26:買取り結果
「あら、ミネコさん、いらっしゃいませ。今日はどういったご用件で?」
「ここでレッドウルフの肉と毛皮の買取りってしてもらえますか?」
「えぇ。一応可能ですよ。さすがに、解体されていない個体は冒険者ギルドで買取りをお願いしていますけど」
それなら問題はない。メイランちゃんのお父さんに解体してもらったものしか私は持っていないから。
「それじゃあ、これをお願いしていいですか?」
そう言って、アイテム袋から2匹分のレッドウルフの肉と毛皮、1匹分のブルーウルフの肉と毛皮を取りだす。
「うわぁ。すごい量ですね……。少しだけお待ちください。鑑定士を呼んできますので」
あっ、そうなんだ。まぁ、解体した魔物を見るのは当たり前か。それに、申告だけを鵜呑みにして偽物だったらただの詐欺だもんね。
「おろ、嬢ちゃんか。わざわざこっちに来なくても、冒険者ギルドに来たらよかったのに」
「まぁ、さっきのさっきなんで。こっちで買い取ってもらおうかなって」
「あぁ、そういえば、さっき、ユイナが裏でイオリのことをひどく怒ってたな。なにか関わっていたのか?」
「えぇ、まぁ……」
そう言って、さっきあったことを淡々と話す。
「あ~。なるほどな……。そりゃ、嬢ちゃんも怒るし、ユイナも怒るわけだ。まぁ、俺からも言ってやるし、またいつでも顔をだしてくれよ。俺が偉く言える立場じゃねぇが」
ドシアンさんは腰に手を当てながらため息をついた。
どうやら、たまたま態度の悪い受け付けに当たっただけなのかも。
まぁ、ドシアンさんもあぁ言ってるし、ちょっとは信用してみるか。
「でから、魔獣の買い取りだな。……またきれいに毛皮と身を分けて、それに骨まで身がついていねぇ。肉に関してはご丁寧に整形までしてあるじゃないか。文句なしのできだな。しかも、レッドウルフが2匹に、こりゃあ、ブルーウルフか。金貨60枚だな。ルーイ、用意してくれ」
思った以上の高価買い取り……。日本円で1万円換算なら……60万円相当!?
結構な高価買い取りになったな。
そんなことを思っていると、ルーイさんが1枚の紙を持ってきていた。
「そしたら、受け取った証書としてギルドカードをここに乗せてくれ」
ドシアンさんに言われるがまま、ギルドカードを1枚の紙の上に乗せると、カードが光った。
「よし、これでオッケーだ」
「今、なにしたんですか?」
「うん?これか?これは、お前さんのギルドカードに取り引きの記録を入れたんだ。昨日もしただろ?預かったときに」
もしかしたら、見逃していたのかもしれない。
「あっ、そうか。冒険者登録をユイナにしてもらったときに、気を利かして先に登録してたのかもな。それだったら、嬢ちゃんが気づくこともねぇな」
「田舎から出てきたんで、なんもわかんないです。まぁ、ユイナさんならやりかねないってことですね?」
「あいつのことだからな。気づかせない間にしていたのかもしれないな。とりあえず、いつでも冒険者ギルドに来てくれよな」
そういうと、ドシアンさんは部屋の奥へ姿を消した。
「それにしても、Eランクの新人さんがレッドウルフを持ち込んでくるなんて。ミネコさんはすごいですね。もしかして、凄腕の冒険者だったり?」
「まさか~。田舎から出てきた初心者ですよ。それに、狩れたのはたまたまですよ。まぁ、南の森に足を踏み入れた私が悪いんですけどね」
乾いた笑いを飛ばすと、しれっと立ち去ろうとする。
もちろん、ただで返してくれるわけなく、ちょっとだけ事情を問われてしまった。
まぁ、隠す理由もないわけで、全部正直に話したよ。
若干、ルーイさんは引いていたけどまぁ、引かれても仕方ないかなって思うよね。私だってそう思うし。
なんとか解放された後は、もう一度冒険者ギルドに向かい、態度の悪い受け付けの人からドシアンさんが座って、私のことを待っていてくれた。
「すまんな嬢ちゃん。俺も話を聞いてると、あいつの頭の中じゃ、男尊女卑の思想が強くてな。女子には魔獣なんか狩ることはできねぇと思い込んでいやがったよ。どおりであいつの座る日だけ解体の依頼がすくねぇと思っていたんだよ」
ドシアンさんもいろいろ抱え込んでいるんだなぁ。と思ったよね。
「で、今は、その人とユイナさんは?」
「あぁ、まだ裏でバチバチに説教しているよ。あぁ見えてユイナは御年齢40を超えているからな。……おっと、このことは誰にも言わないでくれよ?俺が情報源だと知られたら顔の形が変わってしまうからよ」
ドシアンさんはそういうと、ぶるっと身震いをした。
ということは、フロアの実権はユイナさんが握っているということでいいのかもしれないね。あまり怒らさないようにしないと。
「そんなことより、ほら、昨日のレッドウルフの買取りだ。解体費用の金貨2枚を差し引いて、21枚な。新人がこんなに稼ぐなんて今まで聞いたことねぇぜ。たいてい、毛皮が傷だらけで使い物にならなかったり、傷が肉にまで到達したりして、意外と売り物にならなかったりするのにな。嬢ちゃんのは、一匹は丸焦げだけど、もう一匹の毛皮は、状態が非常にいいし、肉に関しては、両方とも完璧な状態だ。文句の付け所はねぇよ」
まぁ、毛皮をじゅうたんにできるかな。なんて淡い考えで溺○させているからね。状態はいいと思う。
「それはそうと、さっきの肉と毛皮。俺が朝見たものだよな?嬢ちゃん、解体できるのか?」
「あっ、いや。それは、今泊まっている宿のご主人にやってもらって……。腐らせるのももったいないから、やらせてくれって言われたので、お願いしたんです」
「おう、そうか。ブルーウルフもきれいに解体できていたから、すげぇと思っただけだ。宿の主人といえど、こんなに腕がいいのに、もったいねぇな。うちだとすぐに主戦力なのに」
どうやら、メイランちゃんのお父さん、ドシアンさんがうなるほどの腕前だったみたいね。元冒険者と言われて納得もするし、戻りたい気持ちも少なからずあるのかもしれない。
そう思うけど、やっぱり、宿のこともあるから、前に進みだせないというのもあるかもしれないね。私は本人の決断を見守ることしかできないけど。
「よし、これで買取りの取引も完了だ。またなにか狩れたら持ってきてくれよな。芸者の嬢ちゃん」
短時間で2回もギルドカードを見て覚えたのか、私の職業を言いながら手を振るドシアンさんは、昨日の堅物だった表情からかなり変わり、少しお茶目に見えた。
よし。あとは、メイランちゃんのお父さんに追加の費用を払うだけ。
それとは別で、今の私の手持ち、まだこの世界に来てから5日ほどしかたっていないけど、すでに、金貨が100枚近くになった。私が稼いだ分だけで言うと、今日だけで金貨80枚。
これだけたまると、そろそろダンスの練習もできるかなと思えるけど、その前に場所を借りないといけないな。なんて思いながら、メイランちゃんの宿に戻る。




