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【9】
それからというもの、いつもの日々が戻ってきた。
「ほら、動け、デブ」
「うるさいわね、ちゃんと歩いているでしょ?」
空気が少し涼やかになり、歩くのも苦でなくなってきたが、汗をかかないと痩せないのだ。凛は一生懸命全身を動かしながら、歩いていく。
ーやっぱり…何もないのが一番ね。
雅巳が言った通り、ダイエットが成功しつつあるようで、体重が減っていた。聖也も喜んで見ているだろうと思う。
ーそういえば、甘味処が…。
ありがたいことにボヤ騒動で、甘味処に客が戻ってきたようだ。喜ばしいことである。
「歩くの早いってば」
「これくらいはついていかないと痩せないぞ」
「分かりました。歩きます」
えっほえっほとかけ声をかけ、歩いていく。雅巳と2人の時間が大事になってきた。
ーそれって。
首を横に振る。それだけは今、考えてはいけないことだった。
「今日はどこまで行くの?」
「あそこまで」
雅巳に指さされ、凛は顔を叩く。しっかりしろと自分に気合を入れたのだった。
「よし、行くぞ」
「うん」
2人を祝福するように、日光がさんさんと降り注いでいたのだった。