41:溜まる鬱憤
今日も今日とて鶏のような鳴き声で目が覚める。
まだぼーっとする頭で階段を下りて、メイランちゃんに挨拶。それと同時に、貿易ギルドを通じて、冒険者ギルドから呼ばれていることを伝えられる。
「なんでまた急に」
「ユイナっていう受付の人が昨日のことについて話がしたい。ってルーイさんから伝言を頼まれまして」
昨日のこと?……もしかして、ウルフの群れのことなのかな?あぁ、そういえば、回収した後、ユイナさんに報告するだけして、ウルフを渡していなかったな。そのことで呼ばれたのかな?まぁ、呼ばれた理由はわからないにしろ、呼ばれたなら行くしかないか。
今日こそ、スタジオ代わりに契約した家で使う日用品を集めたかったのになぁ。なんて思いながら、出してもらった朝食を食べ、冒険者ギルドに向かう。
「あっ、ミネコさん、おはようございます。昨日はありがとうございました。ここに来ていただいたということは、伝言を聞いて?」
「そうですね。昨日のことについて話がしたいって言われたら、忘れる前に来るのが仏じゃないですか?」
「まぁ、そういわれてしまえばそれまでなんですが……。でも、ある程度の事情を伝えられているのでしたら幸いです。単刀直入に申し上げますが、南の森で発生しているウルフの群れの討伐グループに選出されています。昨日は比較的浅いところでウルフが発見され、ミネコさんたちに討伐していただきましたが、元々、この森にレッドウルフやブルーウルフなど、中位種や上位種の魔獣が生息するはずがなく、初心者の狩場としての役割を失っている状態です。その状態を打破しようと、今回、ギルドマスターからのクエスト発令ということになります」
なんだか、厄介なことになってきたな。
「もちろん、断れば……」
「昨日、お伝えした通りで、罰則が適用されます」
「ですよね~。でも、昨日、クエストの参加を言われていて、参加できなかった人たちというのは?」
「クエスト終了なので、罰則とかは特にありません。ギルドからの成功報酬と目玉でもあった追加報酬がなくなっただけ。というとらえ方になります」
「そしたら、私は、クエストに出ただけ損になったということ?」
「そんなことはありませんよ。ギルドからの成功報酬で、金貨20枚、追加報酬でランクポイントの付与。そこに、ミネコさんが狩った魔獣がそのままご自身の懐に入りますから。ですので、報酬目当てや、ランク上げ目当てのパーティから仕事を取ったというような形です。それに、ミネコさんは、1週間でDランクに昇格していますよ。こんなに早く昇格できた冒険者は誰ひとりいませんから、当ギルドきっての記録ですよ」
記録まではいらないし、ランクもそのままでよかった。なんなら、平和に過ごせるだけの力だけ保持して、何もかかわらない状態で生きていたかった。
いまさらそんなことを言っても遅いかもしれないけど、できるなら、今からでも隠居生活を送りたいとも思う。
「そこまでは別に興味ないから、なんていうか、どうでもいいんだけど、今回はさすがにね~。正直、罰則のほうがきついことはわかっているんだけど、芸者が連日のように狩りをしてていいのかって思えてきてしまって。今日だって、ようやく落ち着いたから、昨日にできなかった家の改装をしようと思って朝起きてきたのに、ふたを開けたらこうなるでしょ?私もそろそろ冒険者や狩人じゃなくて、芸者として生きていきたいんだけど」
なんだか、ユイナさんに非がないことはわかっているんだけど、こうも冒険者ギルドに振り回されていると、私のうっ憤だって溜まってくる。
「ですが……」
「『ですが』なに?私がレッドウルフやブルーウルフを狩ったことは確かに実績に上がると思うけど、あくまでも臨時パーティでやり遂げたこと。個人では絶対にありえないから。それに、何度も言っているけど、私は芸者。冒険者じゃないのよ。なんなら、もう狩りなんてするつもりがないから、冒険者の記録を取ってほしいくらいよ。あと、私が自らギルドに足を踏み入れて、こういう話をされたならまだあきらめがつくけど、相談もなしに呼び出され、こういう話をされると、私だって予定があるのに全部くるっちゃう」
思わず勢いに任せて言ってしまったけど、さすがに連日、『実績があるから~』って言われて振り回されるのにはイライラが積み重なっていく。
昨日は、興味本位から足を踏み入れて、罰則にビビッてクエストをこなしてきたけど、今日に関しては、ギルドから呼ばれ、実績を買われ、討伐体にメンバー入り。たまったものじゃない。
これがたまたまギルドに足を踏み入れて、こういう事実を知ったならあきらめがつく。でも、今回はそうじゃない。ギルドから呼ばれて、確認もとられず、討伐隊に入れられて。そんなの我慢できたものじゃない。




