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54:私の正体

 さっと炎魔法を服全体に回しかけるように軽く当てると、あっという間に乾いて、ちょっと手持ち無沙汰になってしまった。

 こうなったら少しいたずらを仕掛けたいところはあるけど、さすがにここだとちょっとかわいそうかな。と思い、自重することに。


 さすがにやることがなくなった私は、リビングに戻り、簡単な夜食を作ろうかなと考えたものの、食料が人数分ないことに気づき、あきらめる。

 そこからしばらくすると、メルティさんがお風呂から上がったみたいで、衣服をまとった状態で私たちの前に出てきた。


「ミネコさん、本当に乾いているんですけど、どんな魔法ですか?」


 まだ乾いていないと思っていたのか、メルティさんは少しびっくりした表情で私を見る。


「大した魔法じゃないですよ。ただただ、ちょっとした火の玉で服の周りをあぶっただけです。私も乾くのが早くてびっくりしましたよ」

「そうだったんですね。なんでしょうか。私の服はたいして特別なものじゃなかったような気もするんですけど……」


 私からすれば、某アニメに出てくるぴちっとしたスーツのように見えて仕方ないところがあるんだよなぁ。なんて思いながらも、自分がむなしくなるだけだから、強調するふくらみをできるだけ見ないようにして、ここに来た本来の目的の話に話をすり替える。

 そういえばそうだった。というアイラさん。完全に忘れていただろうなと思いつつも、火の玉について詳しく話を聞いていく。

 とはいうものの、私の家だけど、私自身、何か扱った記憶もないから、何にもできないというのが本音なんだけどね。

 そして、いろいろ話をつなげてみると、だいたいこの時間くらいにこの家の正面で火の玉が浮かんでいて、奇妙な形をしていたという。

 その奇妙な形というのが、どの人もうまく言い表せなくて、見た人の記憶には残っているものの、形が口で伝わらないらしい。

 そうなってくると、さすがの私もお手上げだね。どんな形だったのかわかれば、再現はできるだろうけど、さすがにイメージがわかないと再現はできない。

 それに、火の玉と言ってもお化け屋敷に出てくるような青い日の玉だってあるし、私が扱うようなオレンジの火の玉だってあるわけだし、いろんな種類がある。再現するには難しいかな。


「ほら、何もないでしょ?見た人の思い込みだったんじゃないの?」

「かもしれないな。一番びっくりしたのが、ここがミネコさんの家だったってことだな」

「だね。まぁ、私は、ミネコさんが家を借りたこともそうだけど、あそこにある大きな鏡かしら。私も手鏡くらいは持っているけど、ここまで大きいのは見たことがないわ」

「それもそうだな。これは、この家に元々あったものかい?」


 どうやら、鏡が大きいこともあり、部屋の隅に置いているスピッカとスマホには気づかれていないようだ。説明するのが面倒だから、このまま気づかれずにいってほしいものだけど。


「いや、私が仕事のために譲ってもらったものよ。刃物を置いているお店の店主が過去を忘れたいからって言って、使うなら譲ってやるって言って」

「へぇ。でも、ミネコさんって、冒険者じゃないんですか?この前の緊急クエストのとき、名前も張り出されていましたし。それに、あの強さ、すごい冒険者と思っていたんですけど」


 なんだか、いろいろと変な情報が付きそうだな。ここは、思い切って正体を明かしておいた方がいいかもしれないな。


「私、職業は芸者なの。歌と舞で芸を披露する。で、冒険者は副業かな。正直、芸者で食べていけるようになるまでに時間がかかるだろうし、たまにのお小遣い稼ぎといったところね。まっ、この前、ブルーウルフを倒したおかげで、懐はホッカホカだけど」

「あの時のトラウマはまだ残ってるぜ。南の森に行くのが恐怖でしかねぇもんな」

「確かにそうですね。緊急クエストに名前が載らなくて助かったとも思っていますから」


 それはそれでちょっといいなぁ。と思えてしまったけど、九死に一生を得たメルティさんたちには、また死ぬ思いでレッドウルフたちに立ち向かわないといけないことになっていたか。とちょっと納得した。それに、あの様子だと、まだ振り分けたレッドウルフは持っていそうだし。


「それにしても、芸者か。俺たちはずっと冒険者としてしか生きてきていないから、ほかの職業がどんな感じかっていうのを知らないんだよな。だから、何にも言えないんだけど、冒険者を副業とは珍しいな。命を懸けることもあるから、生半可な気持ちじゃ絶対にできない仕事だと思っているけど」

「それもそうね。この前も、ミドルウルフに襲われて、魔導士の女の子が食い殺されたでしょ?出会い頭だったらしいから、少しかわいそうなところもあるけど、それが冒険者の使命ってところがあるから仕方ないと思うのよね」


 少しだけ生々しい話を聞いてしまって、少しだけ身構えてビビっている私。

 まぁ、それが魔獣と対峙する冒険者の使命ってところはあるんだろうけど、元の世界に戻るためにも私は死にたくないな。と思ってしまう。

 ……逆にこの世界で死んだら、元の世界に戻れたりするんだろうか?でも、わざわざそんな危険なことをするために、死ぬのもおかしな話だし、もし死んだとして、そのまま元の世界に戻れなかったら何の意味もなさない。

 ここは生きることを選択するか。


「とりあえず、何もないことが分かった今、ここにいても少し不気味なだけね」


 メルティさんがそういうのも無理はないかな。

 電灯は、ミニチュアウルフの魔石から流れる小さな電灯が1つだけだもん。薄暗く感じるのも無理はないと思う。

 けど、これ以上のやり方を私は知らないから、このまましばらくは放置というような形になっちゃうかな。でも、これから住むとわかっているなら、もう少しおしゃれに明るくしたいな。

 とりあえず、ほかに方法がないか、メイランちゃんに聞いてみようか。

 でもやるとするなら、シャンデリアが一番きれいだろうな。ちょっとした夢でもあるし。それをちょっと考えてみるか。


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