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88:雰囲気を変えるパフォーマンス

「あんなの見せられたら今日は商売にならねぇぜ。今日はもうやめておこうかな」


 近くで焼いた肉を売っている店主は、嘆くように言う。周りもそうだろうな。

 なんて思いつつ、私も、パフォーマンスをしようかどうか悩む。

 なんたって、処刑が終わった直後だもん。広場の空気は最悪だ。何とかしたいと思っているけど、この空気を跳ね返せるかどうかはわからない。

 やってみて、どうなるかってところだけど、こんな空気で子供向けの曲で遊べないよ。

 それか、一度だけやったことがあるけど、優雅なクラシックの曲を使って、舞踏会のような空気に変えて見せる?

 そんなことができたら、こんなところで踊ってないし、それを生業にしている。

 とりあえず、この空気をどうにかしたい。居心地が悪すぎる。

 ……やるだけやってみるか。それで空気が変わらなければ、そこでやめたらいい。

 曲は、ウォーミングアップのときに使うワルツの曲でいいだろう。

 この世界で舞踏会とかワルツとかあるかは全く知らないけど、一般市民にはそう浸透していないだろう。そもそも、私が知っている音楽が浸透していないから、クラシックとかも浸透していないと思うんだろうけど、でも、珍しい音楽で注目を集めたらいい。

 そんなことを思いつつ、自分の座っているベンチの近くでごそごそと動き始める。

 ただ、あれだな。私服で踊るのは難しいな。それなら、少し離れて水の壁を作ってその中で着替える?一応、衣装は持ってきているのよね。

 一度試してみるか。それで透けるようだったら炎魔法を使って壁を作ろう。


「ウォーターウォール」


 私を取り囲むように水の壁が出来上がる。ただ、ほぼ透けているな。これ、もっと色を付けようと思ったらイメージをするだけで行けるのかな。とりあえず、やってみよう。

 そう思い、コーヒーみたいな色を想像しパッと正面を見る。

 うぉっ。真っ黒。絵の具の黒を入れたみたいな色になった。

 これなら、周りからも見えないし、着替えるスペースは十分に確保できている。

 多少、周りは驚いているだろうけど、そこは無視してかまわないだろう。そうじゃないと、私のプライバシーが保たれないし、レディーとしての尊厳をすべて失ってしまう。それだけは避けないといけないからそうしている。

 まぁ、いきなり魔法を使っているんだから、いろいろ驚かれるだろうな。なんて思いながら、自分が着ていた衣服を脱ぎ、衣装のワンピースドレスをできるだけ早く着る。

 魔法を使った状態でゆっくりと着替えるわけにはさすがにいかないからね。


 たぶん、2分とかかっていないと思う。着るだけ着れば、あとのアクセサリーはゆっくり付けたらいいだけだし。

 魔法を解くと、不思議そうな目で私を見る人がちらほらといる。まぁ、無理もないし、わかりきっていたこと。今さら隠そうなんてことはない。

 ネックレスと髪飾りをつけ、木札を立てる。もちろん、木札の裏にスピッカを隠し、魔力を通し、通電。ポケットにはスマホが入っていて、もちろん、スピッカとつながり、音が鳴る状態になっている。

 そして、なにも自己紹介もしないまま音楽を流す。曲については〈パッヘルベルのカノン〉を少し短くしたヴァージョン。

 出だしこそ、少しおとなしい感じで始まるけど、その空気は前半で優雅な空気を変えられると思い、この曲を選んだ。

 出だしから少し暗めにスローペースで進み、途中でホップするように明るくなる。その明暗の差を身体で表現する。

 優雅に踊る私の姿に見惚れているのか、足を止める人がちらほら。広場の空気も少しずつ変わっているのを感じる。

 もう少しでフィニッシュだけど、なんとか空気が変わってよかった。まだ処刑台は解体されずそのままになっているけど、風景の一部となりつつある気もする。

 このまま空気を全部私のものに変えてしまいたいな。なんて思いつつ、さらに曲が盛り上がりを見せるところで、急遽だけど、水の壁を利用して30センチほど登り、私をさらに大きく魅せる。

 これだけ広場の空気が変わったなら、水のプリンセスを召喚して、一緒に踊ってもよかったな。と思いつつ、曲が終わるのに合わせて、踏み台も徐々に消していき、私も身体を丸めて小さくなる。


「改めまして、みなさん、こんにちは!芸者のミネコと言います。少し暗い雰囲気で始めさせてもらいましたけど、そんな空気は一蹴できたんじゃないかなと思っています。ここからはしばらく私に見惚れてもらいます。時間が経つことを忘れる魔法にかかってください」


 ここでオリジナル曲の〈Maskenball(ドイツ語:仮面舞踏会)〉を挟む。

 ワルツ調のポップスになっていて、先に踊った〈パッヘルベルのカノン〉の続きのように感じることができて、そこから先、ポップスに移すことができる。そうなれば、ほかの曲にもMCなしで移ることができるから、ありがたい曲のひとつでもある。


 曲が進むにつれ、魔法がかかり続けているかのように私への視線が集まり、ちょっとした高揚感を覚えて、少し楽しくなってくる。こういうところがアイドルをしていて一番気持ちのいいところよね。なんて思いつつ、しっかりと歌い踊り続け、優雅なパフォーマンスを見せ続ける。

 さらに優雅に見せているのは、このワンピースドレスのおかげだろう。普段の私服で踊っていても、優雅さは見せられないだろうし、ほかのカラフルな衣装でも、これほど優雅さは見せられないだろう。

 白いドレスがあってよかった。

 と、そんなところで、曲は徐々に終わりを迎え、ラストの見どころとは言わないけど、何回も連続でターンをしていく。

 ただ、少しばかり足場が悪いね。いつもなら、硬い床でターンもスムーズなんだけど、広場の地面は柔らかく、その場でターンをすると、足元が掘れてしまうほど。それでもターンをしないと、優雅に見せられないから、少し頑張って足元を削りながらターンを繰り返す。


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