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3.大崎菜都芽(1)

 柿野実香と同じ大学を卒業した彼女は、すべての過去を洗い流すように、赤い髪を黒く染め、ミニスカートをリクルートスーツへと履き替えた。


 何社も面接を受けまくり、なんとか商社と名の付く現在の会社へもぐりこんだのだ。




「戦国時代といっても過言じゃないわね」





 大崎菜都芽。




 長い髪を後ろに束ね、薄化粧に小さなピアスをつけている。どこから見ても、普通のOLだ。


 着ている服も、落ち着きのある大人の女性を感じさせる。




「と言うことは、戦国時代を勝ち抜いて、今の会社に入ったと言いたいわけね」




 実香はテーブルに置かれたタバコに手を伸ばした。


 大崎菜都芽とは大学時代からの友達なのだ。


 学生時代は、実香同様散々遊んだ仲だ。


 毎晩のようにサークルの仲間や、バイト仲間、あらゆる友達と釣るんで騒ぎまわったのだ。


 そんな菜都芽が今では、どこから見ても働く女性で、実香は未だに根無し草だ。

 

 菜都芽と実香が会うと、必ず定職に付かない実香を見下したように菜都芽は笑い、就活時期を戦国時代だったと言うのだ。




「そうそう。そこ行くと実香はいいわよね。

今でもバイトでしょ~? 責任がなくていいよね」


「一応あるわよ。客のニーズに応えなくちゃね」




 とはいえ、毎日暇な時間を費やしているようなバイトなのだが。




「ニーズねぇ。いい加減、定職に付いたら?」




 馬鹿にしているのかと思えば、真剣に実香の目を見て話しかけてくる。


 そこいら辺は、やはり学生時代に同じバカ騒ぎをした仲間だ。




「定職ねぇ。考えなくも無いけど、どうせ結婚したら仕事も辞めちゃうだろうしね。それなら、バイトでもいいじゃない」


「良縁に恵まれたかったら、いい職場にいないと出会いは貧しいものになるわよ」


「そういう菜都芽は良縁に恵まれたの?」




 大学を卒業して二年になる。その間、菜都芽にもバラ色の恋する季節があった。


 入社してすぐの頃、男性社員の誰もが新入社員に視線を集中させた。


 ご他聞に漏れず、菜都芽にも多くの男性の視線が集中し、その中でも将来有望であろう男性との付き合いがスタートした。


 付き合いだして、1年が過ぎようとした頃、どうしたことか相手の態度が冷たくなり、わけも分からぬまま自然消滅したのだった。


 さすがに学生時代に遊んできた菜都芽ではあったが、大人の恋に陶酔していただけに、ショックは隠せなかった。





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