箱の中にいる。
目が覚めたら私は狭い箱の中にいた。
無機質な何かで出来た箱で、温度は冷たくも無く暖かくもない。
特に周りが発光しているというわけではないのだが、不思議と中は明るい。
そして目の前には二つの情報があった。張り紙とタイマーである。
張り紙には『選択を迫られる』とだけ書いてあり、タイマーはカウントダウンを始めていた。
理不尽なこの状況に焦りを感じるものの、こういう時こそ人は冷静でいなければならない。
私が持っている現在の情報は『箱の中にいる』という事と『選択を迫られる』という事だけだ。
それを踏まえたうえで、どうして『箱の中にいる』という状況に陥ったか考えるべきだろう。
どうしてこうなったかという原因や理由がわかれば、何か解決策が浮かぶかもしれない。
目が覚めたら箱の中にいた。
では、私は眠る前に何をしていただろうか。
……いったい何をしていたのだろうか、私は思い出す事ができない。
どうしても思い出す事ができない。
そもそも私は何者なのだろうか、わからないという恐怖がしだいに私を蝕んでいく。
次第に冷静さを失う私をあざ笑うようにタイマーのカウントは少なくなっていく。
ここはどこだ、出してくれ!
そんな私の思いに答えるように箱が開いた。
何が起きたのか私は検討もつかなかったが、私は箱から身を乗り出した。
やっと箱から出られたと思った私はだったが、驚いた事にどうやらまたしても箱の中にいるようだ。
目の前にはタイマーと張り紙。
張り紙の文字は同じように『選択を迫られる』とあった。
箱の中の様子はさして変わらないが、先程よりは少し暖かいだろうか?
そして、私は唐突に両親の事が頭に浮かんだ。
先程よりも数字は大きいものの、少しずつ減っていくタイマーに少なからず焦りを感じながら思う。
先程の私は何かを選択して箱から出られた。
今度はどんな選択をすれば箱から出られるのか。
そもそも、先程は何を選択したから出られたのだろうか。
そう考えた時、私は唐突に気がついてしまった。
私は『箱から出る』事を選択したのだ。
そして、既に出てしまっているのだ。
現在閉じ込められている箱から出られたら、また箱の中に私はいるのだろう。
少しだけ広くなった箱の中で、再び選択を迫られるのだ。
その時のタイマーの値はどれだけあるのだろうか。
次の箱の中は快適なのだろうか、明るいのだろうか、その保証は無い。
これから私は長い時間をかけて、何度も選択をしていくのだろう。
最初の選択で『箱から出る事』を選択した事を後悔する事もあるだろう。
場合によっては箱から出ずに閉じこもる事を選択するかもしれない。
そこが私の終わりだ。
そして最後の箱を出たところで、選択によっては出た先の世界は私の思っている物とは違う世界かもしれない。
世界と呼べるほど広い箱ではないのかもしれない。
どんなに広くても、世界と呼ぶ箱なのかもしれない。
どんな広さでも形でも環境でも、そこが私の終わりなのだ。
選択し続けた先に私は何を思うのだろうか。
私は箱の中で選択を迫られている。
私は今も箱の中で選択を迫られている。
無情にもカウントは進んでいく。
私は箱の中にいる。
最期まで箱の中にいる。
そしてまた知らない私が箱の中で選択を迫られるのだ。
箱の中にいる。
閉じ込められている。




