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82:夕食間際の訪問者

陽が落ちるまで練習をしていたけど、炎の龍か水の蛇、どちらかを動かすのは完璧。ただ、両方となると、動きがごちゃ混ぜになり、一緒に動いたり、どちらかが動かなかったりと、まぁ、ちょっと散々な形になる。

 こりゃ、明日も水のプリンセスをスペシャルパフォーマーとして登場させて、注目を引くしかないか。なんて思いながら家に戻る。

 家に戻った私は、朝に買ったカボチャをスープにして、ほかの野菜をサラダにして……。あっ、そうだ。オヤジのところで肉を買おうと思っていて寄るの忘れていた。あるのは、少量の野菜と夜・翌朝ごはん用に買っていたブレッドやパンたち。

 今日の夜は、ブレッドにスープを浸して食べるか。

 そう思っていた時、玄関の扉がノックされた。

 こんな時間に誰だろうと思い扉を開けると、おとといもその前も話をした近衛兵がいた。


「夜分遅くに済まない。先日の事件の報告に参った」


 あぁ、あの泥棒が入った件ね。私としては、私の家に近寄らせないだけで十分だから、結果はどうでもいいかななんて思っているんだけど、報告に来てもらっているんだったら、ちゃんと聞いておこうか。


「立ち話ではなんですし、中へどうぞ」

「いや、かまわない。すぐに終わることだ。それに、女子(おなご)が一人で過ごしている部屋に政府の近衛兵が単身で立ち入るわけにはいかぬ」


 そういうところは堅いんだ。なんて思いながらも、それじゃあと姿勢を正し、話を聞く。


 先日の窃盗は、親子共々、幽霊屋敷と噂になっていた私の家で、財宝を守っているんじゃないかと噂を耳にして侵入したとのことでした。そこで私も不思議なのですが、最初は金貨などの金目のものがなかったため、寝室に向かったところ、物珍しいネックレスと髪飾りがベッドの横に置いてあったので、盗んで換金してしまおうとしたようです。ただ、ネックレスと髪飾りと思っていたものが、銅貨にすり替わっていたとも言っているのです。何かご存じのことでもありますか?


 いろいろ報告かと思っていたけど、まだ疑われているところはあるのね。ただ、水の蛇を使って入れ替えたなんて言えるわけがなく、「何も知らない。ただ、ネックレスも髪飾りもベッドの横にある」とだけ返す。

 すると、やはり近衛兵は首をかしげる。無理もない。真実は私が知っているんだから。


「なるほど。承知しました。窃盗した親子ですが、明日の午後、広場にて公開処刑が行われ、過去に起こしていた余罪も発覚し、すべて合わせ、むち打ち50回の刑が決まっております。一応、被害者でもあるあなたも傍聴できる権利はありますが、いかがされますか?」


 公開処刑でむち打ちって、中世の刑罰みたい。だとしても、ちょっと顔は見たくないかな。……でも、いろいろと怖がらせる手立てはあるか。

 でもなぁ。明日、私も昼間に広場でパフォーマンスをしようと思っていたんだけどなぁ。どっちが先になるかわからないけど、公開処刑が先なら、パフォーマンスを見る気なんて失せるだろうし、私のほうが早くても、楽しいステージから厳しい罰を見るのなんて耐えられそうにないな。

 それに、広場なら、水のプリンセスなんて出せないだろうな。いろいろ職質されそうだし。


「いえ。明日も私は用事がありますので、その権利、捨てます。あと、それとお願いがあるんですが、私の職業柄、そのようなことが広まると、この先、芸を披露するときに、悪い影響が出るかと思うので、くれぐれも私の住まいで窃盗をしたなど、個人が特定できないようにお願いできますか?」

「そうでしたね。あなたは芸者でしたね。わかりました。あなたにもいろいろ事情があるのでしょうし、そのように伝えさせていただきます。あと、明日には銅貨の入ったアイテム袋を返却できますので、恐れ入りますが、東門にある近衛兵の詰め所へお越しいただけますか?」


 東門にある詰め所……。そういえば、東の方って行ったことがないな。何もないと思っていく気にもならなかったし。

 まぁ、街探索の一環として、明日、東門の詰め所に伺いますか。


「名前と要件をおっしゃっていただければ結構ですので」

「わかりました。明日、そちらへ向かいます。夕刻頃になると思いますがかまいませんか?」

「えぇ。いつでも。我々は街の警備のため、不眠不休で勤務しておりますから。おっと、この言い方だと語弊がありますね。交代をしつつ、夜通し町を守っておりますので、いつお越しいただいて結構です」


 びっくりした。夜通し起きているのかと思った。もちろん、交代要員はいるよね?なんて思いながら、話を聞いて少し安心した。

 私が「わかりました」と答えると、近衛兵は「夜分遅くに失礼いたした。明日お待ちしております」とだけ言って帰って行った。


 家の扉を閉めて、隣の窓で近衛兵が道なりに歩き、姿を消すのを確認した後、ようやく一息つくことができた。

 なんだろう、あの緊張感。私は全く悪いことをしていないのに、悪者扱いされたような気もする。まぁ、いろいろすり替えているところはあるから、私も悪者なんだけどね。

 とりあえず、事件が起きてから2日もしないうちに刑罰が決まるなんて、なかなかスピーディーだな。日本の警察じゃ、窃盗事件なんて起こそうものなら、罰が決まるまで、警察やら裁判やらで何か月もかかるイメージなのにね。

 まぁ、私とすれば、この事件で幽霊騒ぎが終わればそれでいいと思っているくらいだし、泥棒が受ける刑罰なんてどうでもいい。というのが本音。

 そんなことを思いながら、冷めてしまったカボチャのスープを魔法で温めなおして、夕食にする。


 今思いなおしたけどさ、炎魔法を使い終わった後って、ものすごく家の中が暗く感じるのよね。ただ、それは炎魔法を使ったからじゃなくて、裸電球がぶら下がるように、電灯がこの部屋にひとつしかないからなのよね。しかも、明るさを優先したがために、鏡のあるフロアにひとつ、キッチンには漏れてくる光だけ。というような薄暗さ。

 そろそろ怪我をしてもおかしくないだろうな。なんて思うし、この薄暗さ、いろいろ不便。

 明日の朝、市場で野菜とパンを買った後、メイランちゃんの宿に行っていろいろ聞いてみようかな。お父さんがいろいろ教えてくれそうな気もするけど。

 とにかく、この暗さ、どうにかしたい。

 そんなことを思いながら、ゆっくりと食事。

 カボチャも割るのには少し苦労したけど、甘くておいしい。スープにはぴったりの甘さ。あえて素材の味と言って塩コショウだけで味をつけたのが良かったのか、いい具合にできた。

 とりあえず、あとは、お風呂に入っちゃって、早々に寝ようっと。今日もいつもと変わらない日常だったけど、いい感じで疲労感もたまったし、ぐっすり眠れそう。

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