18:救出作戦
「ちょっと待ちなさいよ。レッドウルフが5体よ?倒せる作戦とかあるの?」
後ろから慌てて追いかけてきたウェルメンさんは私に問いかけてきた。
「さぁ?どうにかなるでしょ」
「その答えはいただけねぇな。てっきり何かの策があるのかと思ったぜ。じゃあ、どうやって倒したんだよ。ミニチュアウルフみたいにちゃっちい魔法やしょぼいパワーでどうにかなる魔獣じゃねぇだろうよ」
私もわかっている。ただ、私には炎と水の魔法がある。売り物にしないというなら、いくらでもやり方はあるだろう。それを南の森に入るまでに考えるだけだ。
「とりあえず、何が使えるかだけ教えてくれない?ウェルメンさんはアイスだっけ?」
「追い払うためだけならね。まともに戦おうと思ったことはないし、一応、ミネコに守ってもらうつもりでいるし。ほかには……」
話を聞いていると、ウェルメンさんは氷系と周りを照らせるホーリーを、ロッカとアーシャはそれぞれ大きな刀を振り回すこと、キルシャと呼ばれた女の子は回復系の魔法を使うことができるみたい。
となると、危険かもしれないけど、刀を使う2人には囮になってもらって、魔法攻撃で片付けるのが一番楽かもしれないな。
……よし。今は考える振りをして、現場についたら伝えるか。
「ミネコ、確認だが、2人を守りながらレッドウルフなんて倒せるんだな?」
前を走りながらロッカが聞いてくる。なにかとしつこいな。
「大丈夫だって言ってんでしょ。あんたは黙って早く連れていって」
強気な口調で言うけど、あまり言い過ぎると、新人だというのがばれたときが一番怖い。これ以上、強気に出ない方がいいな。
口調は今まで通りにしないとまずいことくらいはわかるけど。
「もう少し先です。ミューイたちが必死に抵抗する音が聞こえます」
私にも微かに聞こえる。なにかとなにかがぶつかる音が。そのなにかはたぶん、刀だろう。
「ロッカ、一度スピードを緩めて。ここからは少し慎重に行きたい。そして、キルシャちゃんをこっちに寄越して。ウェルメンさんは、ホーリーをロッカたちにやってくれませんか」
このあたりで動いておかないと、致命的なミスをしそうな予感がして、さっと指示を出す。
ここまではまだ私が新人だというのがばれていないみたい。まだ安心できるな。
「ここからはどうするんだ?」
「今私が考えていることとしたら、ロッカとアーシャには囮になってもらって、私とウェルメンさんの魔法で倒しきろうとは思ってる」
「なるほどな。食い止めている間に倒しきるって考えか。まぁ、パワーもスタミナもある俺や、スピードだけは一丁前のアーシャにはもってこいの役だな。わかった。それで行こう」
役割があっさり決まって、了承してくれると、私としてもありがたい。
「あの……私は何をすれば……」
今にも消え入りそうな声でか細く私に聞いてくるキルシャちゃん。
私のことにビビっているのか?
「そんなにビビらなくていいよ。あなたには、レッドウルフを追い払ったあと、仲間たちの回復をお願いするわ。私の華奢な肉付きやウェルメンさんが仲間を抱えることができないから、自分たちで歩けるくらいまでは」
「わかりました。善処します」
そう言うと、キルシャちゃんの目はやる気に満ちていた。
「あなた、なかなか酷なことを言うのね。普通なら、なにもしなくていいっていうとからだと思ったのに」
「普段の私ならね。ただ、あの子の顔を見ているとね。なにもさせないわけにはいかないかなって。お人好しに思われるかもしんないけど、そうでもしないと、いろいろ自分を責めそうな気がした」
今でこそ、ソロで自由気ままにやらせてもらっているけど、ソロ活動をする前。別の人がリーダーで8人組を組んでいたことがあった。
もちろん、一人ひとりがしっかりしていないとなりたたない。ただ、ソロになった今ならわかるけど、仲間の言葉って、さりげないことでも気持ちが変わったりする。
ただ、そうは言っても、その言葉ひとつで関係を壊すことだってある。
リーダーは、その言葉を間違えたままグループを空中分解させてしまった。それから私は仲間を作る怖さにとらわれてしまって、自分で曲を作り、振り付けも考え、営業もこなしている。
正直、今でも何もかもが精いっぱいの状態だ。それはここに来ても変わらない。自分のできることはすべて自分でやっているつもりだ。
ただ、夜になると思うときがある。
もし、リーダーが違う言葉をかけて、メンバーの絆をさらに強固なものになっていたならどうなっていたんだろう。と。
「いたな。本当にギリギリで耐えているっていった感じだな。嬢ちゃん、どのウルフから引き付ける?」
刀のぶつかる音が大きくなって、人の姿がいくつか確認できたとき、ロッカが言った。私の指示に従うようだ。
……とりあえず1匹。1匹だけでもこっちに誘導できればいい。でも、どうやって……。
「ここは一度明かりを消して作戦を練り直した方が良さそうね」
ウェルメンさんがそういうと、明かりを消して、私たちは暗闇に包まれる。
幸い、向こう側が明るいこともあって、こちらには気づいていない。
「ロッカ、アーシャ、そのまま飛び出していって。何匹かこっちに連れてきてほしい。2つにわけることができたら、向こうも楽でしょ」
そうだな。わかった。と2人は言うと、思い切り飛び出していった。
「ウェルメンさん、朝に見せてくれた氷の矢みたいなものを準備しておいてくれません?少なからず必要になると思いますので」
「わかったわ」
正直に言って、何匹釣れるのかわからない。1匹だけなら私が燃やし尽くして討伐することはできるだろう。
ただ、2匹や3匹になってくると、さすがに私ひとりだけでは対処できないだろうから、少しでも余裕を持たせたい。




