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63.初パフォーマンス

 食べ終わってからだいたい20分くらいゆっくりしたかな。おなかのほうもだいぶ落ち着いてきて、動いても問題ないかなって思えてきたころ。

 まだ誰も広場ではパフォーマンスする人は見えず、私の独断場だな。と思い、看板を立てて、いろいろと準備していく。

 正直、スピッカとスマホはどこに設置しようかと思ったけど、どうせ、無線でつながっているようなものだし、スピッカは看板の近くに、スマホは自分の手元に持っていてもいいか。

 あとは……うん。大丈夫そうだね。心配なのは声だけだけど、スマホがマイク代わりになるみたいで、スピッカから私の声もしっかりと拡散されている。


 一発目だけど、名乗らずに、いきなりパフォーマンスを始めてみようかな。いわゆるフラッシュモブ的なやつ。といっても、パフォーマーは、私ひとりなんだけどね。

 とりあえず、一発目は、やっぱり、私のオリジナル曲かな。盛り上がりが足りないと思ったら、カバー曲の力を借りたらいい。

 ここは景気よく〈リンク・トゥ・スマイル〉で行くか。少し重低音の強い曲だけど、それくらいだろう。何の問題もないと思う。

 そう思うと、スマホを操作して、曲のタイトルを探してから、再生させる。


 最初に金の音が4回鳴った後、ベースラインが音を支配。そのあと、ギターでメロディーが奏でられ、ドラムも入ってくる。

 そこから私も振り付けに入り、40秒近くの前奏のあと、完全に動きを止め、歌っていく。



  Welcome it’s been a Whole how are you

  赤い夢の続き一緒に

  描いて不思議な世界に潜り込むのが最後

  もう眼は覚ませない


  今見ているのは誰かの夢の世界

  Linkして自分が見ているように感じているだけ

  You must enjoy this dream until the time

  If I don’t, I don’t know everything


  見えた気味の顔は暗くて見えてないけど



 前奏からAメロ、Bメロまで、いきなり始めたこともあって、その場で立ち止まる人が多く、じっと私のほうを不思議そうな目で見ている。360度ターンをする振り付けがあって、そのときにほかの方位もちらっと見るけど、どの方位からも不思議そうな目で私を見ている。

 真新しいジャンルだから興味はあるんだろうけど、なんのことか全くわかっていないっていうのがあるんだろう。そして、私も選曲のチョイスを間違えたと思っている。

 この世界の人たちに英語なんて絶対に伝わらないと思う。

 だけど、すっかりサビに入っているわけだし、今はそんなこと気にせずに、私が楽しんじゃおうか。周りが楽しいと思ってもらうには、私が一番に楽しまないと。


 ただ、そんな努力もむなしく、1曲踊り終わっても、周りとはまだかなり距離がある状態。遠回しに見ているって言った方がいいな。こりゃ、路線を大きく変えて、子供をメインターゲットにした方がいいか?

 いや。ここで路線変更をかければ、もっと変な目で見られるだろう。ちょっとしんどいかもしれないけど、ここは我慢して次の曲へ行こう。

 精神的なスタミナも考えると、やっぱり、この曲はさきにやっておきたいかな。ハイアスさんのカバーで〈最終論争〉を。

 ……っと、その前に、自己紹介をしておこうか。


「みなさん!こんにちは!芸者のミネコと言います!この街に来て、初めての披露で、みなさん、戸惑っているところがあるかもしれませんが、楽しんでいきたいと思っています!みなさんの時間が少しでも素敵なものになるよう芸を披露します。短い時間ですが、楽しんでいってください!」


 ゆっくりと腰を折るようにお辞儀をすると、遠くからパラパラと拍手の音が聞こえる。

 自己紹介をしたことによって、多少は私のことをわかってもらえたんじゃないかなって思う。

 簡単な自己紹介をしたあと、計画した通りの〈最終論争〉を流し、パフォーマンスをしていく。

 さすがに、ヲタクの文化がないせいか、コールの声もなければ、手拍子すらなくて、少しくじけそうになるけど、こんなの、ソロ活動をスタートさせたときに比べたらマシだ。

 ソロ活動を始めたときなんか、ライブハウスでライブをしていたけど、ほとんど誰も客席にいてくれず、いてくれたとしても、スマホを触っていて、私のことは見てくれていなかったり、そんな状況でコールなんてあるはずもなく、精神的に折れそうになったライブでもあった。

 その時のことを考えたら、今は見てくれている視線があるだけでものすごくありがたい。



  あなたを守って見せるから今は私をわがままにさせて

  たとえこの世が滅んだとしてもあなたへの思いは一途


  何一つ変わることはない 私が初めて愛した人だから

  忘れることはできない 思い出をすべて持ち出すの



 少し恋愛チックな感じも垣間見えるけど、どっちかというと、この曲は、ヒロインもの。

 メロディーは完全にヒロインものなんだけど、サビに入るとちょっと乙女チックになる。

 でも、完全に愛を歌っているし、自分が王者なんて言っているしで、やっぱり、強い女性なのかなって思ってしまうよね。

 とりあえず、これは強い女性を歌っているんだから、私がそう見せないと。

 ただ、なんというか、後半になればなるほど、女戦士が戦うという面より、女神が微笑んでいるという面が強くなっているように、個人的には感じている。

 それだけ、このヒロインは強いってことなのかな。なんて思いながら、長い長い間奏を抜けて、ラストサビに入る。



  聖なる樹の前で誓う 世を2部する争いの終結を

  私が上に立ち声を上げる 王者の威厳を示し


  無駄な争いはやめるのです 悲しむ姿は見たくない

  望む世界の姿は明るく 笑顔と平和のみを



 結局は、誰もが平和を願っているけど、暴力で解決しようとする偽りのヒーローを差し置いて、自分が力を持っているものだと示しをつけ、神に誓う。

 そんな感じなのかな。なんて思いながら、間髪を開けずに次の曲に行く。

 次の曲は〈Have a nice dream〉だ。この曲は、ちょっと闇深いところはあるけど、乗ると、いい感じになる曲。それがおわれば、〈有頂天〉という曲で締めようかな。

 ちょっと短いように感じるけど、誰も私のことを知らない状態で、1時間も2時間も占領するわけがない。

 とりあえず、少しばかりの投げ銭は集まっているから、それは貿易ギルドに納めに行かないとね。



 そこから、しっかりと2曲をパフォーマンスしたところで、私は動きを止める。


「本日は唐突にもかかわらず、私の芸を見ていただきありがとうございました!たまにこうやって唐突にこの広場で芸をさせていただこうと考えています!予告もなしに始めさせていただくので、また、みなさんに会える日を楽しみにしています。きょうはありがとうございました!芸者のミネコでした!」


 しっかりとお辞儀までした後、素早く後片付けを始める。……とはいっても、スピッカとスマホをアイテム袋にしまい、木札を挟んだ立て看板と、投げ銭を回収するだけなんだけど。

 ささっと片づけを済ませると、空いている広場のベンチに向かって、体を休める。

 すると、私に近寄ってくる人影を視界の端に捉えた。


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