85:内見調査
「おぉ?意外と明るいね。あっ、この鏡のおかげか。ちょうど太陽の光を反射して、白い壁をさらに輝かせているのか。でも、この明るさに目が慣れてしまえば、たしかに夜は暗く感じるだろうね。どうしようか。一応、やり方は2つあって、今の電灯を外して、電灯を増設するか、この電灯はミニチュアウルフの魔石を使っているけど、それをミドルウルフに変えるか。明るさは、断然、ミドルウルフのほうが明るくなるけど、その分、魔石を手に入れる費用が掛かる。ただ、今は、冒険者ギルドに言えば、安く売ってもらえるかな。ここ最近、ミドルウルフやレッドウルフがたくさん入荷しているから、高級品の値が落ちてきていると聞いているし。あと、増設工事は、おそらく、作業できるのが2日後、作業終了が4日後になるだろうな。最近は、電設技術者がほかの町へ駆り出されたりしているから、技術者が足りていないんだよな。ほかの街で宿の建設ラッシュがあって、その関係なんだが。まぁ、冒険者ギルドでミドルウルフの魔石の値を聞いてみないと何とも言えないけど、ミドルウルフの魔石にした方がいいんじゃないかなって思うかな。個人的には」
いろいろと早口だったけど、一応、頭の中では理解できている。理解できないほど軟な頭じゃない。まぁ、ここは、すぐにことが終わるミドルウルフの魔石に取り換えることの一択になるかな。
私だって、今日はいろいろ予定があるわけだし、何日も知らない人が家に入り浸るのは、気が引けるし、元の世界で一度だけ起きたことを考えれば、あまり知らない人を入れたくない。
そうなったら、なんでキルシュちゃんたちを入れたんだ。って話になってくるだろうけど、あれに関しては、私が止める隙もなかったし、いろいろいたずらをしちゃったから、そのまま帰るのも気が引けただけ。それに、私がいたずらを仕掛けられるほど信頼している証拠だし。それだけじゃあまり説得力はないだろうけど。
とりあえず、私の今回の工事は、電灯の増設というよりも、魔石の交換って感じかな。
「私も魔石を交換するほうがいいかなって思ってきましたね。仕事場でもあり、自分の家なんで、あまり人を入れたくないっていうのもありますし。それに、何日も工事されちゃ、仕事なんてできたものじゃないですし」
「それもそうね。それじゃあ、冒険者ギルドに行って、ミドルウルフの魔石を買いに行きましょうか。交換の仕方も教えるから、それまで一緒にいていい?」
教えてもらえるなら万々歳だ。最初からついていたんだから、交換の仕方も知らない状態で使っていたわけだし、たぶん、電灯が切れたら、私は速攻でメイランちゃんの宿に避難していただろう。
でも、ひとりで交換できるなら、やり方を覚えておきたい。
ということで、元来た道を引き返して、冒険者ギルドに行く……はずなんだけど、ルーイさんの様子がおかしい。
「こんなこともあろうかと、ミドルウルフの魔石、持ってきていますよ。ちゃんと、未収金で計上しているので、ここでお金のやり取りをして私がギルドに入金すれば問題ありません」
「またなんでそんなものを持ち歩いてるのよ」
「一応、商人向けに貿易ギルドも、数は少ないですけど融通してもらっているんで、それをちょっとお借りしただけで。ちゃんと売り上げも立てているので問題ありません」
「まぁ、あなたの粋な予測行動のおかげでギルドに行く段取りがなくなったわね。まぁ、ここから30分もかけて行って、また30分もかけて戻ってくるなんて、やってられないものね。ミネコさん、よく我慢できるわね」
いろいろ話が進んでいくうちに、私も話の輪に巻き込まれる。
「最初に提案したのはカトレアさんじゃないですか。まぁ、私も人通りが少ないし、いろいろな練習ができるので、気に入ってはいますけど」
「今の家からもっと街の近いところに住めるわよと言っても、変わらずここがいい?」
「ですね。それに、引っ越しとなると、いろいろ運ぶのが面倒なので。あと、一番は、人通りが少ないというのが一番の理由になりますね」
そこに勝るものは何もない。
市場にもギルドにも遠いし、私の主戦場になりつつある南の森へも遠い。それでも、人通りが少ないし、庭も広いっていうだけでここを気に入っている。
炎の龍や水の蛇などの魔法の練習なんて、人に見せられるわけないしね。それこそ、人に見られたら大騒ぎになるから、自分が広場で歌って踊りながらパフォーマンスできるようになるまでは絶対に見られないようにしたいというのが本音。
もちろん、そのパフォーマンスで披露してみてもらう分には何も問題はない。ちゃんと音楽もついて、曲に合わせて動いてくれるから。
だけど、練習中に音楽もない状態で見られたら、誰だって大騒ぎすることになる。そんなことは私だってわかっている。もし、私が一般市民で、家の裏から炎の龍が飛び出してきたら騒ぐ自信はある。




