43:新しいお店
あとそうだ。もう、自分の家が手に入ったから、メイランちゃんの宿に置いてあるものを自分の家にもっていかないといけないから、たぶん、貿易ギルドにウルフを卸したら、アイテム袋の中が空になるだろうし、全部詰め込めるはず。それで行くか。
ということは、またメイランちゃんの宿に戻らないといけないなぁ。そんなことを思いながら、なかなか手が出なかった街の北西側に足を踏み出し、何か食べたいものがないか手当たり次第に物色する。
といっても、お米がないから、食べられるものが限られるけど、久々にお米やお米を使った料理を食べたいなぁ。なんて思いながらも、『ステーキバーガー』となるお店を発見。
またカロリーが高そうだなぁ。なんて思いながらも、スパイシーな香りにそそられ、足がそのお店に向かっていく。
中に入ると、さすがにお昼時なのか、少し混雑していて、いい感じの賑わいを見せていた。
「空いている席に座ってちょうだい。すぐにお水持っていくから」
少しあわただしく動いているふくよかなおばさんが声をかけてきてくれ、私は適当に空いているカウンター席に座る。
そして、目の前にあるメニューを見ると、選択肢は2択。
ステーキバーガーとなるものとスパイシーバーガーとなるもののどちらか。どちらも興味があるけど、まぁ、無難にステーキバーガーにしておく?なんて思いながらも、おばさんが来るのを待つ。
「はい、おまちどうさん。ステーキ?スパイシー?」
水が置かれるのと同時に、注文を聞いて来るおばさん。まぁ、2択しかないんだったら、迷う余地はないよね。
「ステーキで」
「はいよ。ちょっと今日は混んでるから、ちょっと待ってもらうよ。水はあそこにタンクがあるから、あそこから自分で注いでちょうだいな」
おばさんは、私の注文を取ると、そそくさと、厨房のほうに行き、「ステワン!」と客席まで響くような声で言った。
これがこのお店の看板なんだろうな。なんて思いつつも、どんな料理が運ばれてくるのかワクワクしながら待つ。
そんなワクワクも、隣に料理が運ばれてくると、私の口からはよだれが垂れそうになって、なんというか、この世界に来てからの食事で一番ワクワクしているかもしれない。
「嬢ちゃん、ここは初めてかい?ここはいいぞぉ。常にレッドウルフのサーロインを焼いてバンズって呼ばれるパンに挟まってくるんだ。もちろん、野菜も挟まれているから罪悪感はゼロだぜ」
隣にいた恰幅のいいおじさんにそう言われるけど、体型を見ればわかる。こういう油ギッシュな食べ物を好んで食べて、立派なお腹になったんだろうな。
でも、おいしそうなのには変わりない。
私だって、しばらくハンバーガーなんて食べていない。セルフで体重管理をしていたこともあって、食べなくなったし、ファストフード店によることすらなくなった。
だから、久々にこういう類のものを食べて、身体の調子が悪くならないか心配だな……。なんて思ったけど、よく考えれば、この世界に来てから、肉料理しか食べてないや。
それに、ちゃんとステーキだって単品で食べているし、それに伴っての体調不良もない。ということは、問題ない?って思っていいのかな。たぶん……。
そんなことを料理が来るまでの間、ずっと考えていたけど、いざ、料理を目の前にすると、そんなことはすっ飛んで、目の前のおいしそうなハンバーガーに目が釘付けになる。
こういうのは、手づかみでわしゃっと食べるのが一番いいんだろうけど、周りのみんなは、ご丁寧にナイフとフォークを使っている。
ここで私がわしゃっと食べるのは行儀が悪いか。ここは、周りに合わせておしとやかに食べようっと。
それにしても、肉が分厚い。これだけ分厚くて、レッドウルフと中位種の肉を使っているわけでしょ。値段が怖いけど、手持ちがたくさんある今の私には怖くない。値段を見てなかった私が悪いんだし、今日は無礼講。全部気にせずに食べちゃえ。
そう思って一口サイズに切って口の中に放り込む。
噛んだ瞬間、肉汁がじゅわっと広がり、脂がしつこくない。バンズに吸い込まれているというのもあるだろうけど、脂っこくなくて、いくらでも行けそうな感じ。
そんな久々に食べるハンバーガーも、やっぱり量が多いわけで、食べきるのに1時間くらいかかったかもしれない。ようやくというくらい時間をかけて食べきることができた。
それでも、銀貨2枚というお大盤振る舞い。私の感覚だと、銀貨5枚は言ってもおかしくないかなとは思っていたから、ちょっと拍子抜けした。
というか、昔の感覚なら、2千円でも高いと思ってしまっていたから、金銭感覚が大幅に狂い始めているのも事実。ちょっとは節制しなきゃダメかな。なんて思いつつも、生鮮食品を置いているところがないからなぁ。自炊したくてもできなさそうだな。とあきらめがついたところで、貿易ギルドに向かう。




