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1.転移

  聖なる(たつき)の前で誓う

  世を二部する争いの終結を

  私が上に立ち声を上げる

  王座の威厳を示し


  無駄な争いはやめるのです

  悲しむ姿は見たくない

  望む世界の姿は明るく

  平和と笑顔のみを



 歓声が響く中、会場全体が異様なほど明るく包まれた。私の記憶はそこまでだった。

「……ったぞ!……こう…たぞ!」


 どこかで騒ぐ声が聞こえる。

 騒ぐのは当たり前か。だって、ライブ中だもん。

 ……ライブ中!?こんなところで寝ている暇じゃない!

 目が覚めて、思考回路がはっきりすると、一瞬で起き上がった私。

 だけど、私の周りは異様な光景に包まれていた。


「知らない。ライブじゃない」


 私の脳内が、目の前に広がる光景を理解することを拒否する。

 そんなことを思っていると、一人の男が私の前に立つ。


「よくぞ、ご無事で」


 よく見ると、涙を流している。そこまで涙を流す曲を歌っていたっけ?なんて思いながら、困惑する。


「聖女様、お待ちしておりました。どうか、わたくしたちをお助け下さい」


 えっと、ドラマの撮影に間違えて紛れ込んじゃったかな。

 なんて思うも、周りを見渡しても何かの機械があるわけでもない。ということは、ライブの記憶がすべて抜けて、どうやら、夢を見ているようだ。

 それにしても、聖女という響き、少し背中がぞわっとする。


「聖女様、どうぞこちらへお越しください」


 手を差し出されて、その手を借りるか悩みながらも、一人で立ち上がるときに気づいた。

 ライブ衣装のままだ。着替えることすら忘れたか?

 ……これも夢の中か。それなら納得だ。


「恐れ入りますが、こちらに手を翳していただいてもよろしいでしょうか?」


 男が手を向けた先には、きれいな水晶が置かれていた。

 私は、男の言われた通りに水晶に手を翳す。

 すると、水晶は、透き通った色から赤色に変わり、正面のスクリーンみたいなものに、何かが映り、男が息をのむのがわかった。


「なん……だと……。聖女様では……ない……だと……」


 男は落胆の色を何一つ隠すことはなく、その場に崩れ落ちた。

 どうやら、私は求められていた“聖女”と呼ばれる存在ではなかったようだ。


 えっと。とりあえず、映っているのが……


名前 ミネコ イシザキ

属性 水・炎

スキル 言語理解 (歌唱 ダンス)

レベル 1


 えっと、どうやら、これを見る限り最弱のようだ。そして、男のこの様子を見れば、私はいらない子かもしれない。

 そして、括弧書きの意味はなんだ?気になるものの、それを気にする時間はないようだ。


「申し訳ありません。少しこちらにお越し願います」


 ここで抵抗する意味も何一つないので、とりあえず、男についていく。

 そして、連れられてきたのは、一つの部屋。

 ここでお待ちください。と言われ、しばらく待つことに。

 暇つぶしに周りを見渡すと、品のいい骨董品がそろっている。

 もちろん、見たことのないものばかりで、価値のあるものなのかどうかなんてわからない。それに、価値は人それぞれと思っているタイプだから、そのあたりはどうでもいい。

 ただ、思うのは、部屋に見合った骨董品はさらに映えるということか。

 それにしても、さっきの括弧書きに合った『歌唱』と『ダンス』というふたつ。

 これは、私の得意にしているとところではあるものの、それを生業にしているからでもあり、これからもこれを生業にしていくにあたり必須のスキルだからだ。

 それが、この夢の中でどういう意味があるのか。それがわからない。

 なんて思いながら、部屋を舐めるように見ていると、先ほどの男が戻ってきた。それも、少し大きな袋を持って。


「本日はもう夜が遅いので、ご用意したこの部屋でお休みください。そして、こちらは、迷惑料としてお受け取り下さい。額に満足いただけるのであれば、こちらにサインをいただけると幸いなのですが……」


 なんのことかチンプンカンプンなわけで、言われるがままに書類にサインをする。

 男は、私がサインしたのを見ると、ほっとした様子で部屋から出て行った。

 さて。このあとはどうするか。何時かわからないぶん、適当に時間を過ごすわけにもいかない。まぁ、そうは言うものの、やることもないうえに、日ごろからのレッスンで身体が悲鳴を上げていると置きもあったのも事実だし、もう休むか。

 そう思って、ソファーに寝転がった。

 そしてふと思う。ソファーがあるだけマシとはいえるが、ここで泊まれと言った割にベッドや布団を用意してくれないんだ。なんて。

 まぁ、ゆっくりと寝られる空間があるだけマシと思ってゆっくり寝るとしますか。

 どうせ、夢だ。目が覚めたら自分の部屋にいるに違いない。

 そう思って、夢の中の夢に潜り込む。


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