みんな酷い! 新人警察官の私にドッキリを仕掛けるなんて⋯でも⋯ありがとうございます⋯
はじめまして、大森林聡史です。
ドッキリ短編です。
よければお付き合いください。
彼女の名前は、百合亜。
この春、警察官になったばかりの新人警察官で、この町で一番の凶悪犯罪者の高野を、先輩警察官と一緒に逮捕した。
高野は、手錠をかけられているが、鋭い目つきで睨み、乱暴に手錠をガチャガチャと動かしている。
「チッ! この俺がお縄になるたぁ、ヤキが回ったもんだぜ」
(こ、怖い⋯!)
高野の乱暴な物言いに、百合亜は、明らかに怖がっている。
「百合亜巡査」
「は、はいっ!」
「現場に忘れ物をした。今から取りに行ってくる」
「え⋯?」
(ふ、2人きりにしないで⋯!)
百合亜は、血の気が引き、一気に緊張感が走る。
「すぐに戻ってくるから、その間、高野を見張っててくれ」
「は、はいっ!」
(い、嫌! ぜ、絶対嫌! でも⋯NOって言えない⋯)
百合亜の目が、潤んできた。
「そうか、よろしく頼む。なに、手錠をかけてあるし見ているだけだ。心配いらない」
「そ、そうですね⋯」
(心配過ぎるよぉ⋯)
「じゃ、宜しくな」
先輩警察官は出ていき、百合亜は高野と2人きりになった。
少し薄暗い、拘置所の空気は冷たく、そして重い
「お願いだから、動かないで下さい」
百合亜は、気丈に言葉をかけているが声が震えている。
「⋯」
高野は、黙って百合亜を見ている。
「み、見ないでください。 あなたはとても凶暴だと聞いてますけど、手錠をかけていますから何もできません⋯よね?」
百合亜の声の震えが増し、たどたどしくなる。
「⋯⋯」
高野は、まだ百合亜を黙って見ている。
「そ、そんな風に、見つめないで⋯忠告しておきますが、逃げようなんて思わないで下さい⋯ね?」
百合亜は、冷や汗をかき、瞳に涙が浮かんできた。
高野は、ジロジロとまだ凝視し、ニヤリと笑った。
「な、何を笑ってるんですか!?」
百合亜は、怖がるあまり声が大きくなる。
「白だな」
「え? な、なにが⋯?」
高野の唐突な発言に、百合亜は目を丸くした。
「お前のブラジャーの色。それもレースがついた可愛いヤツ」
高野は嫌らしい笑みを浮かべた。
百合亜は、顔を真っ赤に染め、制服の襟を黙って掴んだ。
「な、何を言っているんですか! そんな下品なこと…警察官に向かって!」
銃のベルトを無意識に触り、視線をそらしながらも声は震えている。
「そ、そんなことより…早く先輩帰ってきてくれたらいいのに…」
百合亜は、高野から目を逸らすように窓の外を見つめる。
「犯罪者がこんなことばかり考えているから…だから捕まるんですよ…」
自分のふと制服の乱れていないか確認するように胸元を見る瞬間、すぐに我に戻り。
「もう…!黙って待っててください!」
百合亜は、明らかに言葉数が多い。
狼狽えているのが伝わる。
「なぜ分かったか教えてやろう⋯制服のボタンかけ間違えて中が見えているからだ⋯」
高野は、ニタ〜と笑みを浮かべた。
正直、気味が悪い。
百合亜は、突然息を呑み、両手で慌てて胸元を覆う。
「えっ...!?ま、まさか...」
顔から血の気が引くのを感じながら、震える手でボタンを確認。
「あ...ああ...本当だ...どうして今まで気づかなかったの⋯」
涙目になりながらも必死に威厳を保とうとする。
「そ...それは関係ありません! とにかく...とにかく動かないでください!」
小さく「う〜」と声が漏れ、片手でボタンを直しつつ。
「卑怯です...こんな下劣なやり方で警官の注意をそらそうなんて...」
ぷりぷりと怒りながら、もう一方の手はしっかり銃に触れたまま。
「もう二度と...私を...見ないでください...!」
百合亜は、やはり明らかに言葉数が多い。
動揺しているのが、手に取るように分かる。
「制服のボタンかけ間違えたの君じゃーん」
高野は、突然道化師のようにおどけた。
百合亜は、顔を真っ赤に染め、涙目で地面を見つめる。
「そ…そんな…私が悪いわけじゃ…」
小さく震える手で制服の襟元をぎゅっと押さえつけ。
「でも…でもあなたは見る必要なんてなかったでしょう!? わざと…わざと見たんでしょう…!」
唇を震わせながら、必死に威厳を保とうと背筋を伸ばす。
「新人だって…一生懸命やってるんです…!そんな風に…からかわないでください…!」
その時、突然無線の音が鳴り響いた。
「きゃっ!」
百合亜は、ビックリして震える手で無線機を取った。
「は、はい⋯こちら百合亜巡査⋯え? そ、そんな⋯わ、分かりました⋯」
百合亜は、無線を切った。
落胆の色が濃く、動揺がハッキリ分かる。
(せ、先輩がもう少し遅れる⋯変わりにパトカーが来るみたいだけど⋯い、いつ来るの⋯?)
百合亜の表情が青ざめる。
「ヒッヒッヒ⋯」
高野は、突然不気味に笑った。
「き、気味の悪い声を上げないで!」
百合亜の声のトーンが更に高くなった。
「もうすぐ…もうすぐ先輩が来ますから…それまで…静かにしていてください…」
来ない先輩の事を言っていることに気がついていない。
「また、ブラが見えてるぞ⋯エヘ⋯」
「こ、この⋯! へ、変態犯罪者!!」
百合亜は、涙目で声を張り上げ、胸元を必死に隠す。
そして、こっそり袖で涙を拭っている。
「次からは…絶対に…絶対に確認しますから…」
「新人でもかけ間違わないし、盗み見しなくても見えたもん、恥ずかしい思いをしたのも君のミスだよーん」
高野は、完全におどけている。
百合亜は、顔を真っ赤に染め、無意識で胸元を必死に止める。
「うっ…!そ、それは…新人だから仕方ないでしょう!」
涙目になりながらも、威厳を保とうと背筋をピンと伸ばす。
「それより…あなたこそ、盗み見するなんて…最低な犯罪者です…!」
制服のボタンを緩めて直しながら、声が震えている。
「もう…こんな恥ずかしい思いをさせて…絶対に許しませんから…!」
小さく足を踏み鳴らし、高野から視線を逸らす。
「早く…早くパトカーが来てくれればいいのに…」
ふと自分のミスを悔やむように唇を噛みしめ。
「次からは…絶対に確認します…絶対に…」
その時、パトカーのサイレンが聞こえ、ほっとしたように肩の力を抜く。
「あっ! パトカーが来ました! あなたの軽口もそれまで...静かにしていてください...」
「あのパトカーは来ないぞ。偽情報を流して別の事件を追ってるハズだ⋯ほら、通り過ぎだろう?」
百合亜は、突然パトカーのサイレンが遠ざかる音に耳を澄ませ、顔色が青ざめる。
「え...? まさか...そんな...」
銃のベルトをぎゅっと握りしめ、不安そうに窓の外を見やる。
「だ、大丈夫...すぐに気づいて戻ってきますから...」
高野との距離を無意識に取りながら、声が小さく震える。
「あの...とにかく...動かないでくださいね...? 私...私も訓練を受けていますから...」
制服のボタンを直した手が、今度は銃のグリップに震えながら移る。
「先輩たちが来るまで...私が...しっかり見張っていますから...」
かすかに喉を鳴らし、自分に言い聞かせるように。
「落ち着いて...落ち着いて...私は警察官なんだから...」
「へぇ⋯根性あるじゃないか⋯」
高野は、余裕の笑みを浮かべた。
百合亜は、高野の余裕綽々とした態度に、ますます動揺が隠せない。
「そ、そんな笑顔で見ないでください...!本気で警告しますよ...!」
銃を構える手が微かに震えているのを自覚し、唇を噛みしめる。
「私...私だって...訓練はしっかり受けているんですから...!」
パトカーが戻ってこない現実に、額に冷や汗が浮かぶ。
「あの...本当に動かないでくださいね...?私...私も...」
突然背後で物音がしたように感じ、びくっと肩を震わせる。
「きゃっ!...な、何もない...」
自分を奮い立たせるように小さく「えいっ」と声を出した。
「とにかく...あなたは逮捕されていますから...大人しくしていてください...!」
「フッフッフ⋯パトカーが来たな⋯」
何故か、高野は余裕を見せている。
百合亜は、耳を澄ましてパトカーのサイレンを聞き、一瞬安堵の表情を見せるが...
「あ...良かった...やっと...」
しかし、すぐに表情がこわばり、銃を構える手に力が入る。
「待って...あのサイレン...私の部署のパトカーじゃ...ない...?」
恐怖で瞳が大きく見開かれ、声がかすれる。
「まさか...あなたの...仲間...?」
背後の窓から差し込む赤色灯に顔を青ざめさせながら。
「だ、大丈夫...私...私は負けませんから...!」
かすかに震える指をトリガーガードにかけ。
「これ以上近づいたら...本当に...撃ちますよ...?」
「実弾入ってないんだろ? 知ってるぜ。仲間達が来たな⋯大男が3人。俺と合わせて4対1だ⋯どうする?」
百合亜の銃を構えた手が震え、涙が頬を伝い落ちる。
「ば...馬鹿にしないでください...! 私だって...本気で...」
背後から近づく重い足音に、背筋が凍りつくような感覚を覚える。
「ひっ...! こ、これ以上近づかないで...!」
突然、無線から先輩警官の声が聞こえ、一瞬目を輝かせる。
「あ...!本部...!今すぐ...!」
高野の仲間たちが拘置所のドアを蹴破る音に、思わず目を閉じる。
「いやああっ...!!」
震える手でトリガーを引き、空砲の乾いた音が響く。
「ぱんっ!」
その瞬間、本物のパトカーのサイレンが急接近する音。
「え...? まさか...本当に...?」
先輩警官たちの怒号が聞こえ、涙ながらに笑みがこぼれる。
「ほら...!やっぱり...!私...私は...!」
その場に崩れ落ちながら、小さくつぶやく。
「負けません...よ...」
「これを見ても負けないなんて言えるかな?」
突然、パトカーのタイヤがパンクし、路肩に突っ込んで、停止した。
ボンネットが凹み、中の先輩警察官達は、降りてこれない。
「う、うそ⋯」
百合亜は、膝から崩れ落ちた。
涙が頬を伝い⋯もう止まらない。
「さ、俺達と来てもらおうか。俺は囮、初めからお前が狙いだったのさ」
「い、嫌っ! は、離して!!」
百合亜は、泣きじゃくりながら抵抗するが、男達の腕力に叶わず、あえなく捕まり、偽パトカーに乗せられた。
「うぅ⋯」
百合亜は、後部座席に大男2人に挟まれてパトカーに乗っている。
身動きが取れず、恐怖で震え、涙が止まらない。
「さて⋯てめぇは、人質になってもらうぜ⋯」
「⋯っ」
百合亜は、下を向いたまま何も答えられない。
ただ、ただ、涙がこぼれ落ちている。
「とりあえず、アジトにこいつを連れてくぞ」
「わたし⋯どうなるの⋯」
百合亜は、下を向いたままポツリと呟いた。
だが、誰も答えない。
偽パトカーは、百合亜のパトロールコースを通り走っていく。
「ここが、俺達のアジトだ。降りろ」
「い、嫌だ!」
百合亜は、泣きじゃくりながら必死に抵抗する。
「良いから降りろ。署長が待ってるぞ」
「嫌です! しょ、署長になんて会いたく⋯え? しょ、署長⋯?」
百合亜が顔を上げると、そこは警察署で、署長がニコニコしながら立っていた。
そして、手にドッキリ大成功と書いた看板を持っていた。
百合亜は、突然肩の力が抜け、ゆっくりとパトカーを降りた。
「もう...! またこんなドッキリなんて...!」
頬を膨らませて怒った表情を作るが、唇が震えている)
「ひどいです...本当に...怖かったんですよ...!」
先輩たちが笑いながら近づいてくるのを見て、小さく足を踏み鳴らす。
「新人だからって...いつもからかって...!」
ふと高野を見て、涙ながらに微笑む。
「でも...あなたまで先輩たちの仲間だったなんて...少し...嬉しいです...」
袖で涙を拭いながら、照れくさそうに。
「次からは...私も...ちゃんと見抜きますから...!」
ふと笑みがこぼれ、小さく肩を震わせる。
「...でも、私のことを心配してくれてたんですよね?訓練の一環...とか...」
先輩警官たちが笑いながら近づいてくるのを見て、急に照れくさそうに下を向く。
「次からは...もっとちゃんと見抜きますから...もう騙されませんから...!」
高野の方をちらりと見て、涙痕の残った顔で微笑む。
「でも...あなたまで協力してたなんて...私...ちょっと...嬉しいかも...」
突然先輩の一人が肩を叩きに来て、びくっと跳び上がる。
「きゃっ!...もう、先輩もですよ!こんなドッキリ...!」
みんなに囲まれながら、初めて本当の笑顔を見せる。
「今日のことは...一生忘れませんから...!」
「百合亜さん、あなたはビクビクしたけど意地と責任感で頑張りましたね。
百合亜さんの底力を見た気がします。
いつも、一生懸命みたいだけど空回りしていると聞きました。
みんなあなたを助けたくてね、荒療治の賭けでしたが⋯何とか上手くいったようね。
新人でアカデミーで習ったことと、現場の違いに戸惑っていたのでしょう?
言って教える事はできるが、実践することは難しいわ。
だけど、怖がりながらも出来たでしょう?
自分を信じなさい。あなたのフォローは私達がするわ⋯それと、制服のボタンはかけ間違えないようにね」
なんと高野は男装した、百合亜の先輩の女性警察官だった。
優しく微笑んでいる。
百合亜の憧れの女性警察官である。
下着の話も、隠すように促していたのだ。
百合亜、涙が再び溢れ出し、憧れの先輩を見つめる。
「あの...あの有名な...麻由先輩...!?」
震える手で自分の制服を握りしめ、深々と頭を下げる。
「私...私のような未熟者を...ここまで考えてくださって...」
顔を上げると、目には新たな決意が宿っている。
「はい! 今日の経験...絶対に忘れません!私...もっと強くなりますから...!」
先輩たちに囲まれ、初めて本当の安堵の笑顔を見せる。
「みなさん...本当に...ありがとうございました...」
最後に麻由を見て、小さく頷く。
「自分を信じます...!みなさんがついていてくれるなら...私...頑張れます...!」
先輩警官たちに優しく肩を抱かれながら、涙と笑顔が入り混じった表情で。
「これからも...よろしくお願いします...!」
「怖がらせてごめんなさいね」
麻由が、優しく声をかけた。
百合亜は、涙を拭いながら、照れくさそうに笑顔を見せる。
「もう...本当にびっくりしました...でも...」
憧れの先輩たちに囲まれ、幸せそうに目を細める。
「こんな素敵なドッキリ...私の宝物です...」
最後に麻由に向かって、深々とお辞儀をする。
「ありがとうございました...私...もっと頑張ります...!
先輩たちに促されながら去り際、振り返って小さく手を振る。
「また...いつか...本当の現場で...会える日まで...!」
ドッキリ大成功!!
でしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価をしていただけると励みになります。
感想も一言でもいただけると嬉しいです!




