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自分では凡人のつもりなのに、なぜか世界の最終兵器扱いされています ~何もしない俺が、なぜか世界を安定させてしまう件〜  作者: 藍田ピクセル


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第21話 責任の行方

 会議は、静かに始まった。


 怒号はない。

 机を叩く者もいない。

 だが、その分だけ空気は重い。


 ギルド長、王国文官、技術士官、警備責任者。

 全員が揃っている。


 俺は、壁際に立っていた。


 座るように言われなかったわけじゃない。

 ただ、座る気になれなかった。


「まず確認する」

 ギルド長が口を開く。

「今回の件で、規定違反はない」


 誰も反論しない。


「判断は教本通り」

「工程も問題なし」

「安全率も基準内」


 淡々と事実が並べられる。


「では」

 文官が続ける。

「なぜ被害が出たのか」


 沈黙。


 技術士官が、重い口を開いた。

「……想定が、甘かった」


「どの想定だ」

「“通常時”の想定です」


 通常。


 その言葉が、場に落ちる。


「我々は」

 警備責任者が言う。

「“通常”であれば、今回の配置は安全だと判断した」


 それも、正しい。


「だが」

 文官が言葉を継ぐ。

「直近の実績は、“通常”を上回っていた」


 全員の視線が、無意識にこちらへ向く。


 俺は、視線を逸らした。


「……アルトの存在を考慮した判断だった」

 誰かが、そう呟いた。


 ギルド長が、即座に否定する。

「違う。彼を“前提”にしてはいけないと、決めたはずだ」


「しかし」

 技術士官が続ける。

「実際の運用では、そうなっていなかった」


 また、沈黙。


 文官が、ゆっくりと息を吐いた。

「結論を言う」


 全員が、そちらを見る。


「今回の被害に、個人の責任はない」

「判断ミスでも、怠慢でもない」


 それは、救いの言葉だった。


 同時に、最悪の宣告でもある。


「問題は」

 文官は、はっきり言った。

「構造だ」


 構造。


「アルトがいる場合」

「いない場合」


 二つの基準が、現場で混線している。


「どちらも正しい」

「だが、同時には成立しない」


 その言葉で、全員が理解した。


 俺がいれば、現場は安定する。

 だが、その安定を前提にすると、

 いない場合に歪みが出る。


 逆も同じだ。


「……どうすればいい」

 誰かが、絞り出すように言った。


 文官は、答えなかった。


 代わりに、俺が口を開いた。


「……俺が、距離を取ります」


 全員が、こちらを見る。


「現場に行かない日を、増やします」

「常に、いる前提にならないように」


 それは、逃げではない。

 自分なりの、責任の取り方だった。


「却下だ」

 即答だった。


 ギルド長だ。


「それでは、今日と同じことが起きる」

「責任を、君一人に押し付ける形になる」


 押し付けるつもりはなかった。

 だが、結果はそうなる。


「なら……」

 言葉に詰まる。


 文官が、静かに言った。

「第三者が必要だ」


「第三者?」

「現場にも、ギルドにも、依存しない視点」


 その言葉に、ギルド長が目を細める。

「……監察か」


「ええ」

 文官は頷いた。

「この構造は、内部では修正できない」


 俺は、その会話を聞きながら思った。


 ついに、

 俺個人の問題ではなくなった。


 “アルトがいると安定する”

 その事実が、

 世界の運用そのものを壊し始めている。


 会議は、それ以上進まなかった。


 決断は、先送りされた。


 だが一つだけ、はっきりしたことがある。


 もう、誰も言えなくなった。


 ――「アルトのせいだ」とも、

 ――「アルトがいなければ」とも。


 責任は、行き場を失った。


 そしてそれは、

 必ず“誰かの判断”を必要とする。


 その夜、王都では、

 王国監察部への正式な要請文が作成された。


 件名は、短い。


 ――特殊事案に関する構造監査の要請。


 俺はまだ知らない。


 その要請が、

 この物語の流れを、

 決定的に変える人物を呼び寄せることを。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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