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25:受け取りに来ただけなのに

「おっ、待ってたよ、ミネコちゃん。解体、終わったよ。ちょっと見てくれないか?なんせ、10年ぶりに魔獣の解体なんてしたんだから」


 宿に戻るなり、私の姿を見つけたメイランちゃんのお父さんが私に声をかけてきて、保管しているウルフを見てほしいと言ってきた。

 言われるがままにひょいひょいとついていくと、きれいに整頓された肉や毛の塊が姿を現した。


「さすがに10年もたつと、腕がさびていたけど、何とかって感じかな。レッドウルフの肉も毛皮も大量さ。それに、毛皮の状態も異常すぎるくらいきれいだ。文句をつけるなら、俺の腕くらいかもしれないな」


 目に入ってきた毛の塊は、レッドウルフの毛皮だったのか。

 だとしても、相当な量だな。肉も毛皮も。これで人を何人食べさせることができるんだろうか。なんて変なことを考えてしまうけど。


「それでもなんもできない私からすると、あんな短時間でこんなにできちゃうなんてすごいです。これだけきれいに分けてもらえたら私から何も言うことはないです。えっと、こういうのって、どれっくらいが相場なんですか?」

「……さぁ?基本的には、冒険者は自分たちで魔物を解体してギルドに持ち込むことが多いからな。ギルドも、個体や量によって変わるだろうから……」


 そうなんだ。と思いつつも、自分のアイテム袋から金貨を5枚を取りだし、メイランちゃんのお父さんに渡そうとする。

 なんのことかわかっていないメイランちゃんのお父さんに「解体費用です」とだけ言って手に握らせる。


「もちろん、追加もお渡しします。先払いということにしていて下さい」

「い、いや。そんなにもらえないよ……」

「でも、ギルドだと、1匹金貨1枚だったので、今はそれくらいなのかなって思って。もちろん、ブルーウルフには金貨3枚で換算しました。大きさもそれくらいありそうなんで」

「そ、そうか。わかった。報酬としていただいておくよ」


 メイランちゃんのお父さんはちょっと腑に落ちない表情を浮かべたけど、ひとつうなずき、ポケットに金貨を入れた。


「またギルドに持って行ってお金に変わったらまたいくらかお渡ししますね」

「そこまでしなくていいのに。まぁ、これを機に解体屋も兼業するか?」

「お父さん、そんなことしちゃ、手が回んないってお母さんに言われちゃうよ」


 メイランちゃんの反応にお父さんは「冗談だよ」と返して大きく笑い飛ばす。

 ただ、なんというか、その表情に偽りが混じっていることに気づいた。

 アイドルしているときも、いろんな人の表情を見て察することが多かったから、癖になっているんだろうな。なんて思いながらも、気付かない振りをしていた。

 そんな親子の様子を見ながら肉や毛皮をアイテム袋にしまうと、私は部屋に戻ってから少しだけ冒険者ギルドに顔を出す。


「あら、ミネコさん、いらっしゃいませ。今日はどういったご用件で?」」

「あっ、えっと……。ドシアンさんがこれくらいの時間なら解体も終わっているだろうって言っていたんで、昨日お願いしていたレッドウルフのお金をもらいに来たんですけど……」

「そうなんですね。えっと、ドシアンさんは~。解体場ですかね。代わりの受付の人に言えば大丈夫ですよ」


 ユイナさんに優しく教えてもらい、お礼を言った後に、買取り受付のところに。

 受付の席には、ドシアンさんに代わって、若くてチャラそうな男が座っていた。


「はいー、ご用件をどうぞ~」


 どうやら、ギルドの男たちというのは、受付は嫌いみたいでだ。それか、武器や装備が何もない私を見て馬鹿にしているか。

 向こうがあんな態度だと、私も性格的に同じ態度になりそう……。同じ土俵に立っちゃいけないことはわかっているんだけど……。


「昨日預けたレッドウルフの解体が終わってるか確認しに来たんだけど」

「レッドウルフ?あぁ、そういえば、ドシアンのおっさんがなんか言ってたな。レッドウルフの解体が来たとかなんとか。でも、あんたの獲物じゃないだろ?代理で引き取りとかやってないから、また本人に頼みな」


 何だろう。こいつ、ものすごく無責任だな。

 アイドル時代でもこんなイラっとしなかったのに、過去最大級だな。このむかつく感じは。


「その本人がここに来てるんですけど。なんなら、ギルドカードを渡そうか?」


 そう言ってギルドカードを出して見せようとするけど、受付の人は何も見ずに突き返してきた。

 なんというか、2年くらい前にいた横柄なイベンターの人と姿を重ねてしまった。


「わかりました。あなたがその態度なら、もうここにはきませんので!」


 なんていうか、私も瞬間湯沸かし器のように怒りの沸点が一気に突破してしまったけど、この人から信頼というカケラが見つからない。

 この人がいるなら、ここで取引をすることはやめておいた方がいいかな。なんて思えてしまった。


「ミ、ミネコさん!ちょっと!何かあったんですか?」


 私の怒った声がギルドに響いていたのか、ユイナさんが受付カウンターから飛び出してきた。


「さぁ?そこの不愛想な受付に聞いてください。私が怒る理由はあいつにありますんで」


 それだけ言ってユイナさんを振り切ってギルドを後にして、そのままとなりの貿易ギルドに足を踏み入れる。


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