84:相談
「あら、いらっしゃいませ。ミネコさん。今日はどうされました?」
朝の忙しい時間が終わったのか、のんびりと宿のカウンターで店番をしているメイランちゃん。私の姿に気付くと、声をかけてくれた。
「ちょっと聞きたいことがあってね。私、家を借りたでしょ?ただね、ちょっと薄暗いのよ。だから、照明をつけ足したいなぁって思っているんだけど、どうしたらいいのかわからなくてさ。ちょっと教えてほしいんだよね」
「そういうことですね。うちもそうなんですけど、基本的には、安く手に入るミニチュアウルフの魔石を使うのが一般的なんですが、稀に、豪邸とかでミドルウルフの魔石を使って、ミニチュアウルフよりも明るくする貴族もいるみたいですね。でも、増設するとなると、専門職の人を呼ばないといけないから面倒なんだよな。ってお父さんが言っていたので、もしかすると、ミドルウルフの魔石を使って暮らすほうがいいのかもしれませんね」
ミドルウルフの魔石か。でも、正直、どっちにでもなれって感じなんだよな。明るくなればそれでいいかなって思ってるし、とりあえず、もし、増やすならどこに行けばいいかも聞こうか。
「もしさ、私がミドルウルフの魔石じゃなくて、増設工事をするってなったらどこに行けばいいかな?」
「それなら、貿易ギルドでいいさ。ギルドが腕のいい職人を手配してくれるし、相談も乗ってくれるだろう」
私たちの話を聞いていたのか、メイランちゃんのお父さんが話に割って入ってきた。
「そうだね。ギルドで聞くのが一番いいかもしれないね。私たちに聞くよりもそっちのほうが断然にプロですし」
まぁ、そりゃそうか。ここで聞くよりは、貿易ギルドに行って聞くほうが早いな。
だとしたら、ちょっと貿易ギルドに行きますか。そこでいろいろ話をして、どういう照明に変えるか相談しよう。
「ありがとうございます。とりあえず、貿易ギルドに行ってみます」
「またご飯食べに来てくださいね」
メイランちゃんに見送られて、私は、貿易ギルドに向けて歩き出す。
なんだか、狭い世界で生きているなぁ。なんて思いながらも、まだまだいろんなところへ行ってパフォーマンスしたいけど、やっぱり、ここでの知名度を上げてからじゃないといけないよなぁ。
とりあえず、もう少しだけパフォーマンスして、知名度を上げてから、ほかの町へ遠征という形で行こうか。ほかの町でどれくらい通用するかも知りたいし。
そんなことを考えながら、私は貿易ギルドに。ほとんど毎日のように来ているような気もしているけど、気のせいだろうか。
「あら、ミネコさん、おはようございます。毎日のようにいらっしゃいますね。本日はどのようなご用件で?」
ギルドに入ると、いつも通りの笑顔で出迎えてくれるルーイさん。なんというか、毎日私の姿を見ているからか、それがおかしいのか、いつもの笑顔がマシマシになっている。
これだけの笑顔を見せられたら、誰でも気持ちよくなれるか。さすがだな、受付嬢って。
なんて思いながらも、今日来た用件を簡単に伝え、どうすればいいか相談する。
「そうですね……とりあえず、カトレアさんとご相談された方がよさそうですね」
「そうさせてもらえるとありがたいです」
私がお願いすると、ルーイさんは、街中の物件を管理しているカトレアさんを呼びに行ってくれ、数分もしないうちに一緒になって戻ってくる。
「お久しぶりね。元気だったかしら?……って聞くまでもなく元気そうね。で、ルーイからある程度聞いているけど、まずは、家の様子だけ見させてもらっていいかしら?」
もちろん、私が拒否することなんてないから、カトレアさんとなぜかルーイさんもついてきて、私の家まで行くことにする。
ルーイさんが馬車を手配しようとしたけど、カトレアさんが「街の様子も見たいから」と手配してもらうことに難色を示した後、結局、歩いて私の家に。
「ここが幽霊騒ぎと空き巣被害があった家ね~。まぁ、私の提案が良くなかったのもあるのかしら。ミネコさんには迷惑かけてしまったね」
「そういえばそうでしたね。その犯人はミネコさんが捕らえて、今日、広場でむち打ちの刑があるんでしたっけ?防犯チームも唐突すぎるんですよね。『明日の昼、公開処刑のために広場を占有させてもらう』とだけ手紙を送ってくるだけで、誰も詳しい事情を知らないんですから。たまたま東の森から帰って来たパーティが噂を小耳にしたので私は知っているものの、詳しい内容を書いてほしいですよ〜」
ちょっとルーイさんはお怒りモードで近衛兵たちの行動に愚痴を吐いていた。
というか、広場の使用許可というよりも、占有宣言をするのね。こりゃ、私がパフォーマンスする隙がないじゃん。ということは、今日に関してはあきらめるしかなさそうだな。
夕方から少し様子を見ながらパフォーマンスをしよう。さすがに、今日、なにもしないのは、昨日来た子供との約束を破ることになるから、できるだけ早い時間帯でやりたいな。なんていろいろ考えずに、家の中に。




