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【4】
帰り道、凛は足元に伸びた影を見ながら、ため息を吐く。
ー綺麗な人だった…。
悔しいけれど、見かけにおされてしまった。油断したのがいけなかったのかと反省する。石ころ蹴飛ばした後、
「ねえ、断ってよかったの?」
ようやく出た声はかすれていた。雅巳は髪を風になびかせながら、言ってくる。
「はあ? お前に関係ないだろう?」
「それは、そうだけど…!!」
「いいから黙ってろ」
不機嫌なのか口がへの字に曲がっていた。凛は唇を噛み締め、黙り込む。でも、どこかでほっとしていた。
ー何を安心しているのよ、私のバカ。
目の前にきたトンボを手ではね、歩き出したのだった。