37.草食系か? ホモか?(1)
その日を境に、二人の関係が急速に狭まったように感じた。
ただし、感じただけで何も変わっていないのが現実なのだ。
デートの日取りは実香が先に言わない限り、天馬から会いたいとは言ってこなかった。
そのことについて問いただしてみると、
「迷惑になったらいけないからね」
とくる。好きな人と会うことで、迷惑などあろうはずもないのだが、彼はそう考える変人のようだ。
また、デートを重ねても唇を重ねることがない。
手を合わせることすらないのだ。
今時の小学生だって、お手てつないでチューくらいするだろうと実香さんは思う。
結局、実香が積極的にでて手をつないだのだが、後日「本当は、ずっと手をつないで歩きたかった」と言われ、大笑いしたのだ。
「それなら、もっと早くに言ってくれたらいいのに」
「でもね、そんなこと言ったら嫌われるかなって思ったんだよ。ごめんね、積極的になれなくて」
実香はこの時も、(そういう人なんだな)と再認識したのだった。
そして、微妙な甘い雰囲気になった時も、雰囲気で終わってしまう、という世界七不思議。
(健全な男子なら、いい加減やりたいって思うじゃない!)
いつだったか、連に言われた「草食系男子」という言葉が浮かぶ。
(草食系男子って、結局なんなわけ?)
どうしても思い浮かぶのは、大学時代から先、二六歳までに付き合ってきた男たちだ。
どの男も積極的で、男であることをアピールするようにムードが高まったところで、そのチャンスを逃がしたりはしなかった。
また、そこまでムードがよくなれば、実香としても拒む要素は、よっぽどでない限りないのだが。
それなのに、どうしてなのか天馬は何も仕掛けてこないのだ。
「これって、どういうことだと思う?」
焼肉の鉄板を前に、実香は菜都芽に相談中だ。
「どういうって……カルビ頼もうよ」
焼肉をエサに誘ったのが実香ということで、今夜は実香のおごりなのだ。
「頼むのはいいけど、相談の回答は出してよね」
「大丈夫よ~。泥舟に乗ったつもりでいていいから」
「泥舟じゃ沈むじゃない!」
「すませーん、カルビ三人前!」
「あのねぇー」
毎度のことだが、おごりとなると容赦がない。
お互いさまなのだが。




