6.試してみる
「街の外に行くのかい?」
どうやら、私に気づいた門番の人が私に声をかけてきた。
「あっ、はい。外に……」
「そうか。最近は、このあたりでも魔獣が多いから気をつけてな」
魔獣。そう言われて、つばを呑む。
「なんだ?知らないのか?」
不思議な表情をしていたのか、私に門番の人がいろいろと話してくれた。
何があったのかわからないが、ここ最近、森の入り口まで魔獣が出たとの報告が上がっていること。
騎士団が確認に行くと、普段は森の奥にしかいないはずの魔獣が森の入り口近くまでうろついていたこと。
レッドバードやミニチュアウルフなどの小魔獣なら初級の冒険者の狩場として開放するが、ミドルウルフやレッドウルフなどの中位種もいれば、騎士団でも討伐にてこずるブルーホーンブルのような上位種が確認されたから、ランクC以上の人たちしか通れないようにしたとのこと。
近くの森がどれくらい離れているのかわからないし、知らない名前が次々に出てきたから、私の頭はちんぷんかんぷんになっているけど、まぁ、大丈夫だろう。すぐそこまで行って、魔法の練習をするだけだし。
「その森がどこにあるのかわからないけど、そこまで遠くに行くつもりはないですよ。まだ連れてこられて3日しかたっていないし、この周辺の地理もよくわかっていませんし」
「そうか。それでも気を付けてくれよ。ごくまれに森から出てきて、近くをうろつくことがあるからな」
ありがとうございます。とだけいって、門をくぐらせてもらう。
それにしても、魔獣か。さっき、小魔獣とかっていってたよね。ペットみたいな感じなのかな。
……考えるのは、実際に出会ってしまった時にするか。実態のわからないものを考えても仕方がない。
とりあえず、適当な場所を探して歩きますか。
そこからだいたい15分くらい歩いたと思う。
手入れされていた草原から唐突に「面倒見切れねぇよ」と言わんばかりの荒れ地にたどり着いた。
ここまでは一本道だったから迷うことはない。
うん。ちょうどいいや。ここを私の練習場にしよう。
そう思うと、木簡に書いてあったことを思い出し、頭の中で出してみたい魔法を想像する。
「ウォーター」
そう呟いて、目を開くと、指先から水道のように水が流れ落ちていた。
今は、流れ落ちる水道のようにしか想像していなかったからそうなったのかもしれない。これって、目を開けたまま想像するものを変えるだけで魔法の形って変わるのかな。
なんて思って、流れ落ちる水をじっと見たまま球体をイメージしてみた。
すると、思った瞬間にただただ地面に流れ落ちていた水は、球体に丸まり、その場にとどまるようになった。
それじゃあ、これを投げるとすると?
球体をつかんでみようとすると、しっかりと水の感覚。手も濡れる。ただ、持つことはできたし、投げることもできた。
感覚的には水風船で、近くにあった大きな岩に投げつけていて、見ると、水風船が割れたように濡れていた。
ただ投げるだけだと、威力はほぼなしか。
これを強く投げるイメージにするとどうなるんだろう。
「ウォーターバルーン」
これも木簡に書いてあったけど、魔法技のイメージを自分で名前を付けて呼ぶと、威力が上がるとあったからついでにやってみる。
パシャーン
どうも、飛ばしたウォーターバルーンは効果がないようで、岩にぶつかると、はじけ散ってしまった。
それじゃあ、もっと強そうなものをイメージするとか?
そう思って、今度は水鉄砲で砂の山を崩すイメージに変えてみて、そのまま指先から飛ばしてみる。
すると、威力はさっきと打って変わって、ほぼ無音で大きな岩に穴を貫通させることができた。
「えっと、高圧洗浄機かなにかかな」
私はただの水鉄砲をイメージしたつもりだったんだけど、砂の山のイメージがもろいみたいだ。
とりあえず、命名。さっきの魔法は水鉄砲で。
そこからだんだんとイメージするのが楽しくなってきて、次々に魔法技を試しているうちに、荒れ地は、岩の残骸が飛び散ったりして、さらに荒れ地に変わっていた。
とりあえず、要領はわかったし、何かあったとき、ある程度自分の体を守ることはできるだろうな。
そんなことを思いながら来た道を戻った。
街に戻ると、さっきの門番の人に出迎える。
「おう、嬢ちゃん。無事だったか。さっきな、嬢ちゃんの歩いて行った方角でレッドウルフの群れが発見されてな。そのぽかんとした表情だと、魔獣とは鉢合わせなかったみたいだな」
門番の人は安心そうに私を見ると、顔をキリっと変えて、真剣な表情になる。




