53:ちょっとしたいたずら
「わー!ストップストップ!ここ私の家だから!」
家のドアにタックルしようとしていたアイラを止めるように私は声を荒げる。
私の焦りように気づいたのか、アイラが動き止めきれず、バランスを崩して転んだ。
「ここがミネコさんのおうちなんですね。素敵なおうちですね」
キルシュちゃんが他愛のない感想を口にすると、メルティさんがズカズカと私の家に入ろうとする。
なんというか、遠慮がないな。普通はもっと遠慮するものだと思うんだけど。
でも、なんとなくだけど、ここでいたずらを仕掛けたくなる。
うまくいくかわからないけど、屋根から水魔法でシャワーとかできたりしないかな。と頭の中でふと思い立ち、「アクアライン」と小さくつぶやき、正面玄関の裏側から水の筋を通すように魔力を送り、ちょうどメルティさんのいる真上に到達したとき、雨のように少しだけシャワーを浴びせる。
「キャッ!雨!?濡れるの嫌なんだけど~」
「メルティ、何言ってるんですか?こんなに月が輝いているのに、雨なんて降るわけないじゃないですか」
キルシュちゃんが正論をかますと、メルティさんは、天を見上げて首をかしげる。その姿に思わず笑いそうになってしまう。
そして、なんでかわからないけど、ちょっとだけ強い雨にしてみようと、さらに魔力を込めてみると、超局地的豪雨のようになってしまい、メルティさんはずぶ濡れ。衣服自体は、少しゆとりのある服を着ていたせいか、雨に濡れてボディラインがあらわになっている。
その姿を見てしまったら、もう笑いは堪え切れなかった。
「ちょっとミネコさん!なにしたのよ!」
「あはははは。あぁ、面白い。ちょっとしたいたずらのつもりだったけど、ここまでになっちゃうなんて。火の玉ならぬ水の玉ってね。でも、こんなにうまくいくなんて。あ~、おなか痛い」
しばらく笑いのツボに入ってしまった私の笑い声が闇夜にこだまして、後で思ったのが、少し怖い魔女のように感じてしまった。
「でも、ミネコさん。こんな曰く付きな物件を紹介されたのかい?」
「まぁ、貿易ギルドに仲介してもらっているから、おかしなところがあれば教えてくれるはずなんだけど、それすら聞いていないから、何もないと思うんだけど……。とりあえずさ、メルティさん、風邪ひくからお風呂入っちゃいなよ。服も何とかして乾かしてあげるからさ」
「ミネコさん、そんなことできるのかい?水魔法だろ使うの。濡らすだけじゃないのかい?」
「まぁ見ててくださいって」
鍵を開けて中に入ると、すぐ左手に大きな鏡があって、それに驚いたキルシュちゃんが尻もちをつき、キルシュちゃんの小さな悲鳴と、自身が写ったメルティさんもびっくりしていた。ちょっとしたトラップハウスなのだろうか、ここは。
とりあえず、お風呂に行くと、自分の魔法で、浴槽に水を並々に入れ、その中に、「ファイヤーボール」とつぶやき、手のひらサイズの火の玉を投げ入れる。
「えっ?ミネコさんて2種族持ち?」
「何それ?一応、水と炎と使えるみたいで、扱ってるけど」
「いや。えっと、簡単に言うと、ミネコさんみたいに、別々の魔法を使える人のことを何種族持ちって言うんだよ。珍しいからさ。びっくりしちゃって」
聞きなれない言葉思わず聞き返してしまったけど、複数の種類の魔法を使えるのって珍しいんだ。そうなんだ。うすうすと感じていたけど。
「まぁ、どちらかというと、水魔法のほうが使う頻度は高いよ。扱いやすいし、暴発しても被害は少ないし。炎魔法は、周りも燃やし尽くしそうであまり使いたくないっていうのが本音だしね。しかも、この前は森の中だったわけだし。でも、こういった小さい魔法は役に立つから、いろいろ使ってるよ」
「そ、そうなんだ。なんというか、スケールがでかすぎて、ついていくのに必死というか……」
「あっ、でも、炎魔法が使えると言っても、火の玉のうわさは私じゃないからね」
リビングに戻ってからそう言うと、アイラたちの顔が少しひきつった。
「そのことは後で考えるとして、メルティさん、お風呂入ってきたら?あのファイヤーボールならすぐに沸いてると思うし」
「あっ、うん。ありがとう」
それだけ言うと、メルティさんは、お風呂のほうに向かい、しばらくの間は、キルシュちゃん、アイラ、そして、この時に自己紹介をされたサルティさんがリビングで話していた。
その間に私は、メルティさんの服の下から少しだけ炎魔法を使い、熱を使って濡らしてしまった衣服を乾かす。
ただ、速乾性のいい生地を使っているのか、乾くのが早い。
私の着ている服は、綿が主のように感じて、軽いんだけど、濡れたら乾くのに時間がかかりそうだなとは思う。
その反面、いろいろ装備のあるメルティさんの服は、見た目重そうなんだけど、乾くのは早いみたいで少しうらやましく感じた。
総PV3000越えしました!
日頃からお楽しみいただき感謝いたします。
これからどうなって行くのか、お楽しみに♡




