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87:公開処刑

 次は次で厄介なんだよな。

 ただ、私のお腹と、陽の上り具合で、ちょうどお昼時だということを知って、空腹を黙らせるためにテールちゃんのおばさんから押し付けられた5色パンを食べることにする。

 せっかくだし、そのまま食べてみるか。

 カボチャのスープなんて用意していたら、口の中全部がカボチャの味になりそうだし。

 そんなことを思いながら、パンをちぎって食べていく。


 ……あぁ、なるほどね。モモのジャムにイチジク、栗とりんごかなそれとシンプルなパンの味で5色というわけね。

 こりゃたしかにひとつずつ買うよりは断然お得にはなるだろうし、子どもは喜ぶと思う。一度に何種類もの味を楽しめるなら、それはそれでいいだろう。ただ、少し大きいっていうのがあれかな。まぁ、仕方ないんだろうけど。

 それに、これなら、季節に合わせてフルーツのペーストやジャムを変えてもいいかもしれないね。なんて思いながら、広場に向かうことにする。

 ただ、広場に近づくにつれて、いつもの広場の雰囲気とは違うことを感じ取る。

 なんというか、いつものゆったりとした雰囲気ではなく、少し堅苦しい感じ。

 理由は一瞬で分かった。

 夜遅くに処刑場を組み立てたのか、近衛兵が処刑場を中心に何人もいるせいだろう。

 普段いるはずのない人間がここに集まって異様な雰囲気を放っていれば、そりゃ、緊張も走る。

 あまり空気がよくない中で私がいつまでもいる意味はない。

 ただ、緊張している空気だし、刑罰が終わったところで空気は緊張したままだろうな。

 それなら、私が一肌脱いで、緊張した空気を振り払ってもいいかな。なんて思いながら、スマホで曲を選んでいく。

 使うとするなら、空気が和む子供向けの曲かな。それか、バラード系か。

 ……そうか。そうしよう。前半は子供向けにして、後半をバラードにして、刑罰なんかなかったと思わせることができれば、完璧だな。

 刑の時間は刻一刻と近づいているようで、徐々に近衛兵たちがソワソワしだすのを感じる。

 そう思っていると、東の方からほら貝を吹いていると思う音が近づいてくる。

 その音を合図にしているのか、近衛兵たちが処刑場の前か後ろかわからないけど、一列にビシッと並び、音が近づいてくるのを待っている。

 こうやって見ていると、かなり厳正に執り行われるものなんだ。なんて思考回路が簡易的になる。

 そして、音の正体が姿を現す。

 トップにほら貝を持っている人とそのすぐ後ろに近衛兵が4人。そして、この前の泥棒家族を挟むようにして後ろに近衛兵4人、いずれも無表情でゆっくりと歩いてきていた。

 目隠しはされていないものの、身体の後ろで手を結ばれ、簡単には逃げ出すことはできなさそう。

 集団は、処刑台のすぐ横まで来ると、ほら貝を持った人とその他の集団は別れ、ほら貝を持った人は、処刑台の前に、その他の集団は、ゆっくりと処刑台に登り、やがて、先導の4人が先に降り、残りの4人は磔の状態にされ、どこの隠せない哀れな姿に。……あっ、ちゃんと布は纏っているからね。

 そして、ほら貝を拭いていた人が自分の横にある台にほら貝を置くと、懐から紙を取りだし、広げてそこに書いてあるであろうことを読み上げる。


「主文、ローラン・ドゥとその一家は鞭打ち50回の刑に処す。刑を執行する理由については、3日前の夕刻、西方のとある屋敷で盗みを働いたことによる。それでは、始め!」


 ほら貝を拭いていた男の声で鋭く体に叩きつけられる音、声にならない声が漏れ、すぐに赤くなる鞭跡。稀にわざと間を開けて焦らしたりして、さらに恐怖感を煽る。

 こうやって見せつけることによって、防犯に繋げているのだろうか。なんて思ってしまった。

 しかも、たちの悪いことと言えば、わざと連続で鞭打ったり、時間を空けたり。なんというか、少しばかり、恐怖政治を敷いているのかと思わせるほど。

 こんな町、さっさと抜け出したほうがいいんじゃないか。なんて思う。


 そこからだいたい1時間ほど広場に激しい鞭打ちの音と悲鳴に似た叫び声が響き渡り、さすがに長時間も目を合わせることはできず、途中からは別の場所に移動した。

 こういう公開処刑もいろいろ考えるところがあるな。とりあえず私はこうならないように生きていこう。そう思った時でもあった。

 公開処刑をしている姿が視界に入らないようにして、時間をつぶした後、ゆっくりとした足取りで広場に戻る。

 ……どうやら終わったみたいね。

 儀式のようにほら貝が先導を取り、近衛兵4人、鞭を打たれ真っ赤に腫れあがった身体を引きずるように家族4人、後ろから逃げ出さないように見張る近衛兵が4人。練り歩くようにして東の方へと歩いていった。


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