールスタッフがメニューを持ってやってきた。


 三人が注文を終わらせると、会話が始まるが、ほとんど菜都芽が話しかけることに対して、天馬が答えるという感じで進んでいった。


 テーブルに並べられるパスタとサラダ。


 明るい雰囲気の店内。


 客層も落ち着いていて、騒ぐような年齢の子供もいない。


 会話を楽しむにはちょうどよい環境だろう。


 大人の雰囲気、卒のない会話。


 社会で生きる女の巧みさ。


 それらは、実香には全くないものばかりだ。


 全く違う二人を前に、天馬は優しい笑顔を浮かべながら、会話を楽しんでいるようだった。




「仕事は何をしているんですか?」


「売れない作家です」


「どんなものを書いているのかしら、書店に並んでいたら、ぜひ読ませていただきたいわ」


「残念ですが、まだ活字になったことはありません。

今は、いろいろな出版社に応募しているだけです」


「そうなの。定職にはつかないんですか?」


「定職ですか。俺は、小説を書く以外にとりえがないからなぁ。

正社員として働いたら、書く時間がなくなるような気がするんです」


「そりゃぁ、そうでしょうけれど」




 実香を見ると、(いいのよ)というように頷いている。


 菜都芽としても、別段天馬の仕事のことをとやかく言う気はないので、話を切り替えた。




「ここのパスタは気に入ってもらえました? 

私のお気に入りの店なんです」


「ええ、おいしいです。この店の雰囲気もいいですね」


「ここは女性が好むように作られてます。色調といい、店内の装飾品といい。メインは女性という感じね」


「そうですね。こういうところに、実香をつれてきてあげたいな」




 そう言いながら、実香を見るのだ。


 その優しい視線と態度、声のトーン。


 全てが愛情の深さを物語っているように菜都芽には感じた。




「いつでも来れるでしょ。働けばいつでも。このくらいの店なら。いえ、もっと豪華なお店にだって来れるわ」


「そうですね、でもそんなに豪華な店にいっても、気遅れするばかりだから、気軽に入れて綺麗な、女性的な店に連れてきてあげたいな」


「全てが実香基準みたいですね」




 多少の嫌味が入っていなかったとは言い切れない言葉だ。


 だが天馬にとっては、菜都芽の言葉に何が入っていようと、全く意に介することはないようだ。


 なぜなら、天馬には実香しか見えていないのだから。

 

 多方面から投げかける言葉の数々に対して、さらっと答える天馬とのやり取りは、一時間余を費やして終わりを告げた。

 

 そして、別れるときに菜都芽が天馬に握手を求め、にっこりと微笑み、こういったのだった。




「また、お会いしましょう」



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