22:金銭感覚
ドシアンさんはあんぐり口を開けて固まった。
もちろん、ドシアンさんのほかにユイナさんも固まっていた。
「ミネコさん、どうしてこんなものを……」
声を絞り出すように言ったユイナさん。
「えっと、いろいろありまして……」
「そんな言い方でわかるわけありません!ちゃんと話してください!」
もちろん、ユイナさんに「えへへ」と笑って誤魔化してその場を去ることはできなかった。
「夜中に急遽救助依頼があったの。それに行ったら、運悪く鉢合わせてしまったってところかしら」
「救助依頼ですか……。私はそんな話を聞いていませんが?」
「すいません。わたしたちのことです」
後ろから声が聞こえて振り返ると、キーシャちゃんのグループが立っていた。
「南の森で依頼を達成した戻りに、レッドウルフの群れに襲われてしまって。運よく私は後方支援だったので群れには気づかれず逃げ出せたんですけど、他のメンバーが襲われてしまって。本当は最初にギルドに来なきゃいけないことはわかっていたんですけど、気が動転してしまって、泊まっていた宿に駆け込んだんです」
「それで、ロッカが昔の馴染みを助けたいから臨時パーティーを組みたいとか変なことを抜かしてな。そこにミネコが乗っかって、私も、ミネコがどうやってレッドウルフを倒したのか気になって、パーティーに参加した」
「で、報酬なんてどうでもいい。って言ってミネコさんが強気な発言をしたことにより、ギルドを介さず救出してくれたんです」
ウェルメンさんとキーシャちゃんが交互に話し、ユイナさんの顔はあちこちに向く。
「えっと、とりあえず、ミネコさんたちが無報酬で人助けをした。ということでいいのでしょうか?」
「早い話、そうなるわね。まぁ、私としても、ミネコがレッドウルフを倒す様子を見て満足だし、報酬は別に構わないかな。むしろ、レッドウルフを買い取って、みんなで買い取り分を分けるってミネコが話していたし。私はそれで充分。レッドウルフを買い取ってもらえるだけでも、1カ月仕事しなくても過ごして行けるくらいの金貨になるのに」
やっぱりそれだけのお金になるんだ。物価としては、私が住んでいた世界と同じくらいと思っていていいかもね。無駄遣いしなければ、普通に生きていけるって感じ。
それさえわかれば、私はそれでいいかな。
「ドシアンさん、解体をお願いしてもいいですか?かかった費用はその分、差っ引いてもらっていいんで」
私がそういうと、ドシアンさんは、少し頭を抱えながら答える。
「あのなぁ。お前さんはそう簡単に言うけどな。こちかて準備がいるんだ。お前さんから昨日預かったレッドウルフも人手が足りていなくてまだ手を付けられていない。それに、しばらく預かる形になるがいいのか?」
私としたら、今はお金が何とか残っている状態だから、付きそうになる前に換金できればそれでいい。それに、前払いはしてくれなさそうだし、先に預けておいて、あとでがっぽりお金をもらおうか。
「私は構わないわ。ウェルメンさんたちがどう言うかによるけど」
「私も手持ちはあるから気にしないわ。こう見えてコツコツ溜めているから」
私からはそういうタイプに見えるから、何にも突っ込むことはしないけど、冒険者として必要最低限より少しいい装備をしているようにも見える。
ただ、私と比べて、しっかりとした装備をしている。
まぁ、私の装備が軽微すぎるだけなんだけどな。
「とりあえずさ、私は今すぐお肉とかお金は必要としていないからさ、できるときに進めてよ。適当なタイミングで受け取りに来るからさ」
「オイオイオイ。そんなの無理に決まってるだろ。レッドウルフもブルーウルフもほったらかしにしてると腐りやすいって言うのに。保存する倉も他の冒険者の獲物を保存しているから嬢ちゃんのウルフだけをってのはできねぇぞ」
どうも、常温で肉をほったらかしにするとすぐに腐るのはこの世界でも同じようだ。
かといって、保管できるような場所は……ないか・
メイランちゃんの宿に置かせてもらえるわけもない。そもそも、そんなスペースがない。となると、このギリギリのアイテム袋に入れるしかない?
代替のクーラーボックスととらえて、頃合いを見ながらお願いしていくしかないのかな……。
とりあえず、ここはいったん回収するしかないか。
「保管場所がないんじゃ仕方ないね。了解。これは私が持っとくよ。時々卸しに来るから、その時はお願いできる?」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
ドシアンさんはそう言うと、自分の仕事をするかのように、ドアの向こうに姿を消した。
そして、私は、アイテム袋の中にレッドウルフとブルーウルフを収納した。
「ウェルメンさん、少しだけ氷を入れてほしいんですけど、いいですか?」
「えっ?そんなことしてしまったら、そのアイテム袋、かなり状態が悪くなるわよ」
「だと思った。でも、肉を悪くすることより、替えが聞くアイテム袋より、売り買いができるウルフのほうが大事だと思うし」
「そう。珍しいわね。後悔しないならそれでいいけど」




