銀行員 【短編ハードボイルド】
オトコは、いつもの海峡の見渡せる駐車場にクルマを止めた
灰色の空に、灰色の街
疲れた身体をシートに深く預けた
オレの人生ってなんなんだ
叫びたい気分になる
取引先と決裂した交渉
会社に帰っての上司への報告
長男の進学問題
ルームミラーに映る、乱れた前髪と増えた白髪
不景気だが、年々増えるノルマ
雑音を伴うラジオからの歌謡曲
一本のつもりが二本になり、そして・・・・・
間欠ワイパーが霧雨を切った
遠くから霧笛が聞こえる
そろそろ帰社しなければ・・・・・
一筋の雨だれが、オトコの頬を濡らした・・・・・