33.ひとり酒(1)
翌日になっても連絡はなく、さすがに今回は長すぎると、落ち込み気味の実香さんだ。
こちらから連絡したくても、電話は通じない、メールをしても返信が全くないのだ。
「どうしちゃったんだろうなぁ。バイトだとは思うけど……。
案外私、振られてたりして……あははぁ……」
時計は十時を回っている。
お風呂に入り、パジャマに着替えた状態で、実香は一人寂しくビールの缶を重ねていた。
早くも、目の前には二本の空き缶が潰されているのだ。
ケイタイを指で弾きながら、来るはずのないメールを待っている。
「今日も店に現れなかったしね。どこに行っちゃったんだろうね~」
横に置かれたチーズタラの袋から一本を取り出し、口に入れる。
いつもは、『ビールのお供はチーズタラ』と歌うところだが、今日の実香さんはそんな心境ではないようだ。
ケイタイを持ち上げ開く。
もちろん、何のメールも来ているはずはなく、分かってはいるものの、ため息が出る。
「あー、何でこんなに苦しいのー!」
どうやら、初めての経験らしい。
「分かんないよ。何で、こんなに胸が苦しいんだろう。彼を思うと胸が痛い」
ベッドに背をもたせ、顔を天井に向ける。
何度大きなため息を吐いても、胸のつかえは取れず、締め付けられるような痛みだけが残る。
今まで、どんなに好きな人ができても、これほどまでに胸が痛むことはなかった。
雑誌の恋愛コラムを読んだり、友達の経験談を聞いていると、胸が締め付けられるような痛みがあるという。
しかし、実香にそんな経験はなく、『なにそれ~、信じらんない』と言うのが感想だったのだ。
「まさかね。私が、こんなことになるなんて、この私がよ!」
とは言うものの、そんなに悪い感覚があるわけではない。
恋する胸の痛みが、どれほど苦しくても、彼を思う気持ちが幸せを感じさせてくれる。




