28:寝落ち
……はっ!寝ちゃった。……やらかしたなぁ。メークはしてないからいいんだけどさ、やっぱり、毎日お風呂には入りたいよね。
たぶん、おとといから昨日にかけて全く寝ていなかったから、寝落ちたんだと思う。
すっかり朝だ。
しょうがない。衣装のポケットに入っていた香水で体臭をごまかすか。そんなににおわないだろうけど、少しのエチケットはしておきたい。
まぁ、お風呂に入る習慣がないのか、男性の冒険者は汗臭いにおいを振りまいている人がたまにいるけど……。
「ミネコさん、おはようございます。朝食をお持ちしますので、席でお待ちください」
なんていうか、いつも通りの朝って感じになってきた気がする。2日目に泊まらせてもらって以降、ずっとこんな感じ。
ただ、朝食については、日替わりで、今日は、トーストに目玉焼きと、久々な感じがする朝ごはん。今までに肉系が多かったから少し胃もたれしている感覚もある。
たまには、魚でも食べたいなとさえ思ってしまう。
まぁ、いろいろ事情があるんだろうから仕方ないけど、やっぱり食べてみたいな。とも思ってしまう。
とりあえず、これを食べた後、貿易ギルドに行こうか。
「あら、朝早いのね。今日はどうするの?また南の森へ行くつもり?」
ご飯を食べていると、まだ同じ宿に泊まっているらしいウェルメンさんが階段から降りてきた。
「南の森はちょっとね~。それに、今日はやりたいことがあるから、街の中で過ごす予定」
「そう。あなたの狩りをもっと見たかったんだけど、まぁ、それなら仕方ないわね。またあなたの狩りを見せてね」
そういうと、ウェルメンさんは、ご飯も食べずに外へ行ってしまった。
「やっぱり、冒険者の皆さんは朝が早いですね~。依頼の争奪戦があるからでしょうけど」
「依頼の争奪戦?」
「はい。冒険者ギルドでは、毎朝、掲示板に張り出される依頼が変わるらしくて、クリア報酬がいいものだったり、依頼の内容が簡単なものがあったりするらしいんです。で、そんな人気なものから依頼が受注されていくんで、みなさん朝早くから冒険者ギルドに向かうんです」
「で、1日クエストに頑張って、夜遅くに帰ってくるわけね」
「そういうことです。直接宿に帰ってくるわけじゃなくて、冒険者ギルドによってから帰ってくる人が大半なので、朝早い時間と、夕方から夜にかけての時間帯が意外とギルドが混むんですよね」
なるほどね。だから、昨日も気にはならなかったけど、少し混んでいたわけか。まぁ、私にはたっぷり時間があるわけだし、あまり気にすることはないかな。
メイランちゃんに教えてもらった後は、ゆっくりと時間を過ごして、適当な時間になってから貿易ギルドに向かう。
「あら、ミネコさん、いらっしゃいませ。今日はどういったご用件で?」
相変わらず、受付カウンターにいるルーイさん。毎日見ている気がするけど、労働基準法に引っかかったりしないのかな。なんて思ったりするけど、疲れている表情は一切ない。よほど仕事が楽しいんだろうな。
「いろいろ芸者として活動するうえで、歌と舞が練習できる場所が欲しいなぁと思って。できれば、周りに誰もいない一軒家があれば一番うれしいんだけど……」
「そうですね……。基本的に、城から遠くなれば遠くなるほど、賃貸料は安くなりますが、ミネコさんの場合だと、ランクが最底辺なので、どうしましょう。ってところなんですよね。あっと、直接、担当のものと話をしてもらえばいいと思うんで、呼んできますね。少しだけお待ちください」
ルーイさんはそういうと、奥に引っ込み、数分してからひとりの女性を連れて戻ってきた。
「初めまして。あなたがお部屋を探している芸者の子ね。ルーイから一通りの話は聞いているけど、改めてあそこで聞かせて頂戴ね」
そういって、ルーイさんより少し年上に見える女性は、私の手を引っ張り、空いていたテーブルに連れていく。
その手には大きなファイル。この中にいろんなものが入っているんだろうな。なんて思いながら、されるがままに椅子に座らされた。




