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86:動力交換

「それだけここが気に入っているなら、私から無理に提案することはないね。ミネコさんの稼ぎならもっといいところに住めると思ったけど、そういった願望もなさそうだしね。それじゃあ、ルーイが持ち出してきた魔石をはめ込んで、ミネコさんに買い取ってもらいましょうか」

「そうですね。最近は、ミドルウルフの魔石の価格も落ち着いてきて、少し前まで、1つ金貨5枚が普通だったんですけど、今は2枚にまで落ち着いています。たぶん、南の森でよく討伐して持ってこられるのが理由のひとつなんじゃないかなと思うんですが」

「そうね。少し前まで、1か月で30匹の取引があればいい方だったのに、この1か月で200匹くらい取引があるものね」

「ミドルウルフも狂暴ですので、価格が落ちても、自分の身を守るために討伐しないといけないけど、取引価格が落ちてきていると、モチベーションも下がりますよね」

「たしか、ギルドでも、今以上に落ちないように取引価格は最下限を決めていたよな?」

「はい。冒険者に不利にならないように、そして、物価の乱高下を抑えるためですね。ミドルウルフやレッドウルフに関しては、これ以上取引価格が下がらないようになっています」

「昔は、レッドウルフが獲れたら大騒ぎだったのにな。1体で金貨20枚もの値がついていたのに、今は10枚だろ?冒険者が少しかわいそうに見えるよ」


 10枚ってことは、私がもらっていた枚数と一緒。ということは、私、最安値で取引していたんだ。

 数が多かったから、そんなことは思わなかったけど、こうやって話を聞くと、少し損をした気にもなるな……。まぁ、気にしないでおこう。

 とりあえず、金貨を取ってくるか。私の財布代わりのアイテム袋には、金貨が1枚も入っていない。銀貨なら8枚ほど入っているけど。


「お金を取ってくるんで少しかけてまってもらっていいですか?あと、商売道具とかもあるんで、勝手にさらわないようにだけお願いします」


 そう言っておかないと、変に触られると困るものだってある。とくに、鏡の隅に置いてあるアイテム袋なんかそうだ。スマホとスピッカが入っているから、これを取られちゃ、私だって芸者として活動ができなくなる。

 先にくぎを刺してから、私は寝室に向かい、クローゼットの中に入っている金庫代わりのアイテム袋から金貨を2枚取り出し、またリビングに戻っていく。

 リビングに戻ると、2人は、物珍しそうに私の家を舐めるように見ていた。


「どうかされました?」

「あっ、いや。なんでもないよ。ただ、魔力の通り道がすごいなぁと思ってね」

「そんなのわかるんですか?」

「感じる程度だけどね。でも、強く跡が残っているって言った感じかな。誰かが何かをしているような感じ。特にね、庭から強く感じるのよね。ミネコさんに引き渡す前まではそんなことなかったんだけど」


 ということは、隠していても気づく人は気づくということね。無理に隠し通さないほうがいいか。まぁ、言われたら、言われた範囲で話せばいいや。


「私も一応、魔力を使って仕事をしてますし、魔力を使って練習はしていますよ。私のやりたいことは、まだまだできてませんけど」


 えへへ。と少し笑って返すと、カトレアさんもルーイさんも納得した表情を浮かべた。

 そして、私は、話を逸らすかのように、金貨をテーブルの上に置いて、ルーイさんに魔石の交換の仕方を教えてもらう。

 といっても、入り口のドア近くにあるスイッチで回路を遮断してから魔石に魔力を流し込みヒビを入れる。

 ヒビを入れたなら、取り付け具からそっと外して付け替えて、ヒビを入れた魔石に関しては、ギルドに持っていって処分という形になるみたい。


 ミドルウルフの魔石をはめ込むと、さっきより何倍にも部屋が明るくなった。これで、薄暗い中、夜を過ごさなくて済む。

 一部の電灯にしかつけられていないらしいんだけど、ミドルウルフの魔石を電灯として使っていると、玄関にあるスイッチで明るさと電灯の色を調整することもできるみたい。それがここにたまたまあったという。

 それはそれで面白そうなんて思いながら、興味本位で来た人をこれで脅かせることができるな。と思ったよね。

 あと、ヒビを入れた魔石だけど、個人で処分しようとするなら、それなりの資格がいるみたいで、むやみに魔石を地中に埋めたりして処分しようとすると、そこから土の養分や魔力を吸い取り、魔獣が生まれるみたい。

 街でそんなことをすれば、たとえミニチュアウルフの魔石だとしても、いろいろ厄介だという話を聞いた。

 再利用できるのかも聞いてみたけど、それこそ、もっと高度な魔法技がいるみたいで、そんなことをして失敗したらリスクが高すぎると、どこの国の誰もやらないみたい。それに持っていたところでただのゴミらしい。

 まぁ、基本的にミニチュアウルフの魔石のひとつでも電灯としては20年近く使えるし、ほかの用途としても、少なくとも10年は使えるみたいだから、たまに、変え方も知らない人が生まれるとかなんとか。そのときは、ギルドから住民サービスとして出向くこともあるみたい。

 元いた世界よりもサービスは手厚いということはよくわかった。


「それじゃあ、この魔石は私がギルドに持って帰って処分しておきますね」


 ルーイさんはそういうと、ヒビを入れた魔石を赤い布でくるみ、きつく縛った後、自身のアイテム袋の中にいれた。


「話はこれだけかな。ほかに何かあれば帰る前に行ってくれたら対応は考えるし、何もないんだったら我々はギルドに戻るが……」


 えっと、私からも聞いておかなきゃいけないことってあったっけ?……いや。なにもない。もしあれば、またギルドに行けばいいだけだ。


「その顔は大丈夫そうだな。またなにかあれば、すぐに読んでくれて構わないからな。それじゃあ、お邪魔しました」


 そう言って玄関を出ていく2人を見送り、私は次なる場所へ向かう準備をする。


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