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【5】
夕食の後、凛は思い切って葉清に言う。
「はあ? 婚約者? しかも周家の」
「…うん」
室内には凛と清しか居なかった。皆、忙しいようで、自室に戻ったのだった。
「すげえ話」
「でしょ? 私もそう思う」
「でも、断ったんだろう?」
「うん。はっきりと」
「そうか…、周家か」
清は顎に手を当て、それから手を打つ。
「そういえば、最近、流行りの茶館はどうだった?」
「立派だったわよ。小物まで目を通しているみたいに」
「そうか。一度は行ってみたいな」
憧れているのか、清がほうと息を吐く。麗を見たら、余計に恋心をわかせそうだと思い、詳しく説明するのは止める。
「とにかく、何かお兄ちゃん、聞かない?」
「周家のか? 特に聞かないけどな」
もう清の意識は茶館にあるらしく、これは駄目だと首を振る。男どもはどうして美女に弱いんだとため息を出す。
ーその点、雅巳さんは普通だったわね。
見慣れているのか、普通だったのを思い出す。とりあえず、混乱しそうな頭を振り、天井を見上げだのだった。