33:クエスト
翌日も朝から生活に必要なものを買いそろえるために市場を散策。
窓につけるカーテンも何枚か用意しなきゃいけないし、調理器もそろえたいし、あとはここで暮らすならなんとしてもベッドが欲しい。
そんなことを思いながら、市場へと繰り出す。
そんな途中、ギルドのほうが騒がしいことに気づいた。
何て言うか、冒険者がこんな時間にいるのはおかしいって言う言い方は違うかもしれないけど、そんな時間。
首を突っ込まないほうがいいことはわかっていながらも、なぜか、吸い寄せられるように冒険者ギルドの中に足を踏み入れていた。
仲は、何と言うか、慌ただしいし、いろんな声が飛び交っていて騒がしい。
そんなことを思いながら、周りを観察していると、集団から離れて、ガタガタと震えているウェルメンさんを見つけた。
「ウェルメンさん、これ、何事?」
「ミネコ。おはよう。この前、ブルーウルフを討伐したでしょ?あのブルーウルフがあんな浅いところで見つかるわけがないとギルドが思ったみたいで、職員が調査してみたら、レッドウルフやミドルウルフの群れが住み着いていたらしくて、それの討伐クエストが緊急で出たみたい。対象はCランク以上の冒険者、もしくは、レッドウルフを討伐したことがあるパーティよ。クエスト掲示板に対象者もあそこに張り出されているわ。一度見てみたら?」
ウェルメンさんが指さす方を見ると、更なる人だかりができていて、字も遠すぎて見えない。近寄るしかないか。
そう思い、掲示板に張り出されている紙を見ると、さっきウェルメンさんが言ったことが書いてあって、その隣には対象者のリストが。
……ですよね~。
なんとなく嫌な予感はしていたけど、まぁ、私も入っているよね~。うーん。
私は芸者だから免除してほしいところなんだけどなぁ……。
ユイナさんに相談してみる?なんとなくだけど、「何言ってるんですか!」って言われる気がする。
まぁ、ものは試しだし、一度試してみる?
そんな淡い期待を持ちながら、受付にいるユイナさんに声をかける。
「あっ、ミネコさん。おはようございます。掲示板はご覧になりましたか?」
「う、うん。見たんですけど、私、職業は芸者なんですけど、参加しないってことはできませんか?」
「何言ってるんですか!ミネコさんみたいに初心者が選ばれるってことはありえないんですよ?でもそれは、ミネコさんがレッドウルフの討伐をした実績を買っての選出ですよ?それに、ギルドからの緊急クエストを達成すると、ギルドからの報酬に加えて、ギルドカードにギルドクエスト達成の記録が刻まれ、ほかの街に行ったとき、クエストの報酬が上乗せされたりするんですよ?それでも行かないって言うんですか?」
なんだか、まくしたてるように早口でしゃべるユイナさん。
予定外のことが起こると、ビックリして早口になるタイプの人か。なんて思いながらも、思ったことを口にする。
「もし、拒否すれば、私にデメリットはありますか?」
「もちろんです!『ギルドクエスト受注拒否』という経歴が刻まれ、ほかの街に言ったとき、税金の上乗せに、クエスト受注の制限、報酬の減俸などなど、様々な面でミネコさんにデメリットとして降りかかります」
……どうやら、逃げ道はないみたいね。
「あっ、思い出した。ミネコさん、こちらに」
ユイナさんに手招きされ、耳を近づけると、小声で話し出す。
「ギルドオーナーからのご指示で、今回、レッドウルフを3体以上討伐して、買取りに持ってきていただければ、Dランクに昇格させると伺っております。しかも、家をご契約されたそうですね。カトレアさんとお話をして、今回の討伐をクリアできれば、契約金をそのままで、もっと街に近いところをご紹介できると伺っています」
ますます好条件をチラつかせてくる。
もし、これがウェルメンさんだったら、間違いなく飛びついているだろう。
まぁ、ウェルメンさんが定住を好むなら飛びつくだろうなって話だし、もし、旅がしたいっていうなら、あまり持ってこいとはならないかなって思う。
人の価値観はその人それぞれだし、私が何ということはない。ただ、金貨4枚である程度街に近くなるというのはちょっといい条件かもしれない。
まぁ、あの家でも十分なんだけどね。というか、あの家が私の生活にとって一番いいかもしれない。人に知られることも少ないだろうし、あの静かな環境が私専用のスタジオと思わせるようで、ちょっと高揚感がある。
ただ、やっぱり、あれだな。拒否して、ギルドカードに記録を入れられたあとに活動しても、税金を取られるのは仕方ないとして、その額が大きいと、稼いだ分を取られるような気がしてちょっともったいないと思ってしまう。
貧乏癖の悪いところだとは思っているんだけど、まぁ、いろいろ苦労してきたから仕方ない。それに、いきなりこんな大金を持っていること自体に浮かれそうになるけど、しっかり気を引き締めないと。




